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マドリードを行き交う「青い自転車」のヒミツ【家本賢太郎の“世界の自転車とまちづくり” #01】

ワールドワイドな自転車と街の関わり、発信します!

世界中の自転車の状況を見てまわると、国や都市ごとに自転車を取り巻く環境の違いを見てとることができ、面白いことばかりです。

まちで見かける自転車、自転車の走行環境、シェアサイクル、自転車屋さん、信号などの様子は、そこに住む人々がどのように自転車をどのように活用するのか、共生するのかを意思決定してきた道のりをあらわしています。

記念すべき第1回は、スペインの首都から

私、家本賢太郎が自転車業界の経営に携わるようになったのは今からわずか7年前。そこからバイチャリ(中古スポーツ用自転車を中心とした買取販売チェーン)、チャリチャリ(シェアサイクル)、wimo(自転車メーカー)、Gaciron Japan(ライト)など自転車に関わる様々な事業を経営している関係から、世界各国を飛び回る機会が多く、せっかくであれば国内外の様子を自転車という視点から皆さんにお伝えしていこうとこの連載をはじめることにしました。

もっとも……原稿の締切という私が人生でもっとも苦手とする存在にどう打ち勝っていくかは皆さんの応援次第でもあります。いつまで続くか分からない連載の1回めはスペインの首都、マドリードの様子から。

マドリードの青い自転車の正体

スペインの首都マドリード。スペインの自転車といえば世界的なレースの一つでもあるVuelta a España(ブエルタ・ア・エスパーニャ)、そしてスポーツバイクではオルベアが知られているでしょう。

さて、マドリードに来てまず目に入るのは青いシェアサイクル「biciMAD(ビシマド)」。つい最近、正式には2022年末から2023年3月にかけてマドリードのシェアサイクルは全面的に入れ替えられ、最新の電動アシスト自転車に一新されました。それが、このbiciMADです。

圧巻のステーション数!

市内には7500台の電動アシスト自転車と600ヶ所以上のステーションがあり、多くのマドリード市民の移動を支えています。biciMADは今回のシステム入れ替えに伴いシェアサイクルの世界最大のシステム会社であるPBSC(カナダ)のシステム・アプリに刷新され、最新の電動アシスト自転車が投入されました。

ちなみにPBSCは全世界で10万台以上のシェアサイクルを供給しているのですが全てカナダ製の自転車で共通化されていて、時期によってモデルチェンジされ進化し続けています。カナダ製の自転車ってなかなか日本では見かけないですよね。

利用システムはどんどんカンタンに

外国人もカンタンに利用できます。2022年までは外国人が利用しようとすると街なかのステーションにあるキオスク端末でチケットを購入しなければなりませんでしたが、今ではアプリでカンタンに登録できます。iOSとAndroidのアプリの両方で試してみましたが、スペイン語から英語へのローカライズが進んでいるのはiOSの方でしたので、もしマドリードで使われる方はこちらをおすすめします。

PBSCのシステムを用いて運営しているオペレーターはEMT Madrid(マドリード市交通公社)というマドリードのバスも運行している会社。マドリードの都市交通の一つとしてシェアサイクルが位置付けられ、バス路線との補完的な役割を担っています。

おサイフにもやさしい

市の財政から公費が投入されていることもあってシェアサイクルの料金はかなり安く抑えられていて、30分まで0.5ユーロ(約85円, 2024年6月現在)。地下鉄が初乗り1.5ユーロですから、円安時代の今にあって日本から行く私たちにはさらに手軽に使える移動手段です。

広場のど真ん中にステーション!

観光スポットで有名なプエルタ・デル・ソル(Sol)やサン・ミゲル広場などのほか、王宮、様々な公園・美術館のそばにも何十台も停められるステーションがほぼ必ずあります。マドリードの食材が集まり手軽にスペインの美味しいものが食べたり飲んだりできるサン・ミゲル広場の前には、カフェのテラスが集まるそのど真ん中にステーションがありました。日本だったら「歩行者との分離!危険!」といって絶対に設置させてくれなさそうな場所ですが、ところ変われば。素敵です。自転車での移動中でしたので私はノンアルコールのサングリアをいただきました。

日本とマドリードの道路の違いとは?

日本との大きな違いは、そのシェアサイクル用のステーションの場所が道路・歩道上に大きく確保されていること、そして自転車の走行レーンが主要な道路ではほぼ全て分離されているという点です。自転車が一つの交通モードであると明確化されている意思が感じ取れます。

堂々と覗き込むべし!

自転車業界の経営者の視点としては自転車を下から覗き込むのも仕事の一つです。怪しまれようとなんだろうと、地面に寝転んで下から見上げたり、フレームの下にスマホをおいて見上げるように写真をとってみたり、タイヤのトレッドの減り具合を触ってみたり。こういうときはコソコソするのではなく堂々とやることが大事です。

タイヤの減りから自転車事情が見えてくる

ふと気づいたのは、今年投入したばかりの車体をみても後輪の減りが早そうだということ。マドリードは全てがノーパンクタイヤを履いていますが、前輪はトレッドパターンが残っているものの後輪は結構ツルツル。PBSCの車体は後輪駆動の電動アシストだということや荷重のかかり具合が影響しているのでしょうが、投入後半年も絶たずとなると、こりゃ交換が大変だなと思います。ちなみに日本でもシェアサイクルでのノーパンク化は各社が色々と検討していて、ノーパンクチューブで実装する方法とエアレスタイヤを履く方法とが動き始めているんです。

マドリード都市部になおも残る課題

ところで、2023年末まで約10年間使われてきた前の世代のbiciMADは大変な道のりでした。一時期は投入した自転車の4分の1が破壊や盗難の被害にあい、当初は民間企業主体だった事業をEMTが引き取って公共事業とし、その経緯はマドリードの議会でも大きな問題になりました。

実はそもそもマドリードの都市部では自転車の盗難や安全な保管は従来からの課題で、自転車を所有することのネックになっているとも指摘されていました。自転車移動は便利だが安全に駐輪できないことに頭を悩ませていました。初期のbiciMADではこれを一気に解決、とはいかず、バラバラにされた自転車がなんと遠く離れたルーマニアの中古市場で部品として売られていると報道され、悩みのタネは残り続けてます。ところが今回のPBSCのシステム導入で不正利用対策が強化されたり、屈強で簡単にはバラせない(笑)自転車になったことで、マドリードの移動を担う存在として今後は丁寧に運営されていることを期待したいところです。

旅にはシェアサイクルが最高!

観光や出張で外国を訪れる私たちにとってシェアサイクルが旅先で相性がいいのは、やはり街並みを見ながら自由に、時には道に迷ったりもしながらも移動できることでしょう。レンタサイクルだと借りた場所に戻さなければなりませんが、シェアサイクルならば好きな場所で借りて返すことができます。せっかくならば街並みをたくさん見たいし、しかし外国の都市でバス路線をいきなり攻略するのも大変だし、地下鉄だけで目的地の最寄りまで行けるわけでもない、というとき、これだけの規模のシェアサイクルだと自由に移動のパターンが組めます。

さあ、次はバルセロナに移動してみましょう。

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家本 賢太郎

家本 賢太郎

クララグループ代表。脳腫瘍による車椅子生活から奇跡的に回復し、現在は自転車事業とDX支援事業で社会課題の解決に邁進中。米Newsweek誌「21世紀のリーダー100人」に選出。

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