2025年モデルの最新ロードバイクの中から、自転車ジャーナリストの “GOD SPEEDやすい” サンに、ズバリ今年の本命モデルを厳選してもらいました。業界でも一目置かれるGOD SPEEDやすいサンに選ばれし栄えある4台は、
「やっぱり間違いなかったメジャーブランドの万能モデル」
「やんちゃな走りをしたくなるアルミレーシング」
「僕らのザ・ネクストスタンダード」
「グラベルロードの最適解ってじつはこの素材なんじゃない?」
といった具合ですが、どのブランドの、どのモデルか想像できますか?
約100社の出展メーカー、266台の自転車数で過去最大規模となった「ワイズロードスポーツバイクデモ2024in東京」で見つけた最新ロードバイクを、やすいサンが実際に試乗もしながらチェックしていきます!
25年の本命①ジャイアントのオールラウンダー最新世代『TCR』

TCRが誕生したのは1997年。まだヨーロッパメーカーがロードバイクの主導権を握っていた時代です。台湾のジャイアントは、マイク・バロウズというイギリス人天才エンジニアと組んで、TCRというフレームを作り上げました。

ロードバイク=ホリゾンタルフレームだった当時、ガッツリとスローピングしたTCRは当初、「ロードバイクっぽくなくてカッコ悪い」なんて陰口を叩かれていたりもしたようですが、「スローピングフレームにすればフレームは強く軽くなり、低重心化と空気抵抗削減も同時に実現できる」というのがマイク・バロウズ氏の思惑。その言葉どおり、スローピングフレームのポテンシャルは非常に高く、プロレースでも大活躍。現在のロードバイク=スローピングという状況へとつながっていきます。
TCRはロードバイクの常識と歴史を変えた一台なんですね。
ジャイアントの美学、静かな革命

最新世代のTCRは、登場から四半世紀を経て10代目に。エアロロードのプロペル、エンデュランスロードのデファイがある中で、TCRは軽さ、空力、剛性、快適性を兼ね備えた万能モデルという立ち位置です。
TCRはメンテナンス性・ポジション自由度を重視して、最新ロードバイクとしては最後までケーブルを外回しとしていましたが、10代目にしてついに内蔵に。「ケーブル内蔵でなければ最新ロードにあらず」という風潮の中で、これは当然のことでしょう。ただ最低限のメンテナンス性は確保された作りになっています。



シートチューブが上に伸びたようなインテグラルシートポストは、15年ほど前にロード界で大流行した設計です。シートチューブまわりを無駄のない設計にできることがメリットですが、ライダーのポジションに合わせて切断する必要があり、サドル高の調整幅が小さくなるというデメリットも大きく、今では姿を消しています。
しかしジャイアントはTCRのアドバンスドSLグレードでインテグラルシートポストを採用し続けています。「流行に左右されることなく、不要だと思ったら頑なに採用せず、必要だと思ったら採用し続ける」というジャイアント設計陣の矜持を見るようです。


TCRには3つのグレード(ハイエンドのアドバンスドSL、セカンドグレードのアドバンスドプロ、エントリーグレードのアドバンスド)が用意されますが、今回はせっかくなのでアドバンスドSLに乗らせてもらいました。

さて、乗ってどうだったかと言えば、非常にいい。非常にいいんですが、「ジャイアントのハイエンドモデルは非常にいいです」というほど間抜けたコメントもありません。なにせ、世界最大のスポーツバイクメーカーの150万円以上もする最新鋭ハイエンドモデルですから。よくて当たり前。悪い訳がない。「2025モデルのジャイアント・TCRアドバンスドSLはいいです」ってことは、「ステーキはおいしいです」と言ってるのと同じことなんですね。TCRは、もうそこまでの存在になってしまったというわけです。
どういいのか、どうすごいのかをちょっと掘り下げてみると、「鋭い加速・正確無比なハンドリング・快適性・高速巡行性などの性能が素晴らしく高いレベルでバランスされているのに、走りが上質なこと」です。たまげるほど速いのに、「扱いやすく、ペダリングしやすく、体に馴染む」んです。自転車の性能を先鋭化させればさせるほど、車体の挙動はトゲトゲしくなってしまうものなんですが、TCRはその逆。これってじつはものすごいことです。
新型TCRのプレスリリースには、「空力を高めました」「トータルインテグレーションを推し進めました」「前作より重量剛性比を高めました」などの分かりやすい美辞麗句が並んでいますが、おそらく開発陣はもっと高度なことをやってます。想像するに、理解されにくいからあえて書かないだけで、「各性能と人間との親和性をどこまで高められるか」というハイレベルな技術的チャレンジをしているのだと思います。

かつてロードバイク界に革命をもたらしたTCR。当時はホリゾンタルフレーム→スローピングフレームという目に見える大変化でしたが、現在もTCRの革命は進行中です。かつてとは違い、それは分かりにくく見えにくく、水面下で密かに粛々と進んでいる、静かな革命です。
25年の本命②手足のように操れるアルミレーシング! コーダーブルーム『ストラウス レース3』

