クロモリのロードバイクは、その造形の美しさと頑丈さから、多くのサイクリストに選ばれています。かくいう筆者も、クロモリフレームの自転車をこよなく愛する一人。日常の移動の足としても、長距離ライド用の相棒としても、クロモリの魅力を存分に味わっています。
一方で、「クロモリは重い」「錆びやすい」といったイメージを持っている人も多いのではないでしょうか? メリットとデメリットを天秤にかけたとき、本当にクロモリを選ぶべきなのか? と迷うこともあるかもしれません。
そこで本記事では、僕の実体験をもとにメリット・デメリットを解説し、どんな人に向いているのかをしっかり解説します。
「クロモリが気になるけど、実際どうなの?」 という方は、ぜひ参考にしてみてください。
クロモリフレームとは

まずは僕の自転車遍歴を少々。
これまで、4台の自転車を所有してきました(カッコ内は所有年数)。上の2台はすでに手放しましたが、下の2台は今も愛用中です。
- アルミのクロスバイク(4年)
- カーボンのロードバイク(2年)
- クロモリのツーリングバイク(6年)
- カーボンのマウンテンバイク(2年)
アルミ・カーボン・クロモリと、各フレーム素材の自転車を乗り継いできたので「クロモリとそれ以外」の違いについてはリアルに分かっているつもりです。

で、「クロモリとはなんぞや」ということですが、ロードバイクに使われる素材のひとつです。
クロモリ(クロムモリブデン鋼の略)とは、鉄(スチール)にクロムとモリブデンを加えた合金鋼のこと。頑丈で加工しやすく、かつ比較的安価なことから、スポーツ自転車では古くから採用されているポピュラーな素材です。乗り手に合わせてミリ単位での調整が求められる、ハンドメイド・オーダー系の自転車にもよく使われていますね。
それではここで、クロモリのメリットとデメリットについて見ていきましょう。
クロモリフレームの3つのメリット
メリット①細身のフレームがイケてる

細身のフレームをメリットと感じるかどうかは人それぞれですが、クロモリ特有のシャープなフレーム形状は、ハマる人にはドハマりする魅力があります。このクラシカルな佇まいこそまさに、「クロモリの美学」。
そもそも、なぜクロモリのフレームって細いのでしょう?
それは、クロモリの引張強度(壊れにくさ)が高いから。細いパイプでも十分な耐久性を確保できるのです。
たとえばこれがアルミになると、クロモリよりも強度が低く、耐久性を高めるにはフレームを太くせざるを得ません。その結果、アルミフレームは一般的に太めのシルエットになっているんですね。

細いフレームの理由はもうひとつ。クロモリは比重が大きく重いことから、フレームを軽量にするために細身にしている面もあります。
つまり、クロモリのフレームが細いのは、「強度が高いから細くできる」「素材が重いから細くすることで軽量化を図る」という2つの理由があるのです。
メリット②頑丈である

クロモリフレームのメリットのひとつに、「圧倒的な頑丈さ」があります。
クロモリは引張強度が高く、一般的なアルミ合金と比較しても優れた強度を持っています。具体的な数値は素材のグレードや熱処理の有無によって変化しますが、アルミ合金の引張強度はおおむね300〜550MPa程度、クロモリ鋼は600〜900MPa程度と、クロモリのほうが高い強度を有しています。
加えて、クロモリは靭性(じんせい)が高く、衝撃を受けても壊れにくいという特性を持っています。アルミやカーボンは強い衝撃を受けるとクラック(ひび割れ)が入りやすいですが、クロモリは粘り強く、局所的なダメージが広がりにくいのが特徴です。
こうした頑丈さのおかげで、自転車を倒した程度の衝撃ではビクともしませんし、大量の荷物を積載した長距離ライドにも耐えられるのです。

クロモリの場合、万が一凹みや曲がりが生じてしまっても、フレームビルダーの工房などに持ち込めば、溶接修理ができるメリットもあります。
僕は自転車キャンプや海外ツーリングといった旅ライドが大好きなのですが、クロモリの自転車には「道具」としての信頼感があるんですよね。これがカーボンの自転車になると、道具というより「機材」になり、より繊細で、扱いにはやや気を遣います。
クロモリなら、多少のキズは味として楽しめますし、むしろそれがかっこいい。「長く乗り続けるための相棒」として選ぶなら、クロモリは間違いなく有力な選択肢です。
メリット③しなるから疲れにくい(といわれている)

