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ROAD BIKE

自転車のコンポーネントとは? 違いは何? ロードバイクコンポのシマノ・カンパニョーロ・スラムを比較

ロードバイクやクロスバイクに乗り始めると耳にするようになる「コンポーネント」(略して「コンポ」)。コンポーネントって具体的には何を指すの? 3大メーカーって? グレードによる違いはどんなもの?

自転車専門誌「サイクルスポーツ」や「バイシクルクラブ」の編集長を歴任した自転車業界のレジェンド、岩田淳雄さんに、自転車のコンポーネントについて根掘り葉掘り聞いてみました! 分かりやすく、熱量たっぷりの解説は必読ですよ。

岩田淳雄

サイクルスポーツ、バイシクルクラブという2大自転車メディアの編集長としてサイクルライフに長く関わる。最近はその経験を生かしてスポーツサイクル関連のアドバイザー、コンサルとして事業を立ち上げ、ペダルプッシャーという屋号で活動。

自転車関係ならなんでもおまかせ!な、まさにレジェンド的存在。

自転車のコンポーネントとは?

自転車のパーツの総称「コンポーネント」。具体的にはどのパーツを指す?

どうも、イワタです。ロードバイクを買おうと思ったときに、初心者が気になるのはその値段だよね。ブランドによってもちろん違うし、カーボンやアルミといったフレームの素材によってもロードバイクの価格は変わってくるんだけど、とくに注目したいのはコンポーネント。これが自転車の価格にめちゃくちゃ大きく影響するんだよ。

コンポーネントってのは簡単にいうと、「走る」と「止まる」のキモになる重要なパーツ群のこと。ざっくりいうとレバー(シフトレバー・ブレーキレバー)、ブレーキ、クランクセット、前後ディレーラー(変速機)、スプロケット、チェーン、BB(ボトムブラケット)からなる、いわゆる駆動・制動系のパーツセットを指す。

コンポーネントにはそれぞれグレードごとにセットとして名前が付けられていて、最上級グレードと普及グレードでは価格も大きく変わってくる。つまりどのグレードのコンポーネントが付いているか、ということでもロードバイクの価格は決まってくるわけ。同じフレームであっても、コンポーネント違いで価格を変えた、いくつもの車種を用意しているモデルもあるくらい。

ロードバイクのコンポーネント:パーツの名称

ここからは、まず構成するパーツをひとつずつ具体的に見ていこう。

レバー(ブレーキレバー、シフトレバー)

ブレーキレバーがシフト(変速)レバーと一体化しているものが主流。デュアルコントロールレバー、エルゴパワーなどメーカーによって呼び名が異なる。またシフトの操作方法も電動(電子制御式)とメカニカル(機械式)で違うほか、メーカーによっても違う

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ブレーキ

大きく分けてホイールのリム部分をゴムのパッドで挟んで制動するリムブレーキと、ハブ付近に組み込まれたディスク(円盤)をレジンやメタルのパッドで挟んで制動するディスクブレーキがある。ディスクブレーキにはワイヤー式と、より性能の高い油圧式がある

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クランクセット

チェーンリング(ギア板)、クランク(ペダルとギア板をつなぐパーツ)&BBシャフトで構成される。ギア板の枚数によってシングルからトリプルまで種類があるが、ロードバイクで主流なのはギア板が2枚のダブル。ギア板の歯数に種類があるほか、クランクの長さも種類があって選ぶことができる

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フロントディレーラー(前変速機)

前のギア板のチェーンを掛けかえて、変速するためのパーツ。ワイヤーによる機械式制御が一般的だが、最近は電動(電子制御式)も増えてきた。ディレーラーのディレイルとは脱線という意味。チェーンを脱線させるものだからディレーラーというわけ

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リアディレーラー(後ろ変速機)

