ロードバイクが気になりだして、はじめての一台を検討しているみなさま。いざ買おうとしてもあまりにたくさんの選択肢があって、何を選んでいいのかわからないですよね。未知の世界のハウツーは、その道を知り尽くしたプロに聞くのが一番。
自転車専門誌『サイクルスポーツ』『バイシクルクラブ』 の編集長を歴任し、現在はフリーランスとして自転車を活用した地方コンサルに従事するなど、 今なお自転車業界で活躍し続ける “輪界のリビングレジェンド” イワタこと岩田淳雄さんに、今選ぶべき初めてのロードバイクを聞いてきました。
イワタ流「初めてのロードバイクの選び方」
どうも、イワタです。自転車メディアの編集をずっとしてきたなかで、「初めてのロードバイクはどれがおすすめですか?」なんていう質問はイヤというほど受けてきました。
その都度、「アンカーやジャイアントとか、しっかりしたブランドのシマノ105コンポ*を積んだモデルから選んでみては?」とか「趣味やスポーツとして続くかどうかわからないんだったら、まずはシマノのティアグラとかソラあたりのコンポのアルミフレームで十分」なんて答えていたのです。
*) コンポ:コンポーネントの略。駆動パーツの総称で、自転車の走行性能を決めるひとつの要因になる。
なにせ編集長ですからね。勢い模範的な回答になるわけです。あちこち忖度しなきゃならんし。高いバイクが売れないと業界が盛り上がらないし。
しかし! それってなんかつまんねー答えだよなぁと、編集長を辞したあとは思うようになりまして。で、日夜血のにじむような研究を続けた結果、ひとつの結論に至りました。
それは「自分がカッコいいと思う自転車に乗れ!」ということです。
最初の時期こそ、カッコよさが必要
ロードバイクを買おうって人は、大なり小なりその「カッコよさ」に憧れて買うわけでしょ? そのバイクを所有する生活や、乗りこなす自分を想像して、「イイかも……!」って思って手に入れたくなってるわけでしょ? だったら性能がどうこうとか、ブランドがどうこうとか、この際関係ない。ひと目見て、「これカッコいい!」と思ったバイクを手に入れるべきだと思うんですよね。
名の通ったブランドで、スペック的に性能もいいらしい。予算もなんとかなりそう。でもなんだかフォルムが好きじゃない、色が嫌い。走ってても気分が盛り上がらない。そんな自転車には乗りたくないじゃないですか!
もちろんブランド自体がカッコいいとか、すげーエアロで空力性能が高くて速いんだとか、そういう価値観もあるんで否定はしませんけどね。俺も好きなブランドありますし、エアロも乗ってますし。でもいかに好きなブランドでも速くても、カッコ悪いモデルには乗りたくないわけですわ。
だから「自分がカッコいいと思った自転車を買え、人の意見なんか気にすんな」というのが俺の結論ってわけです。
カッコよくても高いと買えない。でもリユースなら安く始められる
ただ、ただですよ。価格ってのは大きな壁になりますわね、最初の一台だととくに。
最近は何でも値上がりしてる時代ですが、ロードバイクなんてその最たるもの。シマノの最上級コンポ、デュラエースのついた新車なんて、もう庶民には手が届きません。100万円以上もする自転車、誰が買うの? ちょっと前までエントリー向けと言われていた105のモデルだってもう立派な高級品です。
そんなときに選択肢のひとつとして考えていただきたいのがリユースモデル。いわゆる中古ですが、近年中古に対する考え方ってすごく変わってきてると思いません?