かつてコーダ―ブルームといえば、「ちょっとおしゃれなクロスバイク」「初心者にも乗りやすい入門用スポーツバイク」みたいなイメージでしたが、ここ数年で見違えるような変貌を遂げています。「いつかは海外のトップメーカーと並べる存在に」を合言葉に、スポーツバイクメーカーとしてめきめきと実力を付けてきてるんです。
それを象徴するのが、フレーム価格約40万円の『ストラウス プロ レース2』というフラッグシップモデル。一方で、20万円前後の完成車も数多くラインナップしており、「ロードバイクデビューのハードルを下げる」という重要な任務も忘れていません。

その中間となる完成車30~40万円クラスに投入されたニューモデルが、ここに取り上げる『ストラウス レース3』です。フルアルミフレームのレーシングバイクで、機械式105完成車が約30万円、105Di2完成車で約40万円。

正直、スペック的には目立ったところはないんです。ケーブル内蔵だってドロップドシートステーだって今や珍しくもなんともない。フルアルミフレームが完成車で30~40万円という価格も、驚くほど安いというわけではないでしょう。
若くてパワーのある世代にガンガン乗ってほしい

ではなぜ数多ある試乗車の中からこの1台を選んだのかといえば、「ハンドリングのよさ」です。乗り始めて一つめのコーナーを曲がった時点で、その自在に操れる操縦性に驚きました。どこまでバイクを傾ければどんなラインで曲がってくれるか、容易に予測できる。どこまで倒せば限界まであとどれくらいか、手に取るように分かる。ここまで手足のように操れる自転車は久しぶりです。これは偶然の産物ではなく、狙わないと到達し得ない性能だと思いました。


聞くところによると、開発担当者は有力メーカーのジオメトリを徹底的に研究し分析したそうです。その成果は十分出ています。

ハンドリングだけでなく、走りも好印象でした。もともとアルミはカーボンやスチールと比べて弱く柔らかい素材ですが(スチール缶に比べてアルミ缶は簡単に潰れますよね)、自転車のフレームに採用する場合、強度(安全性)を確保するとチューブを太く分厚くせざるを得ず、結果として剛性が高くなります。
ゆえに『ストラウス レース3』は力強く進むロードバイクになっています。ハイエンドバイクのような洗練された剛性感はありませんが、「ガンと踏んだらドンと進む」とでも表現したくなるような、バンカラな魅力。自転車の上でどんなに暴れてもびくともしない。そんな安心感があります。僕がもっと若くてもっと元気だったら、ガンガン使い倒すレース用フレームとして欲しくなっていたと思います。
25年の本命③これからのスタンダードロードバイク。アンカー『RE8』

アンカーは日本のメーカー(ブリヂストンサイクルのスポーツバイクブランド)です。知ってますよね。しかも、基本的に国内でしか販売しない日本専売ブランドです。それってじつは日本のスポークバイクユーザーにとって、結構重要なことだったりします。
世界中でバイクを販売するグローバルブランドのメインのマーケットは欧米です。欧米のユーザーをターゲットにするロードバイクは、自ずと大柄で体重もパワーもある人を想定して設計されます。それを無理矢理小さくしてスモールサイズを作り、それに日本人も乗らせていただくわけです。結果、ハンドリングや剛性感などがイマイチなものも出てきます。

その点、アンカーは「日本人の体形と日本人の乗り方と日本の地形に特化したフレーム作り」ができます。小さいサイズでもジオメトリが煮詰められていてハンドリングよく、適度にしなやかなフレームはスピードと扱いやすさと快適性をほどよくバランスさせたものになります。事実、これまでのアンカーはどれも「スモールサイズでも破綻がなく、しなやかでペダリングしやすく、走っていて気持ちがいい」という自転車でした。
かつて、メディアでインプレッション記事を担当する日本の自転車ジャーナリストはなぜか180cm近辺の大柄な人達ばかりで、そのせいかアンカーは正当な評価を受けてこなかったような印象があります。一方、日本人の平均身長を大幅に下回る僕は、常にアンカーの作る自転車を信用し、高い評価を下してきました。
「快適なのに速い」って、都合良すぎ?

しかし2010年代後半、アンカーはスポーツバイク界で後れを取るようになります。世がエアロ化&ディスク化に完全に舵を切っていたにも関わらず、アンカーはそれに追従せず、エアロでもディスクでもないバイクを作り続けていたのです。
おいおい大丈夫かよ……という心配もし飽きた頃の2021年、アンカーはディスク&エアロのレーシングバイク『RP9』を発売します。それは世界のトップブランドと肩を並べる完成度で、性能を追求するレーサーや「いい走り」を求める日本のロード乗りに大きな支持を得ました。続いて下位グレードとなる『RP8』もヒット。まさに乾坤一擲、時流に一気に追いつく痛快なジャンプアップでした。