後ろのギアのチェーンを掛けかえる変速機。フロントと同じく上級グレード中心に電動も多くなってきた。2枚付いている小さなギアをプーリーといい、この距離が長いほどワイドなギア比に対応できる。最近はレース用でもワイド対応となってきている

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スプロケット

カセットスプロケット、略してスプロケ。後輪のハブに取り付けられている多段ギアのことで、年々多段化が進んでいて現在上級モデルでは12速(ギアが12枚)が主流となってきている。分解してギアを差し替えてギア比を変えることもできる

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チェーン

前のギア板と後ろのギアをつなぐ駆動の要となるパーツ。カセットスプロケットの段数によってチェーンの幅がわずかに違い、12速用、11速用など専用パーツとなっていることも多い。専用のチェーン工具によって切ったり繋いだりすることができる

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BB(ボトムブラケット)

クランクセットをフレームに装着する部分をBB(ボトムブラケット)と呼ぶが、コンポーネントとしてはそのクランクセットの軸を受けるインサートパーツを指す。以前はネジ式が主流だったが現在は圧入式が多い。規格が多様化しており互換性に注意が必要

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じつはコンポーネントという概念が登場するまでは、パーツはいろんなメーカーのものを組み合わせて使うのもフツーのことだった。変速機はA社のもの、クランクセットはB社のもの、なんて組み合わせは当たり前。デザインや予算で気に入ったものを使えばよかったわけ。

でもそこにトータルパフォーマンス(今でいうインテグレーション?)という考え方を持ち込み、コンポーネントというシステムでパーツをグループ化したのが日本のパーツメーカー、シマノなんだ。つまりこれらのパーツをセットで使わないと最大のパフォーマンスを発揮できませんよー、同じ変速段数なら使えなくはないけどグレード違いのパーツを組み合わせるのはあまりオススメしませんよー、ってこと。

同メーカーでもグレードによって変速段数が違う

それ以降は同じシリーズのコンポーネントで統一して組み立てるのが主流になり、現在に至っているというわけ。

ちなみに、違うグレードの組み合わせはオススメしないといわれても、完成車のスペックをよく見るとチェーンやカセットスプロケットなど目立たないところで廉価グレードのパーツが組み込まれていることもよくある。完成車メーカーの苦肉のコストダウン策だね。

ロードバイクのコンポーネントの種類

シマノのセカンドグレード『ULTEGRA(アルテグラ)』

さてそのコンポーネント。現在は世界の3大パーツメーカーである日本のシマノ、イタリアのカンパニョーロ、アメリカのスラムがしのぎを削っている状態。各ブランドが上級グレードから普及グレードまでコンポーネントを用意し、レースからシティユースまでさまざまなニーズに対応している。

で、初心者がいちばん知りたいのは、上級グレードと普及グレードで何が違うの?ってことだろう。もちろん値段が違う。いやだからその値段の違いはどこから、ということなんだけど、俺はいつもこう答えることにしている。

ズバリ、重量と剛性感です。

素材が違う、操作性が違う、耐久性が違うなど、細かくいうといろいろ違いはあるんだけど、レーシングパーツ開発の目的はとにかく軽くすること、しかも剛性感を落とさないこと、これに尽きる。

グレードが高いほど、「軽く」「高剛性」になる

まず重量。自転車はとにかく軽さが正義。だから少しでも軽いコンポーネントが偉い。その軽さを得るために素材やメカニズムなどで工夫をするわけだけど、どんな素材を使おうがどんなテクノロジーを使おうがそれは手段であって、とにかく結果が軽ければいいってもんなのよ自転車ってのは。だから重量は上級グレードになればなるほど軽くなっている。

そして剛性感。剛性と剛性感は違うって話は今回置いとくけど、剛性感ってのはたとえばシフトがカチカチと気持ちよくキマる感じ。普及グレードの変速が「ガッチャン、ガッチャン」だとすると、上級グレードは「スチャ、スチャ」って感じ。いや、よく調整された最上クラスの変速機だと音がしないレベルで変速する。これは変速機、もっといえばシステム全体の精度が高く、ムダなたわみやヨレがないってこと。このように、操作するとダイレクトに結果(変速)に結びつく感じを剛性感って呼んでいます。