いやじつは俺もね、編集長時代は「中古はどんな人が乗ってたか、どんな扱いされてきたかわからないから、避けたほうがいいですよ」なんて言ってたりしたわけですよ。
でもね。もうみんなメルカリとかヤフオクとかでモノを買う時代になってきてるじゃないですか。中古に対する意識がずいぶん変わってきた。そして自転車だって、バンバン中古が売買されているわけです。だって安いしね、エコだしね、えすでぃーじーずだしね。
しかもリユース専門ショップで買う場合はその店の専門スタッフがしっかりチェックしてくれてるわけじゃないですか。危ないモノなんか売りませんよ、フツー。しかも店舗が近くにあれば試乗だってできる。
ちなみに俺はリサイクルショップで中古の80年代のビチューってブランドの希少完成車を見つけておおっ!と思い、店の駐車場で試乗させてもらって買いました(笑)。
だからね、中古だから心配だとかいうのは、もう過去の話になりつつあるんじゃないかと思うんです。新車で安いのを買うか、中古で高いのを買うか。そこはもう価値観の問題なんで口は出しませんが、俺なら中古でカッコいいのを探します、って話で。
独断と偏見でチョイス! 最初に乗るべき10台
というわけで、リユース自転車店の中でも規模的にかなりでかいバイチャリをチェック。初めて買うロードバイクとして俺がおすすめしたい、いや俺がカッコいい!と思うモデルを10台ピックアップしてみることに。
みなさんの「己の美学」を貫いたバイク選びの参考になればと。ではいってみよう。
ビアンキ・インテンソ 105 2019年モデル
長距離を走るのに適した「エンデュランスロード」と呼ばれるモデル。乗りやすいフレーム設計なんで、楽に乗りたいんだけどカッコ悪いポジションになるのはイヤ、って人におすすめ。5年落ちのBランク商品とはいえ、カーボンフレームでシマノ105のコンポって考えると、かなりお買い得では? じつはすでにラインナップ落ちしたモデルで、そのぶん希少価値があるともいえる。
なにしろビアンキのイメージカラーであるチェレステの、最新パターンのグラフィックだからね。仲間から羨ましがられること間違いなし。
販売価格:税込120,000円(新品参考価格:税込228,800円) | |
メーカーサイズ | 53 |
フレーム素材 | カーボン |
メインコンポーネント | シマノ 105 (R7000系) |
重量 | 約8.8kg |
>> BIANCHI 「ビアンキ」 INTENSO 105 2019年モデル ロードバイク / 世田谷店
コーダーブルーム ファーナ ティアグラ 2023年モデル
コーダーブルームってのは本当に日本人にフィットする自転車を作る!をモットーに、老舗自転車会社のホダカがリリースする注目ブランド。じつはレースをサポートするマヴィックカーのルーフに乗ってるバイクはコーダーブルームだったりする。
これはシマノのティアグラっていうコンポで組まれているんだけど、ブレーキ本体だけワングレード上の105を奢ってるとこなんか、メーカーの良心を感じるよなー。リスペクトです。
このファーナは一応エンデュランスロードってことになってるけど、要は初めての人にも乗りやすいモデル、ってこと。現行モデルのファーナが半額近い価格、しかもAランク商品。サイズが合うなら買い!
販売価格:税込73,000円(新品参考価格:税込146,300円) | |
メーカーサイズ | 430 |
フレーム素材 | アルミ |
メインコンポーネント | シマノ ティアグラ(4700系) |
重量 | 約9.2kg |
>> KHODAABLOOM 「コーダブルーム」 FARNA TIAGRA 2023年モデル ロードバイク / 伊勢崎店
ジェイミス レネゲード エキスパッド 2019年モデル
アメリカンブランドのジェイミス。鉄フレームを得意とするブランドなんだけど、それが最近のグラベルロードブームでググッと注目を集めるようになった。カーボンフレームにはないタフなイメージと少しクラシックな味わいが、アウトドア派の心を鷲づかみにしちゃったわけ。
最近のジェイミスはこのレネゲードだけで食ってるようなもんで、それだけに力の入れようもハンパではない。ガンガン使ってナンボのツーリングモデルだから、少々の傷なんかは気にしなくていいし、カラーリングが一世代前なのも、かえって長く乗ってるっぽくてカッコいいってもの(笑)。それがこの価格なんだから、何も考えずに飛びついてヨシ。
販売価格:税込76,000円(新品参考価格:税込159,840円) | |
メーカーサイズ | 56 |
フレーム素材 | スチール |
メインコンポーネント | シマノ ティアグラ(4700系) |
重量 | 約11.5kg |
>> JAMIS 「ジェイミス」 RENEGADE EXPAT 2019年モデル ロードバイク / 熊谷本店
スコット CR1 チーム 2008年モデル
