「暑い、暑すぎる……! ここまで暑いと、サイクリングに出かけるのがなんだか恐ろしい。でも自転車には乗りたいんだよな! 灼熱サイクリングを安全に楽しむための必要最低限の装備を知ってから出かけないと!」
そう暑苦しく語るのは、buychari JOURNAL編集部イチのヘタれサイクリスト「いちなほ」。“ロードバイクは永遠のビギナー” と自称するだけあって、猛暑下のサイクリングにビビりまくっている様子です。
そこで今回は、猛暑サイクリング対策の基本をベテラン女子サイクリスト「ののむら」さんに教えてもらうことに。
猛暑サイクリング、怖いよ〜! ここまで暑いと「水分補給さえしとけばいいっしょ☆」なんてのん気なことは言ってられない……。何も準備しないまま走ってたらぶっ倒れちゃうよ〜
たしかに、ここ数年の暑さはものすごいですからね。とくに初心者の人は躊躇してしまうのもわかります。でも大丈夫、今回は「猛暑サイクリングでも、ひとまずこれさえ押さえておけば安心!」な基本のキを伝授します。ポイントは「水分補給」「ウェア」「日焼け止め」の3つだけ。真夏でも安心して走り出せますよ!
【水分補給】ボトルが2本以上必要な理由

ののむら先生、夏はなんといっても水分補給が心配です……! 真夏のサイクリングって、信じられないぐらい汗かきますからね
そうですよね! ここは酷暑サイクリングの鉄則、「ボトルは最低でも2本用意」から始めましょう!
2本あればOKなんですか? 両方とも水をいれていくんですよね
真夏は「最低でも」2本ってこと。ライドの距離や時間によって必要な水分量は変わりますが、1時間走るなら「サイクルボトルを2本以上」が基本です。それから水だけ飲んでいればいいというのは大間違いですよ! 真夏の水分補給でポイントになるのは「水分」と「電解質」のふたつなんです
なんですか電解質って
電解質とは、ひらたくいえばミネラルのこと。体内で水分調整や筋肉の動きをサポートする物質が電解質です
電解質:体の中で重要な働きをするミネラルのこと
- ナトリウム…水分のバランス調整と血圧を維持する
- カリウム…筋肉の動きを助け、心臓のリズムを調整する
- マグネシウム…神経と筋肉の働きをサポートする
ふむふむ。なんか熱中症対策でも聞いたことがある気がしますね
汗をかくときって、水分だけでなく電解質(ミネラル)も流れ出てしまうんです。ミネラルが不足すると、脱水症状だけでなく筋肉がうまく動かなくなったり、脚がつりやすくなったりするんですよ
あっ! まさにこのあいだ、超暑いハードめのライド中、3回ぐらい足がつりました……! そっか、あれはミネラル不足が原因だったんだ
汗をかいたら水分と電解質の両方をちゃんと補給してあげなきゃダメ! 水分だけじゃカラダを万全な状態に戻せないんです。大量の汗をかく真夏のサイクリングでは、水分と電解質の両方を補給することがめちゃくちゃ大事なんですよ!
1本は水、1本はスポーツドリンクを

ということで、真夏のライドにはボトルを2本用意して、1本は水、もう1本は電解質を含んだスポーツドリンクにするのがおすすめです!
……もう足攣りたくないし、2本ともスポーツドリンクにしちゃっていいですよね?
ダメです。(キッパリ)
えっ
じつはただの水もまた大事なんです。水は、水分補給とは別のシーンで重宝しますから。たとえば火照ったカラダに直接かけてしまえば、水分の蒸発とともに体温を奪ってくれるので冷却効果がありますし、落車したときに傷口を洗うこともできますね。クリートに詰まった泥を洗い流すのに役立ったこともあります
なるほど〜、たしかにスポドリはカラダにかけたくないなぁ。緊急時の洗浄やトラブル時にも使うことを考えるとひとつは水がベストなんですね
ちなみに私は虫歯予防として、甘いジェルを摂取したあと口をゆすぐときにも水を使いますよ! というわけで、真夏は水とスポドリのボトルを1本ずつ用意して出発してくださいね。ボトルケージが足りない場合は、サドルバッグやジャージのポケットなどを活用してダブルボトル装備でライドできるようにしましょう
水分補給の量やタイミングを教えて!