ブレーキシステムやクランクセットなんかもそういう剛性感が大切で、それがあってはじめてスムーズなブレーキングやダイレクトな推進力を得られるってわけです。

要は乗っててキモチイイってことかな。

本来はレースマシンとして作られるロードバイク。オンロードでいかに速く走るかが至上命令

変速も最近は多段化が進んで、シマノでいうと8速から12速まであるわけよ。このへんも無視できないよねー。つまり上級モデルほど段数(リアのギアの枚数)が多いってこと。

じゃ、ギアの枚数が多いと何がいいのか?

たとえばカセットスプロケットのいちばん小さい歯数が11T(Tはティース、つまり歯の略です)、いちばん大きいのが30Tだとするでしょ。それを9枚で構成するか12枚で構成するかで、1段1段のギアの歯数がずいぶん変わってくる。

つまりちょっとだけ脚が重いなーって思ったときに、1段軽くしたとしよう。12速だったら少しだけ軽くなっていい感じで走れるところ、9速だったらあれ?ちょっと軽すぎる?なんてことになっちゃうわけ。

こんなふうに1段1段のギアの歯数差は少ないほどスムーズに走れる。だからギア枚数が多いコンポーネントのほうが上級ってことなんだな。

さあ、グレードによる違いがわかったところで、3大ブランドにどんなコンポーネントがあるのかを見ていこう!

Shimano (シマノ)コンポーネントの特徴

出典:SHIMANO

シマノは日本の大阪府堺市に本社を置く、今や押しも押されもしない世界ナンバーワンの自転車パーツメーカー。日本のサイクリストとして誇らしいですわ。釣具のブランドとしても有名だけど、事業規模としては自転車が約8割と全然デカいって知ってた?

とにかく高性能なコンポーネントを作るブランドというイメージだけど、じつはホイールやハンドル、サドル、ペダルなど、フレームとタイヤ以外のすべてをリリースしているメーカーでもある。同時にウェアやシューズ、バッグなど、サイクリングアイテムも幅広く手掛ける、トータルサイクリングブランドとなっている。

技術的には「冷間鍛造」というアルミ加工技術にメチャ誇りを持っていて、だからメイン素材はほとんどアルミ。カーボン?アホ言えアルミのほうが軽くて高性能なもんが安く作れるんや!ということで、あとで紹介するカンパニョーロがカーボンをバンバン使っているのとは対照的だ。

で、そのコンポーネントは最上級のデュラエースから普及モデルのクラリスまで6種ラインナップ。変速段数も12速から8速までとバリエーションに富んでいる。またほかにグラベルロード用のコンポ「GRX」も用意される。

まあはっきりいって、迷ったらまずはシマノです。ヨーロッパの一流プロ選手もみんなシマノを使ってるし。全国どこでも手に入りやすいし。トラブルがあったときも、修理がしやすいし。ツーリング先で変速の調子が悪くなって街の自転車屋さんに駆け込んだとき、ほかのブランドなら「ああ、これはいじったことないんですわ」と言われてしまいそうだが、シマノならなんとかなる(ような気がする)。

