ロードバイクの走行性能に直結するホイールは、最初のアップグレードにおすすめのパーツです。
完成車にもともとついていたホイール、通称「鉄下駄」から、初めてステップアップするのに『カンパニョーロのゾンダ』がオススメって本当?
これまでずっと鉄下駄ホイールで走ってきた生粋の“鉄下駄女子” サキが、自転車界のレジェンド・イワタに聞いた! カンパニョーロホイールの特徴からゾンダの魅力、ホイール交換時の注意点までガッツリ手ほどきしてもらいましょう。
ホイールを変えれば走りが変わる!
みなさんこんにちは、長年自転車メディアで編集長をつとめてきたイワタです。
サイクルスポーツやバイシクルクラブといった自転車メディアをずっと作ってきたので自転車関係全般にウルサイわけですが、機材に関してはラクして速くなる、お金で老化をカバーするといった観点から研究を重ねております。
岩田淳雄
サイクルスポーツ、バイシクルクラブという2大自転車メディアの編集長としてサイクルライフに長く関わる。最近はその経験を生かしてスポーツサイクル関連のアドバイザー、コンサルとして事業を立ち上げ、ペダルプッシャーという屋号で活動。
自転車関係ならなんでもおまかせ!な、まさにレジェンド的存在。
イワタさん、はじめまして。鉄下駄女子のサキです!
鉄下駄女子とは、またすごい肩書だね(笑)
ロードバイクは大学からのスタートで、もうロードバイク歴も4年目になるんですが、自転車は買ったままのノーマルで、パーツ交換とか何もしていないんです。そろそろパーツ交換をして自転車の性能をアップさせてみたいと思っているんですが……!
パーツ交換かあ。だったらまずホイールの交換から始めるのがオススメだね。
ホイールですか? 変速機やブレーキのほうが性能アップにはいいんじゃないですか?
走りのフィーリングや質感のアップにはそういうのも大事なんだけど、走りを軽くしたいんなら、まずホイールだね。
あ、私、ヒルクライムが大好きなんです! 走りが軽くなるのは一番嬉しいかも!
ホイールに少しお金をかけて、今より上のグレードのものに交換すると、まず大きいのが重量が軽くなること。ホイールはロードバイクの中でも大きなパーツだから、ここが軽くなるとロードバイク全体の重量も大幅に軽くすることができるよね。もちろんヒルクライムにおいても軽いほうが有利だから、軽量化は大きなメリットだね。
だけどホイールを軽量化すると、それ以上にいいことがあるんだ。
ホイールって回転するパーツでしょ。だから回るときに慣性モーメントが発生する。このとき重量が軽いほうが慣性モーメントが小さくなって、回りやすくなる、つまり軽く回るんだよ。
たとえば全体が石でできた車輪があったとして、それと自転車のような軽いホイールとではどっちが回りやすいと思う?
自転車のホイールのほうがスッと回りそうですね。石でできたホイールは回し始めにすごい力がいりそう。
そう。だから自転車のホイールは重量が軽いほど走りも軽くなるってわけ。
具体的にはこぎ出しや加速するとき、あとはヒルクライムのときにもホイールが回りやすいから軽快な走りができる。
とくに重要なのは「リムの軽さ」。リムっていうのはホイールの外周部分のことね。慣性モーメントは外周が軽いほうが小さくなるから、ホイール全体のなかでもリムが軽さが走りに大きく影響するんだよ。だからタイヤを軽量化するのも走りの軽さにつながりやすいね。
ホイールって自転車パーツのなかでも大きいですし、見た目も変わって楽しいですよね。
鉄下駄脱却にちょうどいいホイールって?
私の場合はどんなホイールに換えればいいんですか?
今サキちゃんのロードバイクについているのはシマノのR500(WH-R501)か。これもコスパにすぐれた丈夫なホイールで初心者にはいいんだけど、ここからステップアップするとしたら、同じアルミの軽量ホイールがいいだろうね。
カーボンホイールのほうがいいんじゃないですか?
予算が十分にあるならそれでもいいけど、このフレームとのバランスでいうといきなり20万円以上のカーボンホイールってのはやりすぎかな。とくにサキちゃんみたいに輪行であちこち走り回るんなら、トラブルも少なく扱いやすい10万円クラスのアルミリムのモデルがオススメ。
10万円かぁ。学生にとっては安くない金額だけど、頑張ってお金を貯めればなんとか買えそう!