真夏のサイクリングでは、めちゃくちゃ喉も乾くし疲れるから、言われなくても水は飲むんですけど、ベストなパフォーマンスのために果たして足りているのかはよくわからないんですよね。水分補給って、いつ、どのくらいの量、どのくらいの頻度がベストなんですか?
じつは、喉が乾いたと感じたときにはすでに脱水が始まっているんです。夏場の水分補給は「少しずつこまめに飲む」が鉄則です
出た! こまめに飲む! こまめって言われてもよくわかんないんだよな〜、数字でちゃんと教えてほしい!
しょうがないですね〜。運動強度や体重にもよるんですが、真夏の一般的なサイクリングを想定して数値化するならこんな感じです。
【水分補給のチェックタイミング】
チェックのタイミング | 補給量の目安 |
0分(スタート前) | 水かスポドリを200~300ml |
30分(1回目) | 200mlほど |
1時間(2回目) | 200~300mlほど |
以降30〜45分ごと | 200ml前後をこまめに |
スタート前にも飲んでおかないといけないんだ! それに出発して30分ぐらいって調子よく走れてるからあんまり水分補給のことが頭にない気がするけど、ひとまず200mlは飲んでおくべきなんですね
「30分ごとに200ml減っているか(飲めているか)」を目安にするといいですよ。補給のタイミング自体は「10分おきに一口ずつ」みたいにこまめに飲んでおいて、30分ごとに減った量をチェックする感じ。さらに私は、50km走ったら日陰で停車して水分補給し、しっかりクールダウンするようにしています
あれ、電解質は?
そこは水とスポドリを交互に飲む、ぐらいの意識で大丈夫です。ずっと同じものを飲んでいると飽きてくるので、気分転換も兼ねて。市販のスポドリでもいいですし、水に溶かすパウダータイプのものでもOK!
固形のタブレットタイプもありますよね、あれはどうなんですか?
もちろんOKです! タブレットや塩飴なんかも有効ですよ。私の場合、夏場はほぼ「水のボトル」+「パウダータイプを溶かしたドリンク」で対応していますが、300kmを越えるブルベになってくると飽きてくるんですよね〜。そんなときに、塩タブレットやジェルタイプのもので変化を持たせながら乗り切っています!
(300kmとか走りませんから……)

それじゃ、家から出るときに準備するボトルの量はどう考えたらいいですか?
その日の走行距離と時間を目安に考えるといいですよ。人が屋外で運動するときの発汗量は、1時間に500ml〜といわれています。ここも真夏の一般的なサイクリングを想定して、必要な目安量を表にしてみましょう
【30℃以上を想定した真夏の水分の目安】
距離 | 所要時間 (目安) | 必要な水分量 (目安) |
〜20km | 約1時間 | 500ml |
20〜30km | 約1〜2時間 | 1L前後 |
30〜50km | 約2〜3時間 | 1.5L前後 |
50〜80km | 約3〜5時間 | 1.5〜2.5L |
80〜100㎞以上 | 約5時間〜 | 2.5〜3L |
途中でコンビニや自動販売機などで追加補給ができそうかをチェックしておくと、ボトルの本数も決めやすくなりますね
たしかにコンビニがあるかどうかは運命の分かれ道かも……! このあいだのライドは40km程度だったけど、ドリンクが足りなくなりそうなときにコンビニがあってめちゃくちゃ助かりましたね
とくに土地勘のないエリアを走る場合は、事前にコンビニの有無を確認しておくと安心です。山間部などでは自販機すらなく、補給困難な区間があったりしますから

それからこれは私の失敗談ですが、600kmのブルベで県境の山間部を走っていたときに、やっと見つけた念願の自販機が新札非対応だったことがありました。もちろん電子マネー決済も非対応。手元の新札3枚を見て絶望しましたね……。サイクリングのときは現金、しかも小銭を必ず持ち歩くようにしましょう!
ふだんはほとんど現金を使わないから気をつけないとなぁ。地方に行くほどキャッシュレス非対応のお店ってまだありますもんね。ダブルボトルと小銭、忘れないようにします!
【ウェア】真夏のウェアはなにが正解?