そんな日本が誇る「世界のシマノ」のコンポーネントラインナップを紹介していきまーす。

  • DURA-ACE(デュラエース)
    • 世界最高峰のバイシクルコンポーネント。ツール・ド・フランスを走る選手が使ってるのがこれです。軽さ、カッチリしたフィーリングなど性能は他の追随を許さない。現行のR9200シリーズからセミワイヤレスの電動式(シマノではDi2と呼ぶ)オンリーとなり、その思い切りで世界を驚かせた。ブレーキは油圧ディスクがメインだが、リムブレーキも残っている。12速
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  • ULTEGRA(アルテグラ)
    • デュラエースに次ぐレーシンググレード。もうデュラエースはプロかよっぽどのお金持ちじゃなきゃ手が届かない雰囲気になっていて、一般人の最高峰はこのアルテグラだといってもいいくらい。性能もハッキリいって俺らレベルじゃわかんないくらい、デュラエースに近い。というかこんな性能必要あるのか?というレベル。これも現行モデルですべて12速、電動のDi2仕様となった
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  • 105(イチマルゴ)
    • 以前は105(イチマルゴ)がレースに出られる最廉価グレードといわれていたが、いまや高級コンポーネント。グループセットで20万円オーバーというその価格は、かつてのデュラエースに匹敵するもの。ルックスも上位グレード譲りの最新デザイン。前回のモデルチェンジで12速化し、機械式に加えDi2仕様が追加された。またブレーキはすべて油圧ディスクでリムブレーキは消えた
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  • TIAGRA(ティアグラ)
    • シマノのミドルグレードの代表シリーズ。2011年に9速から10速になり、2015年には現行のR4700がリリースされたが、そのまま放置されている感もあるグレード。でも逆に中古完成車に付いていても現行モデルであることが多いのがうれしい。現行モデルで油圧ディスクに対応するなどアップグレードされた。トリプル(フロントのギアが3枚)が設定され、フラットバー用のレバーとシフターが用意されるなど、幅広いニーズに対応
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  • SORA(ソラ)
    • ロードバイク入門用として多く用いられる9速のソラも息の長いモデル。2016年発表の現行モデルからクランクセットに上位機種と同じ4アームがラインナップされ、シフトワイヤーもレバーの横から飛び出していたのが内装式になってググッとルックスがカッコよくなった。ティアグラ同様トリプルの設定があり、フラットバー用のブレーキレバーと独立したシフターも用意される
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  • CLARIS(クラリス)
    • シマノのラインナップのなかでもっとも価格レンジの低いグループ。8速ながらシフトワイヤーがデュアルコントロールレバー内装となり、クランクセットも4アームとなってルックスは兄貴分たちに負けていない。なおシマノにはドロップハンドル用レバーを持つロードコンポーネントとして7速のターニーというグレードもあるが、現在はライフスタイル用として分類されている
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  • GRX(ジーアールエックス)
    • シマノ唯一のグラベルロード専用コンポーネント。フロント1枚ギアの1✕(ワンバイ)と、2枚の2✕(ツーバイ)がある。リアディレイラーの外側への張り出しが少ないシャドーデザインなど、MTBコンポーネントからのテクノロジーを十二分に受け継ぐ。10速、11速、12速の機械式と、11速、12速の電動(Di2)がラインナップされ、最新の12速電動はセミワイヤレスになりメンテナンス性が上がった
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Campagnolo(カンパニョーロ)コンポーネントの特徴

出典:Campagnolo

自転車レーシングパーツの頂点はカンパニョーロである。世界の自転車マニアたちは今でもそう信じて疑わない。創始者のトゥーリョ・カンパニョーロがレース中のタイヤ交換を手早くするためにクイックリリースを開発したことに始まるカンパニョーロの歴史は、そのままサイクルレーシングパーツの歴史といっていい。

コンポーネント(カンパニョーロではグループセットと呼ぶ)以外にホイールも製造し、その評価は非常に高い。

日本のシマノがアルミにこだわっているスキに素材にカーボンをバンバン取り入れ、上位モデルのクランクセット、ブレーキ&シフトレバー、変速機などはメイン部分がほとんどカーボン製だ。またシマノに先んじて12速化を果たすなど、じつはテクノロジーの部分でも先進的なブランドといえる。

そのロード用ラインナップは頂点のスーパーレコードからケンタウルまで4グレードを展開。加えて時流に乗ったグラベルロード用のエカルというコンポーネントも用意している。

