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【やってはいけない】ロードバイクのメンテナンスNG9選

ロードバイクをクリーニングするとき、パンク修理やパーツ交換をするとき、日々の点検のとき。程度の差こそあれ、サイクリストなら誰しもセルフメンテナンスをする機会があるでしょう。

大切な愛車のメンテナンス時に気をつけたい【やってはいけないNG項目】を知っていますか? 知らずにやっちゃってたらけっこうヤバいかも。さっそくチェック!

メンテナンスの大切さ

こんにちは、現役自転車メカニックの「ののむら」です! みなさん、愛車のメンテナンスはしてあげていますか?

自転車は人間の体と違って自己治癒はできないので、メンテナンスをして最良の状態にしてあげる必要があります。定期点検はいわば健康診断のようなもの。

とくにスポーツ自転車においては、簡単なメンテナンスは自分でできたほうが良いのですが、間違ったセルフメンテナンスを見かけることもよくあります。

間違ったメンテナンスをしていると、

  • 思わぬ走行トラブルに繋がる
  • パーツの寿命を縮めてしまう!?

など、せっかくのメンテナンスが逆に危険を招くなんてことも。

この記事で「やってはいけないメンテナンスNG集」をしっかりチェックしておきましょう!

やってはいけないメンテナンスNG9選

それではさっそく、メンテナンスのときについやらかしがちなNG項目を、ひとつずつ確認していきましょう。

自転車技士のおかだくんの意見を交えながら、ダブルのプロの目を通してチェックしていきたいと思います!

メンテのNG①ボールポイントで本締めまでしてしまう!

まずは工具に関するNG行動から。

六角レンチは自転車メンテナンスの基本工具ですが、六角の反対側についている「ボールポイント」でやりがちなNG行動をチェック!

ボールポイントとは?

左側が六角、右側がボールポイント

ボールポイントとは、六角レンチの反対側にある、角が丸くなった先端部分のこと。

  • ボールポイントのメリット
    • ネジに対して斜めからでもアクセスできる
    • ネジの頭上に障害物があってもそれを避けて回せる

六角レンチが丸く加工された先端「ボールポイント」は、細いところにあるネジを回すときや、ネジを早回しして仮締めしたいときにとっても便利。

たとえばボトルケージの取り付けの際、垂直に差し込まなくてもネジにアクセスできるボールポイントなら、ケージ本体に工具が干渉することがありません。仮締めでサッと位置決めするのに便利なので、私もよくボールポイントを使います。

ほかにも、最近はエアロ意識でハンドルの裏側からネジを差し込んで締めるタイプのステムがありますが、Tレンチではステムと干渉して仮締めができないので、そういったシーンでもボールポイントが活躍しますね。

そんな便利なボールポイントですが、やってはいけないNG行動は「本締め」。最後までボールポイントで締めきってしまうのは、じつはNGなんです!

ボールポイントで本締めしてしまうと、ネジの穴に工具が完全にハマっていない状態で力が加わり、ネジ穴が潰れてしまうおそれがあります。

ネジ穴が潰れてしまうともう大変。工具でゆるめることも締めることもできなくなりますからね。

「オーバートルク*を防ぐという意味でも、ボールポイントは最後の仕上げには使わない方が良いですね」

*)オーバートルク:規定を超える力(トルク値)で部品を締め付けること。ナット部分の破損やネジ山のつぶれの要因になる

本締めする際は六角レンチの頭に持ち替えて、しっかりと面で力が掛かるように締めましょう。

メンテのNG②ステムのネジ締めの順番がテキトウ【ハンドル側】

ステムを止めている4つのネジ。締める順番は?