10万円クラスでも十分効果は実感できると思うよ。アルミホイールのよさはペダルを踏む力がそのまま推進力に変わるようなカチッとした気持ちよさ。それはグレードが上がるにつれ感じやすくなる。カーボンの軽さもいいんだけど、アルミの走りのよさをもっと知ってほしいと思うな。
圧倒的人気のゾンダ。なぜ「ゾンダ」がいいのか
ワンランク上のアルミホイール、欲しくなってきました! イワタさんのおすすめは何ですか?
ズバリ、カンパニョーロのZONDA(ゾンダ)だね。カンパニョーロといえばイタリアの老舗パーツブランド。マニアの憧れブランドでもある。それだけに敷居の高さを感じる人もいるかもしれないけど、ハイエンドだけじゃなくて価格的に手の届きやすいものまでラインナップは充実してる。そのへんのコスパの高いグレードは最初のステップアップにオススメだね。
ゾンダはカンパニョーロホイールのラインナップでいうと下から2番目のグレードで、シマノでいえば105グレードにあたる。定価は、今だと前後セットで10万円近くするようになっちゃったかな。一昔前は7万円ぐらいだったんだけどね。でもバイチャリのようなリユース自転車ショップなら、3万円くらいからあるから狙い目だよ!
>> バイチャリなら3万円前後でゾンダが見つかる!
さすがに見ただけじゃ軽さはわからないですね。どのくらい軽いんだろう?
ゾンダと今付いているホイールを実際に計測してくらべてみたところ、フロントで150g、リア250gもゾンダのほうが軽かった。ゾンダにはリムテープが要らないからそれも寄与しているんだろうけど、前後で400g弱の差は大きいね! これで走りもグッと軽くなるはず。
シマノ・WH-R501 | カンパニョーロ・ZONDA (C17 Clincher) | |
重量 ※実測値 | フロント:850g リア:1150g 前後合計:2000g ※リムテープ含む | フロント:700g リア:900g 前後合計:1600g |
リムハイト | 20.8mm | 24mm(フロント) 27mm(リア) |
リム幅 | 24mm | 17mm |
リム素材 | アルミ | アルミ |
定価(税込) | 23,846円 | 94,600円(カンパUD用) 95,700円(シマノHG用) |
しなやかなカンパニョーロホイール
カンパニョーロのホイールにはどんな特徴があるんですか?
全体的なイメージだけど、カンパニョーロの特徴は「しなやかさ」かな。トルクがかかってホイールが変形したあとに、その「しなり」が戻って推進力に変わる感じ。ちょうど質のいいクロモリフレームみたいなバネ感があるんだ。だからファンも多い。
しなやかっていうと柔らかくてふにゃふにゃかと思いますけど、そうじゃないんですね。
ハイエンドモデルのボーラウルトラからいちばん下のシロッコまで、カンパニョーロのホイールは全部カンパニョーロらしいしなやかさを持ってる。こういう特徴を大事にしてるとこに、マジメに作ってる感じが現れてるよね。
兄弟ブランドのフルクラムと比べてみても、ゾンダと同じグレードのレーシング3がシャキシャキした硬い感じが特徴なのに対し、ゾンダはあくまでしなやか。うまく棲み分けているともいえるけど。
この後輪、なんだか独特なルックスですね。束になっていてインパクトがある! カッコいい!
これはカンパニョーロ独自のG3スポーキング。よくG3組みと呼ばれているね。3本のスポークをまとめて配置することで左右の剛性バランスをとりやすくしてる。あとスポークとリムの結節部にあるニップルが狭い間隔で配置されることにより、空気抵抗も少なくなってるっていわれているね。
G3組みはアルミの最上級モデル、シャマルウルトラにも用いられているから、このルックスに憧れてゾンダを選ぶ人も多いんだ。超カッコいいよね、これ。
カンパニョーロのゾンダホイール、シマノとの互換性は? 交換で気をつけたいポイント
私のロードバイクのコンポーネントはシマノのソラなんですけど、カンパニョーロのホイールを付けられますか?
リアホイールにはカセットスプロケット(リアの多段ギヤ板)を装着するフリーボディーっていう部分があるんだけど、ここがシマノ用とカンパニョーロ用と2種類あって交換ができない。だからシマノ規格のカセットスプロケットを付けているならシマノ用じゃないと付かないから気をつけて。
シマノ用ならそのまま付きますか?
