ロードバイクやクロスバイクなどのスポーツ自転車の必須メンテナンスといえば『チェーンの注油』。チェーンオイルを差すだけのカンタン作業かと思いきや、いざやってみようとすると意外とやり方がわからない!
どのくらいの量を?どのチェーンオイルで?どんなやり方で?どのくらいの頻度で? 注油にまつわるギモンをすべて解決していきましょう。2人の現役自転車技士が分かりやすく教えてくれました。
意外と知らないチェーン注油のやり方
こんにちは! 現役メカニックであり自転車技士の、ののむらです。
今回はサイクリストのみなさんにぜひマスターしてもらいたい「注油」のお話! 私もロードバイク初心者のとき、チェーンに注油が必要だと聞いてはいたものの、やり方や頻度がわからず、なんとなくで注油していた経験がありまして……
頭にはてなマークを浮かべながら、あちらこちらにシャーっとスプレーをかけていたのはここだけの秘密です。
実際、チェーンのメンテナンス方法の詳しいやり方までは知らないって人も多いんです。注油しましょうね!って言われるけど、そのやり方までちゃんと教えてくれるところってほとんどないんですよね。
自転車技士レベルのチェーンオイルの差し方を分かりやすく、しっかり伝授します!
今回はおかだくんのやり方をベースに、筆者である私、ののむらのダブル現役自転車技士タッグでお伝えしていきます。やり方がまったくわからない人も、まるっと真似するだけで簡単にチェーン注油がマスターできますよ!
チェーンに注油が必要な理由
そもそもチェーンにオイルを差すのは何のため? やらないとどうなるのでしょう?
- チェーンに注油が必要な理由
- 摩擦を少なくして、削れ・抵抗を少なくして走りを軽くするため
- 金属のサビを防ぐため
チェーンは金属製ですから、金属でできたプレートやピン同士が触れ合うことで抵抗が生まれます。チェーンオイルが切れかけているときに、チャリチャリと鳴る音こそがまさに摩擦音。
そこに潤滑油を差すことで抵抗を減らし、動作が滑らかになるのです。
また、チェーンオイルにはサビを防ぐ効果も。塗布したオイルが薄い皮膜になって、雨によるサビ、サビによる腐食を防ぎます。サビを防ぐということは、チェーンの寿命を伸ばすことにもつながるわけです。大事なロードバイクだからこそ、定期的な注油を心がけたいですね!
チェーンオイルの種類と選び方
ここからは実際にどんなチェーンオイル(チェーンルブとも呼ばれます)を使っていけばよいのか、種類と使い分けについて確認していきましょう。
チェックする項目は2つ。チェーンオイルのタイプと、容器です。
- オイルタイプ
- オイルの粘度でタイプが分かれる。サラサラ系かしっとり系か、ライドスタイルにあわせて選びます
- 容器
- スプレーかボトルかに分かれる。チェーンオイルの差し方が異なります
詳しくみていきましょう。
1.オイルタイプ(ドライかウェットか)
チェーンオイルの種類はドライ系・ウェット系・その中間と、大きく分けて3種類あります。自分の乗る距離・ライドスタイルに合わせて選ぶことで、オイルの持っている効果を最大限発揮できます。
- ドライタイプ…晴れた日や乾燥した路面を走るライドに最適。ロードレースやヒルクライムなどの短距離ライドにも
- ウェットタイプ…雨天やオフロードでも効果を発揮。通勤通学、ブルベ、ロングライドなどの長距離向け
- セミドライ(セミウェット)タイプ…オールマイティに使用可能
1.ドライはオイルがサラサラしたタイプのもの。粘度が低くサラサラしているため抵抗が少なく、汚れがつきにくいのが特徴。ただしとても乾きやすいので、頻繁に注油をする必要があります。さらに雨が降ると一発で落ちてしまうので、雨天ライドでは使えません。晴れた日のドライ環境で短〜中距離を走る人で、こまめに注油するのが苦にならない人にはおすすめです。ワンデーレースやヒルクライムなど、ここ一番の勝負の際にドライタイプを使う人も多いです。
2.ウェットはオイルがしっとりしたタイプのもの。粘度が高く、とろりとした質感でチェーンにしっかりと留まります。厚い油膜がチェーンを包み込むので、雨天環境でも落ちにくいのがポイント。効果が持続するので長距離ライドに向いていますが、ドライに比べると汚れを吸着しやすい面も。走り終わった後はこまめにクリーニングをするのがおすすめ。(ねっとりしたウェットタイプは、ドライタイプに比べて抵抗が生まれやすいのは確かですが、走りの差を体感できる人はそういないのでは……)