スコットのCR1といえば、かつては軽量カーボンバイクの代名詞的存在。ツール・ド・フランスでも活躍した名車でございます。それがこの価格かー、中古バンザイですね。
しかもこの状態で実測8.6kgってことはですよ、タイヤやホイールなんかを換えて軽量化していけば、6kg台の超軽量ヒルクライムバイクを作り上げられるかも、なわけですよ。
しかもヘリテージモデルとしての価値もこれから増してくるはず。この価格でそんなに楽しめるんなら、俺買っちゃおうかなって思うくらい。あ、この記事が出た時点で売れてたら、俺が買ったと思ってくれ。
販売価格:税込66,000円(新品参考価格:312,900円) | |
メーカーサイズ | L/56cm |
フレーム素材 | カーボン |
メインコンポーネント | シマノ105(5600系) |
重量 | 約8.6kg |
>> SCOTT 「スコット」 CR1 TEAM 2008年モデル ロードバイク / 川越店
キャノンデール キャド10 105 2012年モデル
アルミフレームといえばキャノンデール! 我が家の家訓でアルミはキャノンデールしか買ってはいけないことになっているんだけど、それほどキャノンデールのアルミには神通力があるわけです。しかもこの2012年頃は、すでにカーボンフレームが主流になっていたにもかかわらず、俺たちはアルミでいくぜ!とばかりに唯我独尊、そこをどけ俺がキャノンデールだ、という勢いだった時代。そのトップモデルがCAAD(キャド)シリーズだったわけ。
グラフィックもアルミ全盛時代を彷彿させるし、シマノのホイールも似合ってる。いや、これ欲しいわー。
販売価格:税込121,000円(新品参考価格:税込199,000円) | |
メーカーサイズ | 54 |
フレーム素材 | アルミ |
メインコンポーネント | シマノ アルテグラ(6700系) |
重量 | 約7.7kg |
>> CANNONDALE 「キャノンデール」 CAAD10 105 2012年モデル ロードバイク / AKIBA店
グスト レンジャー プロ ウルトラ 2023年モデル
昨年までチームグストが主力マシンとしていたレンジャープロ ウルトラのリムブレーキモデルがこれ。カーボンフレームにシマノ・アルテグラのR8000という高級コンポで組んで、ホイールまでカーボン。これで定価33万円ほどってのも価格破壊だけど、それが1年落ちで20万円ってどーゆーこと!? ブランドにこだわるならスルーしてもらっていいんだけど、コスパ重視ならこれしかないでしょー!っていう超バーゲン価格。
しかもこのグスト、フレームのカラーリングが左右で反転になってるっていう、一台で二度おいしい小ワザ付き。どういうことか知りたかったら店舗で実物を見てみて。
販売価格:税込200,000円(新品参考価格:税込333,000円) | |
メーカーサイズ | L |
フレーム素材 | カーボン |
メインコンポーネント | シマノ アルテグラ(R8000系) |
重量 | 約8.3kg |
>> GUSTO 「グスト」 RANGER PRO ULTRA 2023年モデル ロードバイク / 伊勢崎店
フジ フェザー CX+ 2018年頃モデル
フジってのはもともと日米富士って会社の伝統的ブランドで、昔からの自転車ファンなら「懐かしいねー」で終わるとこなんだけど、最近資本が変わってオシャレ自転車としてブイブイいわせてるんです。俺はどっちかっていうとシリアス志向の自転車雑誌の編集長だったんで、オシャレ自転車なんて関係ねーやと思ってたんだけど、しかししかし、よくよく見てみると意外にカッコいいんだよね。
このフェザーCX+はタイヤを見ればわかるとおり、ダートを走る前提のツーリングモデルなんだけど、これって街乗りで使ったらカッコいいよね、ってルックス。もちろんスポーツライドもオーケーだから、楽しく自転車生活が送れそうな一台です。
販売価格:税込90,000円(新品参考価格:税込118,800円 ※シマノ・ソラモデル) | |
メーカーサイズ | 54 |
フレーム素材 | クロモリ |
メインコンポーネント | シマノ105 |
重量 | ー |
>> FUJI「フジ」 FEATHER CX+ 2018年頃モデル ロードバイク / 浜松店
ラレー CRN カールトン-N 2016年モデル
おおー、ラレーだよ。ラレー(昔はラーレーって呼んでた)はイギリスの伝統的ブランドで、カールトンっていう名車で知られてる。これも一応カールトンだね。最近日本で売られてるラレーは日本のアラヤがプロデュースしたモデルなんで、実質日本モデル。でもそのアラヤのおじさんたちは本物の自転車のプロなんで、そのクオリティは本国を凌ぐと断言できる。
で、どうですこのクロモリのクラシカルなたたずまい。最新のパーツをアッセンブルしながら、この端正なルックスはほかのブランドでは出せない味わいです。おっ! しかもコイツ、ホイールがカンパニョーロのゾンダに換えてあるじゃん! お得感マシマシですね!