よく「クロモリはしなる」といわれますが、これは厳密には正しくありません。なぜなら、クロモリという素材自体のヤング係数(剛性)は高く、むしろ”しなりにくい”素材だからです。
クロモリフレームがしなるのは、「素材の特性」ではなく「設計の結果」によるもの。素材として重いクロモリフレームは、軽量化のために細く設計されます。このチューブの細さのほうが、適度なしなりにつながっているのです。
素材としてのしなりなら、アルミのほうが圧倒的に大きいんです。アルミのヤング係数(剛性)はクロモリの約1/3しかありませんからね。「アルミ缶」がペコペコ凹むさまを想像すれば、アルミがいかに柔らかく変形しやすい素材かが直感的に理解できるでしょう。
クロモリ | アルミ | |
素材の剛性 (ヤング係数) | 高い (200GPa前後) | 低い (70GPa前後) |
素材の強度 (引張強度) | 高め(おおむね 600〜900MPa) | やや低め(おおむね 300〜550MPa) |
フレーム設計 | 重い素材なので 細くすることで 軽量化 | 軽いが強度不足なので 太くする必要がある |
フレームの剛性 | 細身ゆえに 適度にしなる | 太いパイプで剛性を確保 (硬めの乗り心地) |
しなるといわれるクロモリフレームですが、実際に乗って「しなり」を体感できるかどうかは、また別の話かもしれません。目隠しをした状態でクロモリとアルミの自転車を乗り比べて、フレーム素材を当てよと言われたら、正直なところ、僕はまず当てられないと思います。
実際、クロモリの自転車に乗っていて「よくしなるな~!」「疲れにくいな~!」と感じたことはないです。100kmくらい走ったらふつうに疲れます。これはアルミでもカーボンでも同じ。

むしろ、疲れにくさ(衝撃吸収性)や乗り心地を左右するのは、タイヤの太さや空気圧、サドル、フレーム設計など、その自転車全体の「味付け」による部分が大きいでしょう。
クロモリフレームのデメリット
続いては、クロモリフレームのデメリットです。デメリットをしっかり理解しておけば、購入後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができますよ。
デメリット①重い
クロモリは重いです。比重(同じ体積での重さの比率のこと)でいえば、アルミの約3倍、カーボンの約5倍ほどあります。
ただし、実際のフレーム重量の差は、比重ほど大きくはなりません。なぜなら、アルミやカーボンは素材自体が軽いものの、強度を補うためにパイプを太くする必要があるからです。一方でクロモリはパイプを細くできるので、素材の量が少なく済みます。
ただ、比重ほどではないとはいえ、アルミやカーボンと比べたときにクロモリが重いのは事実。軽さを最重要視するなら、アルミやカーボンを選ぶのが合理的でしょう。

デメリット②サビやすい
クロモリはサビやすいといわれます。その理由は、クロモリが鉄を主成分とする合金鋼だから。「鉄が錆びやすい」というのは、なんとなくイメージがつくのではないでしょうか。
とはいえ、必要以上にサビの心配をする必要もありません。
日常的に乗ることで結露を防ぎ、雨に濡れた際は水分を拭き取り、定期的なオーバーホールでフレーム内部の状態をチェックしておけば、サビの心配はほぼ不要です。サビてしまうのは、屋外に長期間放置したり、濡れたままにした場合です。
僕は6年ほどクロモリの自転車を所有していますが、これまでサビたことはありません。しっかり手入れさえすれば、クロモリの「サビやすさ」は気にしないで大丈夫。

クロモリフレームがおすすめなのはこんな人!
クロモリフレームのメリット、デメリットが分かったところで、どんな用途やライドスタイルにハマるのでしょうか? ズバリ、おすすめなのはこんな人!
- クロモリ特有のシャープな見た目に惹かれる人
- タフで頑丈な自転車がほしい人
- のんびりと自転車を楽しみたい人
クロモリフレームの細身でクラシカルな佇まいに惹かれる人は、もうそれだけで、クロモリを選ぶ理由としては十分です。レースに出るわけでないなら、「スペックよりも見た目が大事」とさえ思います。愛着を持てる自転車だからこそ、「もっと乗りたい」というモチベーションにつながりますからね。
それから、タフで頑丈な自転車がほしい人。たとえば、大量の荷物を積載して長期間のツーリングに出るような場面では、自転車の扱いに気を使っている余裕は基本的にないです。そうした状況では、タフで頑丈なクロモリが圧倒的に向いています。