驚くのはその価格だ。たとえば最上級モデルとして性能的にはシマノのデュラエースと比べられることの多いスーパーレコードだが、ワイヤレス仕様どうしで見ると価格はなんとほぼ2倍も高い! そんな比較をするのは天に唾する行為だと思わせられるほどの唯我独尊っぷり。まさに神の領域。

最近は世界的シェアでシマノに押され、2024年シーズンはついにカンパニョーロを採用するワールドチームがひとつもなくなったと話題になったが、そんなことは関係ない。数々のレースでの歴史的勝利、名選手との輝かしいストーリーを含めたプレミアム感は、新参ブランドが裸足で逃げ出すに十分。そこをどけ、俺がカンパニョーロだ。

  • SUPER RECORD(スーパー レコード)
    • 言わずとしれたカンパニョーロのトップグレード。12速の機械式と電動(電子制御式。カンパニョーロではEPSと呼ぶ)があり、電動は先のモデルチェンジで完全ワイヤレスがラインナップに追加され新世代に突入した。ワイヤレスモデルはブレーキが油圧ディスクのみとなっている。クランクセットにはパワーメーター付きも用意され、これだけで40万円オーバーと価格も超ド級
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  • RECORD(レコード)
    • カンパニョーロのセカンドグレードだが、価格的にはこれがシマノ・デュラエースのライバルかもしれない。スーパーレコードと同様、素材にカーボンを多用しており、ルックスもよく似ている。スーパーレコードと同様12速化しているが、以前はあった電動(EPS)はラインナップから姿を消し、現在は機械式だけの展開となっている
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  • CHORUS(コーラス)
    • カンパニョーロのランナップのなかで販売的には主力となるミドルグレードのグループセット。上位グレードとよく似たこのルックスだけで泣く子は黙らないがかなり静かにはなる。こちらも12速展開だがレコード同様電動(EPS)は姿を消している。このコーラスまでがウルトラシフトという一気に多段シフトできるシステムを採用している。ディスクブレーキ仕様とリムブレーキ仕様がある
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  • CENTAUR(ケンタウル)
    • 現在のカンパニョーロの最普及グレードで11速の機械式のみ。ブレーキもディスク対応はなくリムブレーキのみ。シルバーカラーのクランクセットやディレーラーが用意されているため、クラシカルな雰囲気を求めるクロモリフレームユーザーからの支持も厚い。以前はこのケンタウルとコーラスの間にアテナ、ポテンザ、さらにケンタウルの下にヴェローチェというグレードがあったが現在ではラインナップ落ちしている
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  • EKAR(エカル)
    • カンパニョーロ初のグラベルロード用コンポーネントとなるエカルはロード用にはまだない13速を採用。チェーンも13速専用となる。フロント1✕、油圧ディスクブレーキのみというシンプルな構成が特徴。だがまだ機械式のみで電動の登場が待たれるところ。リアスプロケットの最小歯数が9Tと小さく、ワイドなギアレシオを実現している。またクランクはやはりカーボン製で、カンパニョーロらしさ全開だ
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  • EKAR GT(エカル GT)
    • スペックダウンと引き換えにエカルのネックとなっている価格をダウンさせた廉価グレード。クランクがアルミになり、カセットスプロケットとフロントギアの歯数のバリエーションが増えたのが大きな変更点。またリアディレーラーのケージなどの穴を大きくし、ドロづまりを防ぎ清掃しやすくなった。これ大事。フロント1✕、油圧ディスクのみの構成はエカルと同様
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SRAM(スラム)コンポーネントの特徴

出典:SRAM

ついにロード用コンポーネントのシェアナンバー2にのし上がったアメリカンブランドのスラム。もともとはMTBコンポーネントでじわじわと人気を博し、2005年にロードバイクジャンルに参入。これまでになかった特徴的なシフト方法「ダブルタップ」で世界をびっくり仰天させた。

