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ROAD BIKE

ロードバイクのリムブレーキはなくなる?10年後も乗り続けたほうがいい理由

ロードバイクの最新モデルがこぞってディスクブレーキモデルを採用するなか、それでもなおリムブレーキに乗る意味はあるのでしょうか?

ディスク化の波に飲まれず、あえて選ぶのも全然アリなリムブレーキの魅力について、自転車ジャーナリストのやすいサンに話を聞きました!

リムブレーキモデルはちっとも “オワコン” なんかじゃない! むしろ10年後も手放せない、その納得のワケを探ります。

がっかりだった黎明期のディスクロード

(上)リムブレーキのロードバイクと、(下)ディスクブレーキのロードバイク。どちらもやすいサンの愛車

ロードバイクのディスクブレーキ化が始まったのは、今から10年ほど前でしょうか。総合的な制動性能向上は歓迎すべきものでしたが、しかしそれを踏まえても、当時のディスクロードの完成度は決して高くありませんでした。

そもそもロードバイクは「効率よく走る」ため以外の機能をほとんど持たない、シンプル至極な乗り物です。だって軽いものになると6~7kgの車体に人間が乗って、車と同じくらいのスピードで走るんです。ギリギリのバランスの上に成り立っている乗り物であり、その証拠に、ロードバイクに付いているのは「これを取ったら走れなくなる」というパーツばかり。

一切の無駄がないロードバイク。これぞ機能美

そんな無駄が一切ない乗り物のブレーキシステムががらりと変わるのだから、バランスが崩れて当然です。ブレーキキャリパーというアルミの塊がフレームの中心から末端に移動し、それに伴ってフレームの末端を強化しなければならなくなり、制動時にねじりの力がかかるようになるホイールも設計が変わりました。それによって、バイクの重量が増し、フレームもホイールもガチッと硬くなってしまい、軽快感やしなやかさが消えてしまったのです。

あまり実感がないかもしれませんが、ロードバイクは「しなり」や「バネ感」を上手く使って走らせる乗り物です。その走りの要となる「剛性感」が変わってしまったため、黎明期のディスクロードは、動きが重ったるいものが多かったんです。

もちろん、ディスクブレーキには、雨天でも制動性能が低下しない、リムが摩耗しない、タイヤ幅の制限が小さくなるなどの大きなメリットがありましたが、それを受け入れられないほど走りのクオリティが落ちていたのです。フレームの左側だけにキャリパーが付くためか、ハンドリングが左右で違うバイクも少なくありませんでした。

リムブレーキは決して終わってない

「これからロードバイクはこうなってしまうのか……」と自転車評論家として暗澹たる思いを抱いていたところ、ディスクロードは驚くほどのスピードで進化しはじめました。自転車メーカーのエンジニアたちが「さすがにこれじゃあかん」と思ったのか、ディスクロードの欠点はみるみるうちに改善されていき、かつてのデメリットはほとんどなくなり、今やかなりバランスのいい走りを手に入れています。

今やロードバイクの最新ラインナップはほぼディスクブレーキモデルに

また、太いタイヤを履くグラベルロードはディスクブレーキでしかほぼ実現し得ない車種であり(リムブレーキでは太いタイヤが装着できないため)、グラベルブームがディスクブレーキ化を加速させました。そうして、現在新車として販売されている本格的なロードバイクは基本的にディスクブレーキのみとなっています。

リムブレーキならではの3つの魅力

個人的にも、最新ディスクロードの走りに不満は少なくなっていますが、じゃあリムブレーキが完全に過去の遺物になってしまったかというと、そうはまったく思いません。リムブレーキのロードバイクにはまだまだ多くの魅力があると考えています。

メリット①「走り」

まずはやっぱり「走り」です。ディスクロードの走行性能はかつてより大幅に向上しましたが、完熟の域に達したリムブレーキならではの「心地よい快適性、上質なペダリングフィール、軽快なヒルクライム性能」の魅力はまだまだ健在。個人的にはこの「上質な走り」がリムブレーキの一番の魅力だと思います。

メリット②「運用のしやすさ」

外からすぐに目視できるリムブレーキは不具合の対処がしやすい

メリットその②は「運用のしやすさ」でしょう。リムブレーキはケーブルで制動力を伝達するうえ、ケーブルを内蔵しているバイクが少なく、構造がシンプルでメンテナンス性に優れるものが多いんです。工賃も安くなりますし、輪行をする際も油圧ディスクブレーキほど気を遣わなくて済みます。また、リムブレーキはメカむき出し・機能丸見えな構造なので、不具合が発生したときにどこに原因があるか判断しやすいともいえます。