そして最後に、マイペースに自転車を楽しみたい人。クロモリの自転車は、「速く走らなければならない」という心理的なプレッシャーを感じさせません。むしろ、「のんびりとしたライドを肯定してくれる」 そんな自転車なんですよね。気楽さ、自由さ、安心感のクロモリです。それに、クロモリだから「遅い」というわけでもありません。何せあの競輪で使われる自転車もクロモリですからね。
いずれかに当てはまった人はぜひ、クロモリフレームの自転車を検討してみてください!
クロモリフレームの自転車を買うなら、中古もアリ

近年、スポーツ自転車業界では値上げが続いています。そんななか、クロモリフレームの自転車をお得に手に入れたいなら、「中古(リユース)」は賢い選択肢。歴史の長いクロモリフレームはむしろ、中古市場のほうが探しやすいかもしれません。
たとえばバイチャリのような店舗数も多く、信頼できるリユース専門店であれば、商品の状態を事前にしっかりチェックできます。少しの傷や使用感のみで、新品よりも大幅に安いクロモリ自転車も多く販売されています。適切にメンテナンスが施されているので、走行性能はもちろん全く問題なし。
むしろ、クロモリは適切にメンテナンスされていれば何十年も乗れるため、中古でも十分実用的なフレームといえます。
新車価格が軒並み上昇している今、中古のクロモリを選ぶのは非常に賢い選択肢といえるでしょう。思いがけない掘り出し物に出合えるかもしれませんよ!
>>「中古のロードバイクって本当に大丈夫なの?」と疑問な人はこちらもチェック!
クロモリロードバイクおすすめ5選
それではここからは、おすすめのクロモリロード5選をご紹介いたします。
おすすめクロモリ①パナソニック PC-1000 ORDER

家電メーカーとして有名なパナソニックですが、実はクロモリのロードバイク、通称「パナモリ」も手がけているのはご存じでしょうか。
PC1000は80年代のオーダーフレームですが、現代でも十分に通用するアッセンブルで組まれた一台です。細身でホリゾンタルなクロモリフレームに、シマノ105(R7000)をスペックイン。これからロードバイクを始めたい人には、十分すぎる性能といえるでしょう。
パッキリとしたオレンジカラーに粒子状のパターンが施されたこのデザインは、今では手に入らない逸品ですよ。
価格:税込98,800円(新品参考価格: ー ※オーダー品のため参考価格なし) | |
サイズ | 適応身長:160-170cm(目安) |
フレーム素材 | クロモリ |
メインコンポーネント | シマノ 105 |
重量 | 約8.63kg |
>> PANASONIC 「パナソニック」 PC-1000 ORDER 年式不明 ロードバイク / バイチャリ浦和ベース
おすすめクロモリ②ケルビム PIUMA-DISC Japan Bike Technique(2019年)

これ、カッコよすぎません? ケルビムは、日本を代表するハンドメイドバイクブランド。そしてこのモデルは、ビルダー同士が技術を競い合うことを目的に開催された「Japan Bike Technique 2019」にて、走行部門1着を記録した特別なモデルです。
リアキャリアはフレームと一体型になっており、無駄のない美しいシルエット。走行性能だけでなく、圧倒的なデザイン性も兼ね備えています。いや~これ、僕も本当に欲しいです……(笑)
価格:税込398,000円(新品参考価格:ー ※ショーモデルのため参考価格なし) | |
サイズ | 適応身長:170-180cm |
フレーム素材 | クロモリ |
メインコンポーネント | スラム ライバル |
重量 | 約8.8kg |
>> CHERUBIM 「ケルビム」 PIUMA-DISC Japan Bike Technique 2019年頃 ロードバイク / バイチャリ浦和ベース
おすすめクロモリ③ラレー CRA CARLTON-A (2020年)

英国のクラシカルなデザインが魅力のクロモリロードです。ラレーは、イギリス生まれの老舗ブランド。美しいホリゾンタルフレームに、シンプルで洗練されたシルエット。まさに、「乗る楽しさ」と「眺める楽しさ」を兼ね備えた一台といえるでしょう。
コンポーネントはシマノ・ソラですが、ブレーキだけ105に変えているのはまさに「分かっている」アップグレード。しかも7万円を切る価格で手が出しやすく、しかも商品状態もAランク! このデザインに惹かれるなら、間違いなくおすすめの一台です!
価格:税込69,600円(新品参考価格:121,000円) | |
サイズ | 500(約160-170cm) |
フレーム素材 | クロモリ |
メインコンポーネント | シマノ ソラ |
重量 | 約10.6kg |
>> RALEIGH 「ラレー」 CRA CARLTON-A 2020年モデル ロードバイク / 有明ガーデン店
おすすめクロモリ④サーリー DISC TRUCKER(2023年)