じつはホイールのジップ、ペダルのタイム、MTBサスペンションのロックショックスなどはスラム傘下のグループ企業だってのはあまり知られていない事実。だからスラムのホイールやペダルは存在しないんだな。

スラムの特徴はその自由なコーディネーション。上からレッド、フォース、ライバルと続く12速のシリーズはすべて電動のフルワイヤレス仕様を持つ。しかも! この3つのフルワイヤレスモデルに関してはコンポーネントがすべて互換性を持つ。つまりどれをどう組み合わせてもOKってことなのだ。またフルワイヤレスだからシフトに関してケーブルがまったく存在せず、組付けやメンテナンス性が飛躍的に向上している。しかもグラベルコンポーネントやMTB用コンポーネントとも互換性を持っていて、これがめちゃラクじゃん!と世界のユーザーに大ウケ。

さらに同じロード用コンポーネント内にエクスプロア(XPLR)と呼ばれるグラベル用パーツがラインナップされ、ロード用コンポーネントのリアスプロケットとディレーラーだけエクスプロアに換えればグラベル用コンポーネントに変身してしまうという、シマノが聞いたらそんなアバウトなことでいいのかと怒り出しそうな自由っぷり。

そもそもスラムは変速性能や精密な操作感を追い求めたブランドではない。シフト性能は確実にシマノに劣る(断言)。でもそんな細かな変速性能にこだわるより、組むのがラクで拡張性が高いほうが絶対いいよね〜、というアメリカンな姿勢が共感を呼んだ。結果、それまでロードバイクの世界では新参者のイメージが強かったスラムだが、この数年で完全にロードコンポーネントのパワーバランスを変えてしまった。

これから自転車でいろいろ自由に遊んでいきたい。そんなアメリカーンな人はスラムしかないっしょ。

  • Red(レッド)
    • スラムの最上級コンポーネント。レッド22という名称で11速の機械式も残っているが、すでに主流はフルワイヤレス電動(eタップ)12速のレッドeタップアクセス。それがモデルチェンジによりレッドアクセスE1に進化してなんと13速に! フロントに1✕と2✕を用意、ランナップ中にノーマルに加えエクスプロアというグラベル用ディレーラーも用意し、高い拡張性を誇る。世界最軽量のコンポーネントを謳う
      >> バイチャリでレッドのコンポを見る
  • Force(フォース)
    • スラムのセカンドグレード。全体にスペックダウンしたぶん価格を抑えてあるというもの。こちらもざっくりいうと11速機械式と12速電動フルワイヤレスの2ライン。フロント1✕に2✕も用意、グラベル用パーツのエクスプロアがあるのもレッドと同様。他グレードとの互換性が高いのも特徴。レッドに比べ派手なグラフィックが特徴だったが最近はおとなしめになってきた
      >> バイチャリでフォースのコンポを見る
  • Rival(ライヴァル)
    • スラムの普及グレード。11速機械式モデルもカタログに残っているが基本は12速のフルワイヤレス電動(eタップ)。ともにフロント1✕と2✕を用意。eタップは前後ディレーラー、レバーのそれぞれにバッテリーを搭載するため、各パーツが大ぶりになるのが欠点だが、前後ディレーラーのバッテリーが共通なのは超うれしい。たとえばリアのバッテリーが切れてもフロントのものを移動させて変速させることができるのだ
      >> バイチャリでライヴァルのコンポを見る
  • Apex(エイペックス)
    • フロント1✕のみのグラベル用コンポーネント。デビュー時はツーリング向けという位置づけだったが、現在はグラベル用と捉えられている。これも機械式11速に加えフルワイヤレス電動12速版が登場し大幅な進化を遂げた。片側が平らになったフラットトップチェーンはスラム全シリースのアイコニックな特徴
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シマノ・カンパ・スラムの操作感の違いをチェック!