しかし難しいのは次の一手です。ヒット作の後は誰もが注目するし、期待は高まっている。そんななか、アンカーが発表したのが今回紹介するエンデュランスロード『RE8』でした。コンセプトは「すべてのホビーライダーに、レースバイクのテクノロジーを」というもので、安心して長距離を走れるエンデュランス性に、空力や剛性によるスピードを付加したバイクということ。要するに、今までのエンデュランスロードが「快適性一辺倒」だったのが、「快適なのにちゃんと速い」になった、と。

そんな都合のいいことができるんですか?と思いますが、乗ると実際にそのとおりになっているので納得です。前作であるRL8Dに比べて、明らかに剛性が上がって高速巡行性もよくなっているのに、エンデュランスロードの本懐である快適性やスムーズな走りは陰っていません。


日本のロードバイクマーケットでは、主流はあくまでレーシングバイクで、エンデュランスロードは傍流、という風潮があります。実際、よく売れるのはレーシングバイクだそうです。でも、レーシングバイクの性能がどんどん先鋭化し、同時に整備性や汎用性などが犠牲になっている今、我々のような一般サイクリストにとってのスタンダードになるべきは、RE8のようなバイクなんだと思います。
25年の本命④チタン愛好家が作るグラベルロード! モノラル『GR』

すいません、最後は完全に僕の趣味です。ただただ乗ってみたかったやつに乗らせていただきました。チタンのグラベルロードです。
チタンという素材は、カーボンほど軽くなく、スチールやアルミより高価で、エアロ形状にもしにくい。スペック的に目立つところがないので、スポーツバイクの主流には一度もならなかった素材です。でも、そこそこ軽く、しなやかで快適な走りになりやすいという美点があります。サビに強いので塗装する必要がなく、独特の輝きを持つ金属地が見えるのも魅力です。

そんなチタンの特性は、現在絶賛大流行中のグラベルユースに最適なんじゃないかと思うんです。凹凸のあるオフロードを走るにはしなやかなチタンの特性が合うでしょうし、スチールほど重くない。オフロードを走ると飛び石や砂や泥でフレームはどうしても傷付いてしまいますが、金属地のチタンフレームなら塗装がないので傷が気になりにくい。また、グラベルロードは頻繁に洗車が必要になりますが、サビに強いチタンはその点でも優秀。

で、モノラルのGRです。モノラルとは、2010年にスタートした日本のアウトドアギアブランドで、代表作は総重量1kg以下という超軽量焚き火台。そんなモノラルは、自転車のフレームも作ってるんです。

モノラルの創立者でありエンジニアでもある角南さんは、学生時代に年間100泊以上キャンプツーリングを経験したというゴリゴリの自転車乗り。そんな角南さんが自身の経験をもとにチタンフレーム開発に着手、現在はグラベルロードのGR、トレイルバイクのTA、オールロードのARをラインナップしています。


現在、僕は2台のグラベル系バイクを所有してますが、それらを購入する際に候補に挙げていたのが今回試乗したGRなんです。

もちろんGRはオフロードをメインフィールドとするグラベルロードなので、今回の試乗コース(舗装路)では分かることに限界がありますが、チタンフレームらしい素性のよさ(しなやかなのにちゃんと進んでくれる)は感じられました。
試乗車には新開発のチタンフォークが付いていましたが、これもしっかりしておりブンブン振り回しても破綻しません。性能的にはカーボンフォークで十分(というか重量を考えるとカーボンのほうが上?)なんでしょうが、頭からつま先まで全部チタンという立ち姿は魅力で、このためだけにエクストラコストを払いたくなる気持ちは分かります(チタンフォークは税込み11万円)。

僕のファーストロードバイクがチタンフレーム(パナソニック)だったことも影響してか、これまで何台ものチタンフレームを所有してきました(コルナゴ、ライトスピード、リンスキー、マーリン……)。チタン特有の走りに魅せられてしまったと自覚しています。しかし、所有バイクをディスクロード/グラベルロードに入れ替える過程で、チタンフレームはすべて手放してしまい、現在は一本も所有していません。そんなチタン欠乏症のなかで試乗したGR、まんまと欲しくなってしまいました。危ない危ない。
今年の狙い目は、自転車界の「今」を象徴する4台

スポーツバイクの今を知るには、メジャーなメーカーのトップモデルに乗る必要がある(ジャイアント・TCR)。それらハイエンドの高価格化が問題なっている今、エントリーグレードの完成度も知っておきたい(コーダ―ブルーム・ストラウス レース3)。かつてのレーシングバイクに代わって「僕らのための自転車」になりつつあるエンデュランスロードの現在地も重要(アンカー・RE8)。いやいや今はやっぱグラベルで、しかもチタンというマイナーな素材が面白そう(モノラル・GR)。と、今回選んだロードバイクは、今の自転車界を象徴する4台になりました。
試乗コースは1km弱と短いものですが、乗るのと乗らないのとでは大違いです。また、各メーカーの担当者の方々と直接お話したことも、自転車を理解するのに大いに役立ちました。
スポーツバイクを取り巻く環境が変化し、ロードバイクが多様化したと言われている今ですが、自転車は相変わらず面白くて楽しいです。2025年もぜひ皆さん流の楽しみ方で自転車を堪能してください。
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