通勤・通学用の自転車で毎回注油の手間はかけられない人、ロングライドやブルベなど一回あたりのライド距離が長い人、天候を選ばず乗りたい人はウェットタイプを選ぶのがおすすめ。
特徴 | ドライタイプ | ウェットタイプ |
耐水性 | 低い | 高い |
持続時間 | 短い | 長い |
汚れの付きやすさ | 少ない | 多い |
適した環境 | 乾燥路・晴天時 | 雨天・湿地・泥道 |
適したライドスタイル | 短距離ライド | 長距離ライド |
3.セミドライ・セミウェットはその真ん中で、いいとこどりのオールマイティー選手といったところ。一本でなんでも済ませたい、長距離を乗るわけでもない…など、趣味としてカジュアルに楽しむ人にとっては、王道のセミドライ・セミウェットタイプが使いやすいでしょう。ただ、ドライやウェットのように突出した特性がなく、平均的な効果になってしまうのがウィークポイントでもあります。
2.容器(ボトルかスプレーか)
さらにチェーンの容器によって、差し方が変わります。
- ボトルタイプ(リキッドタイプ):点滴のように一滴一滴落とす
- スプレー缶タイプ(ミストタイプ):ノズルを装着して噴射する
小さいボトル(リキッド)タイプは、一滴ずつオイルを差していくため、チェーンのひとコマずつ確実に注油することができます。また、注油する量を自分で加減できるので、油膜の厚さを調節できます。たっぷりつけるのか、ちょんと少しだけつけるのか、チェーンの状態にあわせて対応できます。
対して、スプレー缶(ミスト)タイプは、スピーディに素早くオイルを塗布することができます。ノズルを利用して奥まで噴射できるので、より細部まで注油できる点も特徴です。
チェーンオイルを差すタイミングは?
注油の頻度は製品によって異なるため、自分のチェーンオイルのパッケージを確認するのがベストです。目安として「400〜600kmほど走ったら注油」と表記しているメーカーが多いです。
もしチェーンから「キュルキュル」と音が鳴り始めているようなら、すぐに注油してあげてください。キュルキュル音は、すでに金属同士の潤滑が切れて軋んでしまっているサインです。
適切なタイミングで注油できるよう、日頃からチェーンの状態をこまめにチェックするのが大切ですよ。
チェーンオイルの差し方
ここからは、いよいよチェーンオイルの差し方の実践講座です! 一滴ずつ落とすボトルタイプと、スプレータイプの両方を解説します。
①差す前の準備
差す前の準備はひとつだけ。必ず「汚れを落としてあげること」です。
チェーンが汚れた状態でさらに注油をすると、汚れとオイルが混ざって潤滑の効果が発揮されず、駆動効率も下がってしまいます。さらには、チェーンやスプロケットの摩耗が進む原因にも。
チェーンオイルを差す前に、チェーンに付着した砂・泥・黒くなった古いオイルをウエスなどでしっかり拭き取っておきましょう。パーツクリーナーを使うとより効果的ですが、クリーナーがブレーキ面にかからないようにすることと、クリーナーを完全に蒸発させてからオイルを差す必要があることに注意しましょう。
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②注油のスタート地点を見つけよう
チェーンオイルを差すときは、まずミッシングリンク(チェーンのつなぎ目になっている特殊なコマ)を見つけるのがポイントです。
ひとつだけ見た目の違うこのリンクを目印にしてオイルを差し始めれば、どこまで作業が進んだか一目で分かります。ミッシングリンクから始めて、再度ミッシングリンクに到達したら一周したサイン。チェーン全体にオイルが行き渡ったということですね。
さらに、オイルを差す位置にも注目。おかだくんのおすすめは「チェーンの内側」です。
チェーンの動きを考えてみるとわかりますが、歯がかかる部分はチェーンの内側ですよね。チェーンの外側から注油してもいずれは浸透しますが、最初から内側にオイルを差したほうが効果は高くなります。
チェーンステーの下側で作業をするのは、ディレーラーやフレームなど余計なところにオイルがかからないようにするためでもあります。
これができていると、ちょっと通っぽい感じになりますよ〜!