メリット③「コスト」

そしてもちろんコスト面でのメリットも。先述のようにディスクロードのレベルは驚くほどのスピードで向上しましたが、本当にいい走りをするディスクロードを手に入れようとすると、かなりの金額を払わなければなりません。リムブレーキのニューモデルはほとんどなくなってしまいましたが、中古車を視野に入れるのであれば、「さほどコストをかけずに“いい走り”をするバイクを手に入れられる」ともいえるでしょう。また、リムブレーキなら低コストでも軽く仕上がりやすいこともメリットです。

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リムブレーキのデメリット

とはいえ、僕はリムブレーキ原理主義者でも、ディスクブレーキ否定派でもありません。「いい自転車が好き」で、「そうではない自転車が嫌い」なだけです。なので、リムブレーキのデメリットも説明しておきます。

ホイールのリム面でブレーキをかけるということは……

上で述べた「ディスクブレーキのメリット」の裏返しとなりますが、まず雨になると制動性能が低下すること。これは乗り物として大きな欠点です。「雨でもガンガン乗る」という方は、ディスクブレーキのバイクを選んだほうが安全です。また、制動によって構造体であるホイール(リム)が摩耗してしまうことや、タイヤ幅に制限があることもデメリットです。

ブレーキアーチの幅がタイヤサイズの上限に関係する

現在は23Cなどの細いタイヤが少なくなっているので、今からリムブレーキを入手するなら25C以上のタイヤが入るモデルを選んだ方がいいでしょう。

さらに、リムブレーキを運用する上での注意点も述べておきます。各社リムブレーキはラインナップしなくなったため、今後リムブレーキ関連の新製品が出てくることはほとんどなくなるでしょう。心配なのは消耗品ですが、ブレーキシューやブレーキケーブルはおそらく大丈夫。ブレーキキャリパーやホイール、ブレーキレバーなども、中古を視野に入れればしばらくは問題ないと思います。少なくとも、あと10年は問題なく乗り続けられるでしょう。

ただしブレーキレバーのブラケットは新品が入手しづらくなっているので、交換用ブラケットは手に入れておいた方がいいかもしれません。また、完組ホイールの補修パーツなども入手が難しくなる可能性が高いので、不安なら予備パーツを持っておくといいでしょう。

そんな注意点をちゃんと押さえつつ、スポーツバイクを投資ではなく趣味として楽しむのであれば、「今あえてリムブレーキを選ぶ」のは全然アリだと思います。

リムブレーキのロードバイクはひとつの到達点

そして、現在リムブレーキバイクを所有されている方にも一言お伝えしておきたい。もし、今の愛車の走りに満足されているなら、「俺の自転車、ディスクブレーキじゃないんだ……」と落胆する必要なんか全くないということです。

リムブレーキのロードバイクは、これまでの自転車技術の集大成です。100年以上の知見の積み重ねの末に完成した、ある意味円熟しきった乗り物です。胸を張って乗り、リムブレーキならではの軽やかで上質な走りを存分に楽しんでいただきたいと思います。

おすすめリムブレーキロードバイク厳選5台

最後に、ディスク全盛の今こそ乗りたい“選りすぐりの5台”を紹介しておきます。「これぞリムブレーキモデルの魅力!」と思わず唸るラインナップになりました。

コルナゴ:マスター Xライト 30周年記念モデル(2013年)

COLNAGO 「コルナゴ」 MASTER X-LIGHT 30th ANNIVERSARY 2013年モデル ロードバイク / 熊谷本店

スチールフレームの決定版。この細身のシルエットやシンプルな構造、シルバーのパーツ群などは、まさにリムブレーキならでは。“銀輪”を履いたこの伝統的な立ち姿は、ディスクブレーキでは醸し出せないものです。

価格:税込361,000円(新品参考価格:※フレーム単体で336,000円 )
サイズ適応身長:約160-168cm
フレーム素材クロモリ
メインコンポーネントカンパニョーロ アテナ
重量約8.45kg

>> COLNAGO 「コルナゴ」 MASTER X-LIGHT 30th ANNIVERSARY 2013年モデル ロードバイク / 熊谷本店

アンカー:RNC7(2016年)