シマノ(機械式)

ブレーキレバーに小さい変速レバーが付いている。この小レバーとブレーキレバーを兼ねた大きいレバーとで変速する。

右手側はリアディレーラーを操作。小レバーを押すことでシフトアップ(軽→重)し、大レバーを内側に押し込むことでシフトダウン(重→軽)する。

対して、左手側はフロントディレーラーを操作し、シフトアップ・ダウンは逆(小レバーがシフトダウン、大レバーがシフトアップ)。

このブレーキレバー本体を変速レバーと共用するというのがシマノの特徴で、シフティング時にブレーキをかけてしまうのではないかと心配する声もあるが、そんなこたあない

シマノ(電動Di2)

シフトアップ・ダウンの操作位置は機械式とほぼ同じ。レバーを押し込む代わりに、スイッチをクリックして操作する。

カンパニョーロ(機械式)

ブレーキブラケット横に付いている小ぶりなスイッチのようなレバーがカンパニョーロの特徴。

リアは右レバーで操作し、この小さいスイッチを押し下げることでシフトアップする。またブレーキレバー手前のレバーを内側に押し込むことでシフトダウン。

フロントは左レバーが担当。小さいスイッチでシフトダウン、大きいレバーでシフトアップ。

カンパニョーロ(電動EPS)

基本的に機械式と同じで右レバーでリアを、左レバーでフロントを制御する。電動になっても操作方法が機械式と変わらないところにカンパニョーロのポリシーを感じる。ただ13速になったスーパーレコードだけは例外で、ブラケット横の親指で押すレバーがなくなり、シマノ的な片側2本のレバーで操作する方式に変わっている

スラム(機械式)

>> SRAMの公式YouTuberがわかりやすい(How to shift with Double Tap

レバーについている1本の小レバーの押し方の違いでシフトアップとシフトダウンをするという斬新なシステム。右手側の小レバーを軽く押すとリヤのギアがシフトアップ、グイッと奥まで押すとシフトダウン。左手側のレバーはフロントの変速担当で、軽く押すとシフトダウン、奥まで押し込むとシフトアップ

スラム(電動eタップ)

>> SRAMの公式YouTuberがわかりやすい(How to shift

左右ともブレーキレバーと独立したシフトスイッチが付いていて、これを内側に押し込む操作だけで変速が完了する。右スイッチを押すとリヤがシフトダウン、左スイッチを押すとリヤがシフトアップ。リヤを操作するのに左手を使うのが最大の特徴。そしてフロントは左右を同時に押すことでシフトダウン、もう一度左右同時に押すことでシフトアップ


3ブランドでそれぞれ操作方法が違うわけだけど、シマノに慣れているとカンパニョーロもスラムも最初は戸惑うと思う。だけどブレーキレバーを変速操作に使わないという点では、カンパニョーロ、スラムのほうが優れている面もある。でもまあ、要は慣れです。で、慣れてしまえばスラムがいちばん使いやすい気がします、個人的には。

で、そのシフトフィールなんだけど、シマノはあくまで精密なメカって感じで、上級グレードになるほど「スチャ」と静かにキマる。デュラエースをしっかりセッティングすれば、それこそ音もなくキマる。とくにフロント変速は他ブランドを大きく凌駕する精密さ。操作に対して遅れなく正確に変速が完了する。まったく人間味がないマシンのような操作感。マシンだからいいんだけど。

対象的なのはスラムで、電動シフトの操作には一応シマノっぽい、パソコンのマウスを操作したときのようなクリック感がある。ただ少しシマノよりストロークを持たせていて、ミスタッチを防ぐ意図を感じる。変速ショックは極端にいうと「ガッチャン」という感じ。「変速〜? あいよー」って感じ。スラムらしいといえば言えるけど、要はそんなに精密な変速って必要ある?っていうメーカーの考え方が出ちゃってるんだろうなー。

カンパニョーロはその中間ってとこなんだけど、本体のキレはなかなかいいのに、レバーのたわみが感じられ、若干だがウニャっとしたフィールがあって残念。とくにフロントはそれが顕著で、だから13速スーパーレコードではシマノ方式の変速レバーになったのかも。

▼buychari JOURNALのYouTubeで操作感をチェック!