一番心配な水分補給はこれでもう安心です! 次はウェアですけど、真夏なんだから半袖ジャージ一択ですよね?
これは意外と難しいところで、同じ真夏のサイクリングでも状況によってウェアの最適解が違うんです。大きく分けて「半袖ジャージ」「半袖ジャージ+アームカバー」「薄手の長袖ジャージ」の3タイプがあるので、まずはそれぞれのメリットとデメリットを比較してみましょう!
①半袖ジャージ

- メリット
- 軽量かつ快適で、もっとも通気性がよく風を感じやすい
- 走行中に腕から熱が逃げやすく、涼しさを最優先にできる
- デメリット
- 直射日光による日焼けが体力を消耗させてしまう
- 長時間乗ると乾いた汗で素肌がべたつくことがある
<向いているスタイル>
・涼しさを最優先したいとき
・日焼けのダメージが少ない短距離のライド
②半袖ジャージ+アームカバー

- メリット
- UVカット効果があり、日焼けによる体力の消耗を防げる
- 休憩時や上りでは外す、下りでは着けるなど、調整が可能
- デメリット
- 袖とアームカバーの隙間が日焼けしてしまうことがある
- ジャストサイズのアームカバーを選ばないとライド中にずり落ちてくる
<向いているスタイル>
・短距離~長距離のライド
・通常時~35℃を超える猛暑
③薄手の長袖ジャージ

- メリット
- 1枚だけで常にUVカット効果が期待でき、日焼け防止に
- アームカバーと違ってずり落ちがなく、袖との境界線が日焼けする心配もない
- デメリット
- 35℃を超えるような猛暑では熱がこもりやすい
- 半袖よりもバリエーションが少なく、半袖+アームカバーより高コストになる場合が多い
- 腕の長さによっては袖が短く、グローブとの隙間が日焼けすることがある
<向いているスタイル>
・アームカバーの圧迫やズレが苦手な人
・35℃以下の夏場走行
上記の3パターンを比較すると、どのシチュエーションでもカバーしやすいのが「半袖ジャージ+アームカバー」といえます。実際に私も、真夏は「半袖ジャージ+アームカバー」のパターンがほとんど。ブルベなどで200〜300km走り続けるときだけ、薄手の長袖を使っています
すでに半袖ジャージを持っているなら、アームカバーだけ用意すればOKだから手軽でいいですね
アームカバーをこれから買う人は、サイズ感に注意してほしいですね。サイズが大きいとライド中にずり落ちてきてしまいますし、小さいと丈が足りなかったり、圧迫されて血流が悪くなってしまいます。とくに女性はメンズのSでもゆるい場合があるので、レディース向けの商品を選ぶのがおすすめ!

冷感素材のアームカバーをチョイスするのもいいですよ。水をかけるとヒンヤリする加工が施されていて気持ちいいんです。猛暑ライドではちょっとの差が地味に効いてきますからね。同じくインナーも、冷感素材やメッシュ地のものを選ぶと、普段と同じジャージなのに快適性が一気に増すのでおすすめです!
【日焼け】見た目だけじゃない!? 日焼け止めってホントに必要?

日焼け止めね……。めんどくさいんだよなぁ〜。もう焼けていいなら塗らなくてよくないですか?
なんてこと言うんですか! これは口を酸っぱくしてお願いしたい部分ですが、男子も女子も、しっかりと日焼け止めを塗って走ってみてください。走り終わったあとの疲労感が全然違いますよ!
え、疲労感とか関係あるんですか? ただの日焼けなのに?
完全に太陽を舐めてますね! 炎天下で直射日光を肌に浴び続けていると、気づかないうちにどんどん体力を奪われているんですよ。まるでボディブローのようにじわじわとHPが減り続けていくんです
ええ〜! たしかに日焼け対策で疲労度が変わるとは耳にしますけど、本当なのかなぁ
本当ですってば! 紫外線は体内の活性酸素を増やして「回復の遅れ」を引き起こすんです。カンタンにいえば、カラダがサビついているということ。「日焼けしない」はすなわち「バテない」に通じるんです! そもそも日焼けすると、その日のお風呂はヒリヒリ染みるし、もちろんお肌にも悪いし、いいことないでしょ!
たしかに……。日焼け止めを塗ることでこれらが回避できるなら、塗ったほうがいいですよね。じゃあ、日焼け止めの選び方と塗り方のコツを教えてください!
日焼け止めの選び方と塗るタイミング