頑丈なクロモリフレームはグラベルライドにもピッタリ。
アメリカンな雰囲気漂うSURLY(サーリー)は、世界を旅するライダーたちに選ばれ、そのタフさには定評があります。かくいう僕も愛用しているブランドです。
そしてこのディスクトラッカーは、たくさんの荷物を積んで長距離を走るために設計されたモデル。キャリアや荷物を積載するためのダボ穴も豊富で、荷物を積んで旅をしたい方に最適な一台です。
価格:税込310,000円(新品参考価格:円) ※バラ完のため参考価格なし | |
サイズ | 52(約180-188cm) |
フレーム素材 | クロモリ |
メインコンポーネント | シマノ GRX |
重量 | 約13.5kg |
>> SURLY「サーリー」 DISC TRUCKER 2023 グラベルロード/ 奈良店
おすすめクロモリ⑤デローザ NEO PRIMATO(年式不明)

イタリアの名門ブランド「デローザ」。ロードバイク乗りなら、一度は憧れたことがあるかもしれません。今でこそカーボンモデルもバシバシ出しているデローザですが、じつは金属フレームこそブランドの真骨頂。長年ハンドメイドにこだわったクラフツマンシップを存分に味わえること間違いありません。
そしてこの「ネオプリマート」は、クラシカルなラグ組みのスチールフレームとして、長年にわたりブランドの顔となってきたモデルです。
ラグジュアリーブランドとして価格も高めになりがちなデローザですが、この価格でデローザを手に入れられるのはかなり魅力的な選択肢といえるでしょう。
価格:税込150,000円(新品参考価格:367,500円) | |
サイズ | 48(約160-170cm) |
フレーム素材 | クロモリ |
メインコンポーネント | カンパニョーロ ヴェローチェ |
重量 | 約8.94kg |
>> DE ROSA 「デローザ」 NEO PRIMATO 年式不明 ロードバイク / 高知店
クロモリなら「バラ完」でロマン追求もアリ

味わい深いクロモリフレームだからこそ、おすすめしたいスタイルがあります。それは、フレームやパーツを自分で選んで作り上げる「バラ完」というもの。
通常、ロードバイクは完成車として販売されるのが一般的です。しかし、バラ完では、フレームを基準にコンポーネント、ハンドル、サドル、シートポスト、ステムといったパーツをすべて自分の好みで選び、理想の一台を作り上げていきます。
クロモリのフレームはパーツの自由度が高く、自分好みのコンポーネントやホイールを選びながら、唯一無二の一台を作る楽しみがあります。たとえば、クラシックなフレームに最新のコンポを組み合わせたり、あえて昔ながらのWレバーやシルバーパーツで仕上げたり。細部にまでこだわることで、見た目も乗り味も、自分だけのスタイルを追求できます。
また、クロモリフレームは耐久性が高く、メンテナンスしやすいため、長く乗り続けることができるのもポイント。パーツ交換やアップグレードを楽しみながら、じっくりと育てていく感覚は、他の素材ではなかなか味わえません。
さらに中古市場にはクロモリフレームの販売も豊富で、なんと2万円台で見つけることも可能! ぜひとも掘り出し物を見つけてみてください。

PANASONIC「パナソニック」年式不明 フレームセット / 浜松店
長く愛せるクロモリフレーム。一生遊べる1台を見つけよう

クロモリフレームの自転車は、その造形の美しさと頑丈さから、多くのサイクリストに愛されています。
一方で、アルミやカーボンと比べると重量があるため、ヒルクライムやレース志向の方には向かないかもしれません。 しかし、マイペースでライドを楽しみたい方や、頑丈な自転車を求める方には最適な選択肢です。
また、クロモリの自転車は適切なメンテナンスをすれば何十年も乗れるため、新車価格が高騰する今、中古の選択肢も含めて検討するのもおすすめです。
今回紹介したモデルも参考にしながら、自分に合ったクロモリロードを見つけてみてください!
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