いよいよこの4月から、自転車の交通違反に対する「交通反則通告制度(いわゆる青切符)」の運用が始まります。
運用開始を目前にして「反則金はいくら!」にばかり意識がいきがちですが、じつは「ルール自体はこれまでどおり、知ってさえいれば何ら怖いものではない」というのが本質です。
逆に言えば「知らなかった」「守っているつもりだった」こそ注意すべきポイント。「知らないうちに違反していた」というケースが、自転車の交通違反では非常に多いのです。
そこで今回は、見落としがちな「勘違いルール」に焦点をあて、その実態を探ってみました。
定点観測して分かった「正しいと思っていたのにルール違反」
実際のところ、自転車の交通ルールはどれくらい意識されているのでしょうか。街中でのリアルな走行実態を定点観測してみました。
観測場所は、大阪のとあるベッドタウンにある「スクランブル交差点」と、交通量の多い住宅街の「一時停止交差点」です。それでは早速、1つ目の地点での観測結果から見ていきましょう。
【観測地点①】スクランブル交差点

1つ目の地点は、多くの歩行者と自転車が行き交う「スクランブル交差点」です。
- 観測時間帯: 通勤・通学のピークタイム(夕方17時)
- 実施期間: 2日間(各1時間)
2日間の定点観測を通して、主な違反がどの程度発生しているのかを探りました。まずは、その集計結果をご覧ください。
| 違反項目 | 確認件数 |
|---|---|
| 信号無視 | 20件 |
| 逆走(車道の右側通行) | 9件 |
| イヤホン着用 | 9件 |
| ながらスマホ | 4件 |
ここからは、それぞれの違反が現場でどのように起きていたのか、「守っているつもりで守れていないポイント」とあわせて整理していきます。
◾️【最多】もしかして自転車が守るべき信号がわかってない…?「信号無視」20件

スクランブル交差点の調査で最も多かった違反が「信号無視」です。本記事では、対面する信号が赤に変わった後も進入したケース、つまり明らかな信号無視を対象にカウントしています。
2日間、それぞれ1時間の調査で計20件と、想定を上回る結果になりました。
「信号を守る」はもっとも分かりやすく、誰もが認識しているはずのルール。それでもこれだけ件数があがってくるということは、みんなもしかして「自転車が従うべき信号機」が分かっていないのでは……?
とくに自転車にとって分かりにくいスクランブル交差点では、気づかないうちに信号無視になっているケースも少なくありません。青切符制度施行のこのタイミングで、しっかり頭に入れておきましょう!
判断のポイントは、「自転車がどこを通行しているか」です。

まず自転車は車道通行が原則であり、車道を走り車両用信号に従うのが正しいルールです。

一方で、例外的に「歩道を通行し横断歩道を渡る」場合は扱いが変わります。この場合は歩行者と同様に、歩行者用信号に従って横断します(図の「ア」「イ」)。
特に気をつけたいのが、スクランブル交差点で頻発する「ウ」のケース。車道を走行していた自転車が、歩行者用信号の青信号で直進してしまっています。車道を走行しているときに従うべきは車両用の信号ですから、これは立派な信号無視にあたります。
つまり自転車は「自分がどの位置を走っているか」を基準に判断することが重要です。
今回調査したスクランブル交差点は少し事情が違っているようでした。
自転車は車道通行が原則ですが、車道の幅が狭い場合や車の交通量が著しく多い場合などは、例外的に歩道を通行することが認められています。

自転車の青切符制度でも、単に歩道を自転車で通行しているだけで切符を切られることはありません。
調査地点においても、車道の道幅はけして広くありませんでした。車道には矢羽根とともに自転車マークが描かれているものの、ほとんどの自転車が歩道を通行しているというのが実情です。
歩道を通行している自転車が従うべき信号は、もちろん歩行者用信号です。

今回カウントされた信号無視の多くは、写真の矢印方向において、「歩道通行」→「歩行者用信号の赤信号を無視して突っ切る」というものでした。写真奥に続く道路の交通量が少ないことも影響していた印象です。
何気なく通り過ぎているその一瞬が、ルール違反になっている。そんな実態が浮き彫りになった結果と言えるでしょう。
<信号無視の反則金:6,000円>
◾️無自覚に走っている人多数!?「逆走(車道の右側通行)」9件

信号無視に次いで多かった違反が「逆走」です。これも無自覚にやってしまいがちな違反の代表格です。
2日間、それぞれ1時間の調査で計9件が観測されました。
自転車は車道通行が原則ですが、車道ならどこを走っても良いわけではありません。


自転車は道路の中央から左の部分を通行しなければなりません。つまり、右側通行は「逆走」にあたります。
▼なぜ右側通行が危ない? 警視庁公式チャンネルでチェック

今回の観測地点では、写真のように、車道の右側を走る形で横断歩道へ進入してくるパターンや、横断歩道を渡ったあとそのまま車道へ入り、右側通行になっているパターンが多く見られました。(このとき車両用信号は赤ですから、じつは信号無視のダブルパンチでもあります)
いずれも「悪意のある逆走」というより、左右の意識が薄いまま走り出してしまった印象です。交通量の少ない道路ほど左右の意識が薄れがちになり、そんな油断が「逆走」というかたちで現れているようです。
<逆走の反則金:6,000円>
◾️ルールが曖昧で分かりにくいよね…「イヤホン着用」9件