③a:ボトル(リキッド)タイプの差し方
まずは一滴ずつ落とすリキッド状のボトルタイプの差し方から。チェーンのコマにオイルを一滴ずつ注油していきます。
ただ、これだとけっこう時間がかかっちゃうんですよね。もうちょっと手早く差したいなら、容器の先端をチェーンに当ててオイルを少し押し出しつつ、クランクを回していきましょう。
こうすることで、一滴一滴垂らさずとも、チェーン全体に注油が可能です。
▼動画でチェック
③b:スプレー(ミスト)タイプの差し方
スプレータイプは、使う前にひとつ絶対に準備してほしいアイテムがあります。それが「ウエス」!
コレはまじで絶対に用意してください。
ミスト状のチェーンオイルが周りに飛び散らないように、吹き付ける反対側にウエスで壁を作ってあげるのが大事! ウエスをセットしてから、スプレーノズルを数センチ離してチェーンオイルを吹きかけていきます。
チェーンに沿ってサーッと吹き付けていけばOKです。
▼動画でチェック
④注油後は「なじませ」がキモ
全体にオイルを差したら終了?……いやいや、ここからがプロと素人の違い!
チェーンオイルを一周差し終えたら、そこからさらにオイルを馴染ませていきます。
ゴム手袋などをつけて、チェーンの上下を指でつまんでクランクを回していきます。内側のコマを回転させて、チェーンオイルを中まで浸透させるイメージですね。
馴染ませたあともプレートから溢れたり滴り落ちるようなオイルは、ウエスで軽く拭き取ってあげましょう。
チェーンオイルは、かければかけるだけ効果が倍増するわけではありません。チェーンオイルを過剰につけてしまうと、走っている最中に飛び散ったり、汚れを吸着してしまうデメリットが。サプリでいうところの「用法容量を守って正しくご使用ください」と同じですね。
余分なオイルを拭き取ったら、最後にドライブトレイン全体にオイルを行き渡らせます。前後の変速機を動作させて全段にまんべんなくチェーンを移動させたら完了です。
ここまでやったら、注油は完了! あとは完全に馴染むまで放置するだけです。
どのくらいの時間を置くかはチェーンオイルの粘度や製品ごとで変わってくるので、使用しているチェーンオイルの注意書きを確認してください。差し終わったらすぐに走り出していいものもあれば、一日置いた方がいいものもあります。
ちなみに私が今使っているものは、塗布後12時間乾燥が必要なので、すぐには走り出せないタイプです。
「放置する時間を絶対に守らないと壊れちゃう」という話ではありませんが、チェーンオイルの性能を最大限に引き出すために、仕上げまできちんとしてあげましょう。細部にまで気を配れているかそうでないかが、初心者と上級者の違いですよ!
注油のNG行動
さて、これにて注油完了……なのですが、最後にやってはいけない「注油のNG行動」を覚えておきましょう。
それは「ブレーキにオイルを付着させないこと」!
ディスクブレーキのローターやパッド、キャリパー部分。リムブレーキならブレーキシューやキャリパー、ホイールのリム部分など、ブレーキの動作に関わる部品に油をかけてしまうのは絶対にNGです。
制動力が著しく落ちてしまうので、これが原因でブレーキをかけても滑って止まらなかった、なんてことが起こると大事故に繋がってしまいます。
ディスクブレーキのパッドなんかは、オイルがつくと再生不可になっちゃいます。部品代+工賃で高額な修理代がかかってしまう可能性が高いので、ブレーキまわりはとくに注意を払ってくださいね!
最適なチェーンオイルを選んで定期的にケアしよう
定期的にチェーンオイルを差す必要があるのは知ってたけど、細かいやり方や注意点までは知らなかった人も多いのではないでしょうか。
今回の記事を参考に、自分に合いそうなチェーンオイルを選んで、まずは試してみるのがおすすめです。オイルの差し方も、この記事をまるっと真似すればバッチリです。
大事な愛車はしっかりと注油・メンテナンスして、ながーく乗ってあげましょう!
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