販売価格:税込112,000円(新品参考価格:税込138,240円) | |
メーカーサイズ | 520 |
フレーム素材 | クロモリ |
メインコンポーネント | シマノ ティアグラ(4700系) |
重量 | 約9.2kg |
>> RALEIGH 「ラレー」 CRN Carlton-N 2016年モデル ロードバイク / 熊谷本店
リドレー カンゾー A ティアグラ 2021年モデル
ザ・グラベルバイクですね、リドレーのカンゾー。グラベルには珍しくカーボンフレームのレーシングバイクまでラインナップされているカンゾーシリーズの、コイツはアルミフレームのエントリーモデル。でもカラーリングのせいか安っぽく見えないのがいい。コンポーネントはグラベル用のGRXではなくティアグラだけど、全然問題ないでしょう。
とにかく流行りのグラベルバイクに乗っておきたいならこれ一択。Aランク商品で「使用感少なく綺麗な状態です」ってことだし、何しろすごくお買い得なんで、バイチャリを信頼して大推薦しとく。
販売価格:税込132,000円(新品参考価格:税込231,000円) | |
メーカーサイズ | S |
フレーム素材 | アルミ |
メインコンポーネント | シマノ ティアグラ(4700系) |
重量 | 約10.8kg |
>> RIDLEY 「リドレー」 KANZO A TIAGRA 2021年モデル ロードバイク /大阪門真店
ピナレロ ラザ 105 2016年モデル
ピナレロだよ。このウネウネのオンダフォークってやつがたまらん、あるいは弧を描いたホリゾンタルなトップチューブがセクシーすぎる。もうピナレロになら抱かれてもいい。
そんなピナレロ信者の仲間入りをしたいなら、これしかありません。なんだよ初心者がピナレロなんか乗りやがってとか、ケッ金持ちはいいよな、という視線に耐えられるなら、あるいはそれが快感に変わるなら、あなたはこれを選ぶべき。ちなみにこのラザはコンフォート系のロングライド向きモデルです。
販売価格:税込119,000円(新品参考価格:税込321,840円) | |
メーカーサイズ | 530 |
フレーム素材 | カーボン |
メインコンポーネント | シマノ 105(5800系) |
重量 | 約8.39kg |
>> PINARELLO 「ピナレロ」 RAZHA 105 2016年モデル ロードバイク/ 奈良店
自転車選びは恋愛と一緒
わかってもらえたかな。つまりは自分の好きな、カッコいいと思うロードバイクを選ぶってこと。中古ってすべて一品物なわけじゃん。その状態のものは世界中にその1台しかない。つまり一期一会なわけです。
バイチャリのサイトで、おっこれは!ってのが見つかったら、お店に行って現物チェック!が正しい行動。で、お店の人に話を聞いて、隅々までチェックして、できれば試乗してみて、そんで惚れ込んで買う。
自転車選びって恋愛といっしょだからさ。チャンスを逃したら付き合えないし、いつまでたっても自分のものにならない。その人は世界に一人しかいないんだよ。そのロードバイクは世界に一台しかないんだよ。だから最初に「おっこれは!」と思ったときのトキメキを信じて動けば後悔はないと思う。ぜひみなさんも自分が「カッコいい!」と思ったロードバイクを手に入れて、楽しい自転車生活を送ってくださいー!
以上イワタでした。またなー!