走行中のイヤホン使用は、周囲の音が聞こえない状態であれば「公安委員会遵守事項違反」となります。
ただし、この違反は他の項目と比べてグレーゾーンがあります。ルールの本質は「イヤホンを着けているかどうか」ではなく、「周囲の音がきちんと聞こえているかどうか」だからです。
たとえば、両耳を完全に塞いでいたり、ノイズキャンセリング機能で外部音が遮断されている場合は明確な違反となる一方で、片耳のみの着用や骨伝導イヤホンであれば問題ないとされるケースも。とにかく判断の基準は「周囲の音が聞こえているか」ということ。
今回の調査でも2日間で計9件のイヤホン着用が確認されたものの、「周囲の音が聞こえているか」は外見だけでは判断が難しく、最終的な違反の線引きは現場の警察官の判断に委ねられる部分が大きいと予想されます。
グレーゾーンがあるからこそ判断を曖昧にしてしまいがちですが、重要なのはあくまで「周囲の音が聞こえているかどうか」。今一度、自分の状態を見直しておきたいポイントですね。
<イヤホン着用の反則金:5,000円>
◾️通話しながらの走行は一発で青切符!「ながらスマホ」4件

走行中にスマホの画面を操作する「ながらスマホ」は、2日間で計4件確認されました。自転車に乗りながら、スマホを手で保持して通話したり画面を注視する行為です。対象はスマホに限らず、タブレットやゲーム機なども含まれます。
じつはこの「ながらスマホ」は、「遮断踏切立入り」「制動装置(ブレーキ)不良」と並んで、一発で青切符となる違反です。事故リスクが高い行為であることから、今回の青切符制度でも最高額となる1万2000円の反則金が設定されています。
自転車を停めて操作することは違反にはなりませんが、今回の調査でも、信号待ちでスマホを操作する人の多さが目立ちました。青信号で発進する際にスマホをしまいきれずフラついたり、周囲への注意が遅れたりする場面も見られ、違反ではないとはいえ、こうした動作がヒヤリとする瞬間を生み出しているのも現実です。
スマホの扱いについては、これまで以上に意識しておきたいポイントですね。
<ながらスマホの反則金:12,000円>
【観測地点②】一時停止交差点

2地点目は、駅にほど近い住宅街の交差点。信号機はなく、一時停止の標識・標示が設置されています。
信号のないこの場所で、果たして標識・標示のルールはどの程度守られているのでしょうか。こちらもスクランブル交差点と同様、以下の条件で観測しました。
- 時間帯:通勤・通学のピークタイム(夕方17時)
- 実施期間:2日間(各1時間)
2日間とも雨天となった調査でしたが、集計結果は以下のとおり。
| 観測項目 | 確認件数 |
|---|---|
| 一時不停止 | 95件 |
| ┗ 一時停止を遵守した人 | 3件 |
| 傘差し運転 | 2件 |
| イヤホン着用 | 3件 |
◾️「気づいていない/知らない」違反の代表格かも。「一時不停止」95件

この結果が、今回の調査で最も衝撃的な数字でした。
2日間で通行した自転車は計98台。そのうち、一時停止標識に従って完全に足を止めたのはわずか3台。残りの95台は、スピードを落としながらもそのまま交差点へ進入していきました。

一時停止標識の下には「自転車止まれ」と明記されていましたが、それでもこの結果です。
おそらく多くの人が「減速したから大丈夫」と思っているのではないでしょうか。しかし単なる減速は「一時停止」とはみなされません。停止線の直前で車輪の動きが完全に止まり、安全確認を行って初めて「一時停止」です。
「自転車も一時停止標識に従う義務がある」というルール自体、まだ十分に認知されていないと思わされる結果でした。
<一時不停止の反則金:5,000円>
◾️雨の日はセーフだと思ってない?見落としがちな「傘差し運転」

偶然にも雨天となった今回の調査では、傘差し運転が2件確認されました。傘差し運転は、イヤホン着用と同じく「公安委員会遵守事項違反」にあたります。
今回の調査では、急に雨が降り出した影響もあり、傘を持たずに濡れながら走行する人も多く、件数としては少数にとどまった印象です。あらかじめ雨が予想されている日であれば、さらに多くの傘差し運転が見られた可能性も考えられます。
また、スクランブル交差点でも見られた「イヤホン着用」は3件確認されました。雨を避けるためにフードを深く被っている人が多く、耳元が目視できないケースもあったことから、実際の件数はさらに多かった可能性もあります。
いずれも反則行為に該当するものですが、ただでさえ視界や音が遮られやすい雨の日に、傘やイヤホンといった要素が重なり、いざという時の反応が遅れるというケースは十分考えられます。思わぬ事故につながりかねない、そんな危うさを現場でも強く感じました。
自転車と雨は決して相性がよいとは言えないからこそ、天候に応じた走り方や備えをあらかじめ考えておくことが大切です。
<傘差し運転の反則金:5,000円>
「知らなかった」が通用しない時代へ。今こそ自分の走り方を点検してみて!
今回の定点観測では、自覚的な違反だけでなく、一時停止や逆走といった「無意識の習慣」から生まれた違反が数多く確認されました。
4月から青切符制度が始まりますが、自転車のルール自体はこれまでと変わりません。だからこそ、「知らなかった」ではすまされず、「守っているつもりが実は違反だった」、そんなズレが問われることになります。
今回の結果が、みなさんの日常の走り方を見直すきっかけになりますように!
記事監修:内海 潤(NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長)