ステムのハンドル側は、4本*のネジで固定されていますが、この部分のネジ締めに正しい順番があることは知っていましたか? そう、つまり「ネジを締める順番を気にしない」ことが2つ目のNG行動です。

*)2本で固定するステムもあります

ずばり、ステムのネジは「対角線順に締める」が正解。

右上が1だとしたら、左下が2、ハンドルを挟んで左上が3、対角線上の右下が4といった具合に、斜めに向かい合ったネジを順々に締めていくのが正解なのです。

対角線上で締めていくことで、締め付ける力を均等にすることができ、ネジがゆるみにくくなります。

ネジの締め具合が全て均等になるように仕上げると、上下の間隔もそろい見た目も美しいですよね。(ちなみに私は、ネジ山を数えてそろえることもあるくらいこだわる部分です)

NG例。ステムを横からみたときに、上下の隙間の間隔がそろっていない

「上が狭くて下が広い、つまり上を締めすぎて下がゆるいときは、ネジに不要な負荷がかかっていたり、ゆるみの原因になったりしちゃいます。本締めでは、全部のネジを均等にきっちり締めるのが大切です」

※ステムの種類によっては、上か下のどちらかをべた付けにするものもあります。各ステムのマニュアルに従いましょう

メンテのNG③ステムとトップキャップの締める順番が違う

ステムのハンドル側の次は、フォークコラム側も見ていきましょう。

②と同様に、フォークコラムとステムも締める順番が決まっています。ということで3つ目のNGは「ステムとフォークコラムのトップキャップを締める順番が違う」ですね。

ここは各ネジの役割を理解しておくと覚えやすいので、しっかりインプットしておきましょう!

フォークコラムとステムには全部で3つのネジがありますが、フォークコラムのてっぺんにある縦のネジ(1)と、ステムを固定している横のネジ(2・3)でそれぞれ役割が違います。

「この部分を締める順番は、必ず『縦のネジ(1)が一番最初』です! 必ずです!」

そう、縦のネジ(1)、つまりトップキャップを一番最初に締めないといけないんですね。

トップキャップのネジは、フォークコラムをしっかり上まで引き上げる役割をもっています。

トップキャップのネジ(1)を締めることでフロントフォークを引き上げ、ガタつかないようにする

引き上げるために縦のネジ(1)を締める→ステムを固定するために横のネジ(2・3)を締める、というのが正しい順番です。

間違って先に横のネジ(2・3)を締めてしまうと、フォークコラムに隙間がある状態でステムが固定されてしまい、ヘッド部分にガタが発生してしまいます。

フォークコラムがカーボン製の場合は、割れてしまうこともあるので絶対に避けたいですね!

「縦のネジ(1)をきちんと締めたら、横のネジ(2・3)を締めますが、ここは3→2と下から締めていくのがベター。ここもクランプの隙間がそろうように、均等に締めるようにしましょう」

ブレーキをかけた状態で車体を引いたり押したりしてみて、ガタが出てないのを確認したら完了です。

メンテのNG④ディスクローターにコーティング剤を塗っちゃう

コーティング剤を使って車体を拭きあげるとツヤツヤになって感動しますよね。

私もよくメンテナンスの仕上げとしてコーティングを使います。

  • コーティング剤のメリット
    • 塗装面を守ってくれる
    • 汚れに強くなる

ただ、このコーティング剤などのケミカル類は「使ってはいけない箇所」があります。それはブレーキ面。

洗車やメンテナンスの仕上げにコーティング剤を噴いたウエスでフレームを拭いて、そのままホイールも拭き上げて、最後にディスクローターを!はちょっと待った。同じウエスでディスクローターを拭いてはいけません!

「キレイにしたくなるのは分かるんだけど、コーティング剤って滑りが良くなるから、ディスクローターのようなブレーキ部分に使ってしまうのは絶対にNG!」

リムブレーキの場合ももちろんNG

ブレーキ面にコーティング剤をつけるのがNGなのは、リムブレーキでも同じです。リムのブレーキシューがあたる部分にコーティング剤をつけてはいけません! ブレーキをかけても、ブレーキシューが滑ってしまうので恐ろしいことに……。

万が一付着してしまった場合、専用のケミカルで落とすことはできますが、メンテナンス時の鉄則として「ブレーキ面にはコーティング剤を付けない」と覚えておくことが大切です。

メンテのNG⑤ブレーキパッドにクリーナーをつけちゃう

ブレーキ関連では、ディスクローターよりさらに気をつけたいのがブレーキパッドです。

パーツクリーナーやチェーンクリーナーはセルフメンテナンスでもよく使われるクリーナーですが、どちらもブレーキパッドへの使用は絶対にNG!