ANCHOR 「アンカー」 RNC7 2016年モデル ロードバイク / バイチャリ浦和ベース

こちらもリムブレーキ時代の名車です。大きな応力がかかるチューブ両端をローラーでしごいて厚みを無段階に変化させるスピニングバテッド加工、チューブの断面形状を油圧で加工するバルジ成形など、スチールがレース界で現役だった時代ならではの手間のかかる作り方。カーボン&ディスクブレーキに完全移行してしまった現代では、こんなフレームは生まれないでしょう。

価格:税込130,000円(新品参考価格:270,000円 )
サイズ適応身長:約165-175cm
フレーム素材クロモリ
メインコンポーネントシマノ アルテグラ(6800)
重量約9.1kg

>> ANCHOR 「アンカー」 RNC7 2016年モデル ロードバイク / バイチャリ浦和ベース

サーベロ:R3(2009年)

CERVELO 「サーベロ」 R3 2009年モデル ロードバイク / 大阪美原北インター店

サーヴェロのR3は、デビュー当時に試乗して心底驚いた一台です。動力伝達性がいいのは当たり前。快適性や、ペダリングフィールや、挙動の軽やかさや、ダンシングでの軽快感など、まさに隙のない一台でした。今から思えば、リムブレーキという構造ならではの走りだったのだと思います。今あえてこれに乗って、当時の「最高の走り」を楽しむのも一興です。

価格:税込121,000円(新品参考価格:※フレーム単体で409,500円 )
サイズ適応身長:約165-175cm
フレーム素材カーボン
メインコンポーネントシマノ アルテグラ(6800)
重量約7.1kg

>> CERVELO 「サーベロ」 R3 2009年モデル ロードバイク / 大阪美原北インター店

キャノンデール:スーパーシックス エボ ハイモッド(2014年)

CANNONDALE 「キャノンデール」 SUPERSIX EVO HI-MOD 2014年モデル ロードバイク / バイチャリ浦和ベース

「リムブレーキのロードバイクで最高だと思う一台は?」という質問に対して一台だけに絞るのは容易ではありませんが、候補に必ず入るのがこの初代『スーパーシックス エボ ハイモッド』です。当時屈指の動的性能は、空力を除けば今も光るものがありますし、絶妙かつ上質なペダリングフィールは今も色褪せません。間違いなくリムブレーキ時代の名車です。

価格:税込258,100円(新品参考価格:※フレーム単体で358,971円 )
サイズ適応身長:約167-175cm
フレーム素材カーボン
メインコンポーネントシマノ デュラエース(R9000)
重量約6.7kg

>> CANNONDALE 「キャノンデール」 SUPERSIX EVO HI-MOD 2014年モデル ロードバイク / バイチャリ浦和ベース

スペシャライズド:Sワークス ターマック(2017年)

SPECIALIZED 「スペシャライズド」 S-WORKS TARMAC 2017年モデル ロードバイク / 伊勢崎店

このSL5世代のターマックも、極上の走りを持った一台です。ターマック=スパルタン、というイメージがあるかもしれませんが、この世代だけはリムブレーキならではのメリットを活かしたしなやかで上質な走りが魅力でした。当時買おうとしましたが、サイズがなくて泣く泣く諦めたものです。

価格:税込370,000円(新品参考価格:※フレーム単体で453,600円 )
サイズ適応身長:約160-170cm
フレーム素材カーボン
メインコンポーネントシマノ デュラエース(Di2 R9100)
重量約6.7kg

>> SPECIALIZED 「スペシャライズド」 S-WORKS TARMAC 2017年モデル ロードバイク / 伊勢崎店

10年後もリムブレーキを選ぶ理由がきっとある

やすいサンによる “リムブレーキへの熱いエール”、いかがでしたか。

ディスクブレーキ化が進むロードバイク界においても、リムブレーキはいまだ健在。進化を遂げた最新のディスクロードも魅力的ですが、それでもリムブレーキならではの軽快なヒルクライム性能、メンテナンス性、コストパフォーマンスといった利点は根強い人気を支えています。

とくに今のリムブレーキバイクを気に入っているなら、その「上質な走り」は胸を張って楽しむべきもの。10年後もきっと乗り続けているはずです。

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安井 行生

安井 行生

大学在学中にメッセンジャーとなり、自転車好きが高じてそのまま自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で執筆活動を行う。今まで購入してきたバイクは70台以上。

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