今付いてるシマノ・ソラは9速だから、スプロケットを取り付けるときにスペーサーを入れる必要があるね。(ゾンダC17は11速ホイール)
そのほか段数に応じてスペーサーがいるものといらないものがある。スペーサーを入れ忘れると正しく変速しないので、間違いのないようにしておこう。
※ゾンダC17(11速用)の場合
シマノ・10速のカセットスプロケットを 装着する場合 | 1.85mmスペーサーと1.0mmのスペーサーの2点が必要 ※CS-6600、CS-4600の場合は1.0mmスペーサーは不要 |
シマノ・8/9速のカセットスプロケットを 装着する場合 | 1.85mmスペーサーのみ必要 |
>> 自分のロードバイクに適合するかわからない場合は直接聞いてみよう! バイチャリなら電話でもメールでも問い合わせ可能です
あれ、ここに17Cって書いてあるのはなんですか?
これはリムの内側の幅のことで、ゾンダは2016年に規格を変更して内幅を17mmに広げたんだ。これによって、それまでタイヤサイズで23C(タイヤの直径おおよそ23mm)が適正だったものが、25C以上の太いタイヤに対応できるようになった。C17なら実際は25mmから28mmくらいのタイヤが適正かな。
ゾンダディスク、最新のゾンダGTは何が違う?
私のロードバイクはリムブレーキなんですけど、ディスクブレーキ用もあるんですか?
おっと、忘れるところだった。ゾンダにはディスクブレーキ用もあって、商品名にDB(ディスクブレーキ)と付くのがディスクブレーキ用。これはリムブレーキのロードバイクには使えないので注意だ。リムブレーキ用はリム部分にブレーキパッドが当たる銀色の金属部分があるので、簡単に見分けられるよ。
最新のゾンダ「ZONDA GT」(ゾンダ グランツーリスモ)って?
2024年に登場したばかりの最新のゾンダホイールが『ZONDA GT』。リム幅はC23とさらに広がり、ワイドタイヤの装着が可能になりました。チューブレスタイヤへも対応し、グラベルライドや長距離走行も得意なモデルに。現代のトレンドをしっかり取り入れた最新のゾンダですが、重量はカタログ値1690gとやや重め。ディスクブレーキ専用ホイールなので、自分のロードバイクのタイプとライドスタイルにあえば、選択肢のひとつになるでしょう。
画像出典:Campagnolo
実際にゾンダに換えて走ってみた! タイムに変化は?
ゾンダの魅力をしっかり理解したところで、サキちゃんの愛車のホイールをゾンダに付け換えて、実際に走行してもらいましょう。
これまでパーツ交換の経験が一切ないので、違いが分かるかちょっと心配……。今のホイールも安定感があって気に入っているけど、坂を上るときのスタートダッシュに遅れることがあるので、そこに違いが出ると嬉しいな!
上り坂基調のコースでさっそくテスト!
上り坂からゼロ発進でのスタートでしたが、最初のこぎ出しから違いがハッキリとわかりました! すっごい脚が回るし、いつもよりギアが一段軽くなってる!?と感じたぐらい。進む楽しさを実感するから、どんどんスピードをあげたくなりますね。ホイール交換の効果ってすごい!
>> 鉄下駄ホイールと乗り比べ! 果たしてタイムに差は出るのか…!? 動画でチェック
ゾンダでステップアップ! 良質なアルミホイールのメリットを存分に味わえる
さあ、結論です。
ゾンダの魅力はコスパにすぐれてて、安くてもよく走ること。カンパニョーロというイタリアブランドに触れるのも経験値アップに役立つはず。鉄下駄ホイールからの乗り換えには最適だ。
最近はゾンダに限らず自転車パーツの値上がりが激しくて、ミドルグレードのパーツもだんだん手が届きにくくなってる。
でもバイチャリならまだまだ手頃な価格でゾンダを手に入れることができるのがうれしいね。
しかもアルミのリムブレーキのホイールってのは、ディスクブレーキ用モデルに押されて最近製品が減ってきている。どんどんラインナップ落ちしていくし、まだ残っていても在庫限りとか。だから中古で買う意味があるよね。
俺もアルミのリムブレーキ用クリンチャーホイールのいいヤツが欲しくてさ。だって今買わないともう手に入らないから。今度バイチャリで探してみよっと!
>> 買い取りでさらにオトクに! 今のホイールを無料査定に出してみる?