ディスクブレーキのパッドは、油分が大敵。パーツクリーナーには添加剤(油分)が含まれているものもあるので、必ず専用品を使わなければいけません。

「ブレーキパッドは本当に専用のクリーナーじゃないとダメ! ディスクローターは専用ケミカルでなんとか落とせるけど、パッドにクリーナー類がついてしまったら基本的には交換しかないからね」

④ディスクローターと⑤ブレーキパッドに共通していえるのが「絶対に油分を付着させない」こと。ブレーキ制動力の低下、異音、音鳴りの発生を防ぐにはこれに限ります。

コーティング剤やパーツクリーナーは、スプレータイプが多く市販されています。とくに屋外でスプレー缶を使用する際のポイントとして、風向きに注意すること。直接吹きかけないようにしていても、風向きでうっかりブレーキ面にかけてしまう可能性が!

コーティング剤はウエスにつけてから拭きあげたり、チェーンオイルはスプレータイプではなく1滴1滴垂らすリキッドタイプ・ワックスタイプを使うのもおすすめです。

または、メンテナンス時にディスクローターをカバーするアイテムも販売されているので、不安な方は活用してみるのもおすすめです。

メンテのNG⑥ブレーキシューが適正な位置に入っていない

リムのブレーキ面に対してシューの角度が適正でない

ここからはリムブレーキのNG項目です。注目するのはブレーキシュー。

「リムのブレーキ面に対してブレーキシューが適切な位置に当たっていない」が6つ目のNG項目です!

リムのブレーキ面に対してズレた状態でブレーキレバーを握ると、ロゴ面やタイヤにブレーキシューが当たってしまい、ロゴ面が削れたり、最悪タイヤに穴が開いてしまう可能性も……!

峠の下りで長時間にわたってブレーキをかけるとき、ブレーキシューがずれていて摩擦熱でタイヤに穴が……と考えるとゾッとしますね。

ブレーキシューを取り付ける際は、上ギリギリでなく1~2mm*くらいタイヤとの間隔をあけて、左右の高さをきちんとそろえてあげましょう。

*)製品によりますが、シマノのマニュアルでは1mm以上と記載されています

メンテのNG⑦ブレーキ本体の位置がズレている&ホイールがセンターに入っていない

ブレーキシューの位置と同じように気にしておきたいのが、ブレーキ本体の位置です。画像では見事に、ブレーキ本体の角度はズレていて、ホイールもセンターにきていませんね。

「ブレーキをかけてキャリパーがホイールを挟んだときに、ホイールが左右に動いてしまうのがセンターについていないサインです」

まずはきちんとホイールをはめて、ブレーキキャリパーをセットしましょう。(ホイールのはめ方はこの次のNG⑦をチェック)

ブレーキキャリパー本体は、ブレーキレバーを握りながらブレーキ本体を後ろから固定しているネジを締めます。これで大体中心にくるので、あとは左右の間隔を見ながら手で微調整してください。

出典:Shimano

ブレーキ本体の右上にセンタリング調整ネジがあるので、これを少しずつ回して左右の間隔を調整します。

ホイールがズレている場合は、取り付けの段階から見直してみましょう。

メンテのNG⑧ホイールが奥まで入っていない&クイックリリースが適正なトルクで締められていない

ブレーキ本体の位置をセンターに調整する前に、ホイールがしっかりはまっているかを確認しましょう。

ホイールがエンドのツメの奥までしっかり入れる必要があるのですが、ここで私が作業している手順を紹介します。

ホイールをフロントフォークのエンドにしっかりはめたら、そのままクイックリリースの両端を持って車体を上に持ち上げてみてください。

そうすると車体の自重でしっかり奥まで入ります。

ホイールがフォークにきちんとセットできたら、クイックリリースを適正な強さで締めます。強すぎて弱すぎてもNGで、適正値で締めることが大事。(シマノのマニュアルでは5~7.5N.mと記載されています)