真夏のサイクリングでは「SPF50」「PA++++」「ウォータープルーフ」の表記がある日焼け止めを選んでおけば間違いありません!
日焼け止めではおなじみの指標ですね。SPF50、PA++++(+が4個)ってたしか一番高い数値じゃないですか?
そう! 真夏のサイクリングには最高レベルの日焼け止めをチョイスしてください。さらに耐水性を表すウォータープルーフの表記があれば、汗で日焼け止めが流れ落ちるのを防げます。その日のお風呂ではボディソープでしっかりと落とすようにしてくださいね
それじゃ、「SPF50」「PA++++」「ウォータープルーフ」の日焼け止めを用意して、出発前に一回塗れば大丈夫ですね!
甘〜い!! まず最初に塗るタイミングは出発の30分前です。肌になじませて定着させる必要がありますからね
うぐっ……
塗った直後に汗をかいてしまうと、日焼け止めって流れ落ちちゃうんですよ。せっかく塗ったのに意味ないでしょ。そしてライド中も、2〜3時間に1回は塗り直してほしいですね
ライド中も!? ウォータープルーフなのに? さすがに真夏の発汗量では流れ落ちてしまうのかぁ……
面倒に感じるかもしれませんが、塗り方ひとつで、走り終わったあとの疲労感がまるで違いますから
でもライド中に塗るとなると、持ち運ばないといけないし、手も汚れるしイヤだなぁ〜
それならスティックタイプやスプレータイプの日焼け止めを使うといいですよ! 私はしっかりと厚めに塗れて、コンパクトなスティックタイプを愛用しています

それから塗り忘れがちな、「もみあげ」「うなじ」「耳のウラ」もしっかりケアしてあげてくださいね。もみあげ部分を塗り忘れると、ヘルメットのアゴ紐でY字型の悲惨な日焼けが爆誕してしまいますよ
猛暑サイクリングを快適にする「ひと工夫」
これで真夏のサイクリングももう怖くなくなりました! 最後にベテランサイクリストならではの、猛暑サイクリングを乗り越える「ひと工夫」を教えてください!
それはよかった! では最後に夏ならではのおすすめアイテムと小技を3つ伝授しちゃいますね!
- 保冷ボトルを使う
プラスチック製のサイクルボトルだと、氷を入れてもすぐにぬるま湯になっちゃいますよね。そんなときは、保冷ボトルの導入がおすすめ!

とくにステンレス素材の魔法瓶タイプのものなら、真夏でも数時間はキンキンの状態をキープしてくれます。価格は3000円前後から、自転車専用の保冷ボトルもあるのでぜひ探してみてください。(中にはスポドリNGの保冷ボトルもあるので注意)
- アイススラリー

氷の粒が入ったドリンク「アイススラリー」は、酷暑サイクリングの熱中症対策としては最強クラスのテクニックです! 氷を一緒に飲むことで、カラダの深部体温(コア体温)を下げる効果があります。
私がよくやるスタイルは、凍ったドリンクをコンビニで購入し、それをジャージの首すじに入れて走るというもの。カラダを冷やしつつ、ドリンクが半分くらい溶けたら取り出して、シャーベット状になったものをアイススラリーとして飲んでいます。

冷凍のペットボトル飲料もおなじみですが、最近は画像のようなパウチ型の冷凍ドリンクを買う機会が増えました。ペットボトルよりコンパクトになるし、半解凍状態のドリンクを揉んでアイススラリーにしやすいので便利なんですよ!
- コンビニの氷ボックス

コンビニは真夏のサイクリストの救世主! とくに便利なのがドリンクカップに入った氷です。私は38℃越えのブルベで、今年もすでにお世話になりまくりです。
ボトルに入れるのはもちろん、背中に入れて体温の上昇を防いだり、ヘルメットのベンチホールに氷のかけらを入れて頭を冷やしたりと、身体を外から冷却するのに適しています。

グループライドなら大きい袋に入ったロックアイスをシェアしてもいいですね。ソロライドでも背中に背負いつつ、溶けたら身体にかけちゃうツワモノもいますよ!
どれも冷えたドリンクやカラダを冷やすコツなので、胃腸の弱い人はやりすぎ厳禁です。ロングライドの後半で内臓が疲弊しているときも冷えすぎには十分注意してくださいね
酷暑サイクリングももう安心!

水分補給のコツ、ウェアの選び方、日焼け止めの使い方と、猛暑対策の基本をひととおり押さえるだけで、真夏のライドハードルもぐっと下がります!
【今回のポイント】
①【水分補給】ダブルボトルがキホン。1時間に500mlを目安に水分+電解質を摂取
②【ウェア】真夏の最適解は「半袖ジャージ+アームカバー」
③【日焼け止め】SPF50 / PA++++ / ウォータープルーフがマスト
真夏のサイクリングは想像以上に高温になるため、思わぬ危険を伴います。準備こそ一番の装備という気持ちで、この夏も最高のサイクリングを楽しみましょう!
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