3大メーカー以外もじつはけっこうある

ここまで3大コンポーネントブランドであるシマノ、カンパニョーロ、スラムを紹介してきたわけだけど、じつはコンポーネントを作っているメーカーはほかにもある。なかなか目にすることが少ない、ある意味希少なコンポーネントを紹介していこう。

  • FSA
    • アメリカやイタリアにも拠点を持つ台湾のパーツブランド。廉価版のクランクセットなどが完成車にスペックインされていたが、一方でディレイラーなどの開発も進め、一応コンポーネントブランドってことになっている。注目はKフォースWEという12速のセミワイヤレス電動コンポーネント。シマノのDi2と同様、レバーがワイヤレスとなっていて、シートポストに内装されたバッテリーと前後のディレーラーがケーブルでつながれている。一世代前の感じは否めないものの、覚えておきたいコンポーネントだ
  • マイクロシフト
    • 台湾のパーツメーカーで、以前から幅広い価格レンジのパーツを作り続けている。ブレーキやスプロケットなどは廉価版の完成車にスペックインされることが多い。ディレーラーもしっかりラインナップされていて、日本のマーケットでは一定の評価を得ている。グラベル用コンポーネントのスウォードを発表するなど、人知れず進化し続けているブランド
  • ホイールトップ
    • 駆動系パーツをOEM生産していた中国のメーカーが自社ブランドでコンポーネント製造を開始。EDSと呼ばれるワイヤレス電動変速機はドロップハンドル用のTXとフラットハンドル用のOXがラインナップされ、ロード用リアディレーラーは7速から13速までに対応。つまりこれだけで今付いてるシマノのクラリスからデュラエースまでがワイヤレス電動化できてしまうのだ。しかも激安! 今いちばん注目のコンポーネントかも
  • エルトゥー(L-Twoo)
    • 中国のエルトゥーからもeRXという12速セミワイヤレスの電動コンポーネントがリリースされている。以前から11速の機械式変速メカを作っていたが、そのときは変速レバーはカンパニョーロタイプだった。今回のセミワイヤレスではシマノと同様のシフティング操作を持ち、ラインナップにないチェーン、クランクセット、リアスプロケットなどはシマノが使える

コンポ選びは沼、だけど楽しい!

というわけでコンポーネントの世界を駆け足でグルーっと一周してきたわけだけど、意外に奥の深い世界で目が回りそうです。しかも知らない間にどのコンポーネントも激しく進化してる。俺も最新モデルをあれこれ使って楽しみたいなーって気持ちがムクムク湧いてきました。

コンポーネントをひとつ上のグレードに換えるだけで、パフォーマンスがグッとアップするのはどのブランドでも同じ。また別ブランドのコンポーネントに乗り換えれば、また新しい発見と喜びがあるはず。今乗ってるロードに少し飽きてきたとき、ほかの自転車に買い替えるのもいいけど、コンポーネントを換えて楽しむって方法があるのも覚えておこう。

バイチャリならリユースのコンポーネントも格安で手に入るから、お店の人と相談しながら愛車をグレードアップしていくのもすごく楽しい! コンポーネント選びを楽しんでハッピーなロードバイクライフを! じゃあまた!

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
岩田 淳雄

岩田 淳雄

ペダルプッシャー代表。自転車専門誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長をつとめ、2021年末に独立し、個人での活動をスタート。 https://pedalpusher.jp/

  1. 自転車のコンポーネントとは? 違いは何? ロードバイクコンポのシマノ・カンパニョーロ・スラムを比較

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