「クイックリリースの締めがゆるいと、コーナリングやブレーキングに影響が出ます。安全性にも関わる部分なのできちんとセットするようにしましょう!」

トルクの数値は目で測れないので、トルクレンチがあると便利です。とくにカーボン製のロードバイクやパーツは適正なトルク管理が必須なので、セルフメンテナンスをする人はひとつ持っておくと安心です。クイックレバーだけでなく、部品の締め付けの際はいつも規定トルクをチェックするクセをつけると、部品破断といったトラブルを防げますよ。

クイックリリースを締めたら、最後に指をフロントフォークとタイヤの隙間に入れて、左右が同じ間隔かチェック! ホイールがセンターにきていれば、指とタイヤの間隔が左右でそろいます。

この手順でセットしてもホイールがセンターにこない場合は、製造・振れ取り段階でのセンター出しができていない可能性が高いです。その場合はプロに相談しましょう。

メンテのNG⑨ダミーローターを使わずブレーキレバーを握ってしまう

ローターが入っていない状態のディスクブレーキキャリパー

これは輪行・洗車時にとても多いミス……! 油圧ディスクブレーキのロードバイクに乗っている人は要注意です。

ホイールを外した際に、何も挟まずブレーキレバーを握ってしまうのはNG。油圧ディスクブレーキのディスクローターがない状態で、そのままブレーキレバーを握ってしまうとピストンが押し出され、キャリパーの中でパッドが締まりきってしまうんです!

一度この状態になってしまうと、ホイールを戻そうとしてもディスクローターがうまくはまらなかったり、はまったとしてもキャリパーの隙間が狭すぎて、つねにディスクローターに擦っている状態になる可能性があります。

ネコチャンのダミーローター

ここで必要になるのがダミーローターです。ホイールを外したあと、ディスクローターのかわりにキャリパーの隙間にダミーローターを差し込みます。

輪行するときは、ダミーローターが抜けないように更にゴムなどで固定してあげると安心です。

万が一パッドが閉じてしまったときは、専用の工具でもとに戻しましょう。「ピストンプレス」などの名称で販売されています。出先などで手元にない場合は、マイナスドライバーという奥の手も。

「マイナスドライバーは最終手段。専用工具より接地面が小さく、パッドをえぐって傷つけてしまうので、優しく丁寧にやってくださいね……!」

ちなみに、デメリットに見えるパッド閉じは、じつはブレーキのタッチを一定にしてくれるメリットでもあるんです。リムブレーキの場合、ブレーキシューが減ってくるとタッチがスカスカになってきますよね。これが油圧ディスクブレーキだと、ブレーキパッドがすり減ったぶんピストンが押し出されてクリアランスを自動調整してくれるので、タッチの変化がなく使用できるというわけなんです。

メンテナンスNG項目を動画でイッキ見!

NG項目に気をつけて、愛をもってメンテナンスしよう

最後に、メンテナンスのときにやってはいけないNG項目9つから、気をつけるべきポイントをおさらい!

  1. ボールポイントは仮締めまで、本締めは六角レンチで!
  2. ステムは正しい順番で締める
  3. トップキャップのあとにステムを締める
  4. ディスクローターにはクリーナーがかからないようにする
  5. ブレーキパッドは専用のクリーナーを使う
  6. ブレーキシューは適切な位置にセットする
  7. ブレーキ本体とホイールはセンター位置に
  8. ホイールは奥までセットし、正しいトルクでクイックリリースを締める
  9. 油圧のディスクブレーキのホイールを外したら必ずダミーローターをセット!

うっかりNG項目をやってしまわないように気をつけて、安全に正しく自転車をいたわってあげてくださいね。愛車もきっと喜びます!

車体だけでなく、パーツの取り扱いも豊富なバイチャリで、カスタムにチャレンジするのもおすすめ! この記事を参考にして、自分で楽しくカスタム&メンテナンスしてみてくださいね。

>> アップグレードに、今のパーツや自転車を買い取ってもらうのも賢い選択!

  • 記事を書いたライター
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ののむら / 野村綾乃

ののむら / 野村綾乃

自転車店で働きながら全国各地でロングライドを楽しむ女子メカニック。 現場で培った豊富な知識を生かし、自転車の楽しさを広めるべく自転車番組など各種メディアに出演中。

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