ロードバイクには適正空気圧がある

ロードバイクやクロスバイクを初めて買うとき、お店で教わることのひとつに「タイヤの空気圧」があります。いわゆるママチャリのようなシティサイクルと違い、スポーツ自転車には「適正空気圧」というものがあるんです。
ママチャリのような自転車はタイヤが肉厚でパンクリスクも少ないため、乗るたびに空気圧を測る必要はありません。少しペダルが重くなってきたかも?というタイミングで空気を入れればOK。
これがロードバイクやクロスバイクといったスポーツ自転車になると、タイヤやチューブが高圧向けの設計になります。空気の抜けが早かったり、シティサイクルのように低圧で走るとタイヤのヨレや変形が大きく、パンクのリスクも高まります。

ロードバイクやクロスバイクは、スポーツ自転車本来の走行性能を引き出し、かつ安全に走るために空気圧を意識する必要があるんですね。
「スポーツ自転車は適正空気圧を守るべし!」と頭に入れるだけでもよいのですが、じつは知れば知るほど奥が深いのが「空気圧」の世界。ここはひとつ、その道の達人にしっかり手ほどきしてもらいましょう!
自転車ジャーナリストのやすいサン、よろしくお願いします!
「空気」がなんでそんなに重要なの?

こんにちは、自転車ジャーナリストのやすいです。きましたね、「タイヤの空気圧」の話。
みなさんがショップに行って、ステムやハンドル、クランク、ホイール、サドル……いろんなパーツを手にすると思いますが、なんだかタイヤだけは様子が違うことに気付くかと思います。

PIRELLI 「ピレリ」 P ZERO RACE TLR SL 700x28c タイヤセット / 中目黒店
そう、タイヤだけは「売られている状態」と「使われる状態」が異なるんですね。ショップの棚に並んでいるタイヤはただのゴムのベルト。ホイールに取り付けて空気を充填しないと、タイヤとして機能しません。
要するに「空気」そのものが、タイヤを成り立たせる機能の一つというわけです。いくらハイグリップで転がり抵抗が低く軽いタイヤも、空気圧が適切でなければ性能が発揮できません。それどころか、パンクしやすくなったりホイールから外れてしまったりと、危険ですらあります。
推奨空気圧はどこで確認できる?

まず大前提として、タイヤメーカーが指定している「推奨空気圧」を確認する必要があります。タイヤの側面をよーく見ると、<5~8bar>などという数字が書いてあるはずです。それが推奨空気圧。「この範囲内であれば安全に走れます」ということなんですね。
ライドの前には必ずタイヤの空気圧が、ちゃんとこの範囲内であるかを確認するようにしましょう。

自転車で使われる空気圧の単位には、psi(Pounds Square Inch)、bar(バール)、kPa(キロパスカル)などがあります。タイヤの側面にはこのうちのどれかが記載されているはずです。

また、ホイールのリム側でも空気圧の上下数値を設定している場合があります。カーボンホイールに多いのですが、数値が設定されているものはホイール自体に記載があるのでチェックしてみてください。

空気入れのメーターにもこれらの単位が併記されているので、迷うことはありません。ちなみに、<1bar≒100kPa≒14.3psi>であり、<100psi≒7bar>となります。
おすすめフロアポンプとエアゲージ
推奨空気圧を守って空気を入れるために必要なのは、しっかりとしたフロアポンプと、正確なエアゲージです。ここでは間違いない定番品をピックアップして紹介しておきます。
フロアポンプ:パナレーサー ワンタッチポンプ

自宅にひとつは持っておきたいフロアポンプ。初心者の人にもおすすめなのが、パナレーサーのワンタッチポンプです。口金を差し込むだけでバルブへ取り付けができるワンタッチ仕様なので取り付けがカンタンですし、メーターが本体上部についているので数値が見やすいのもポイントです。
>> PANARSCER 「パナレーサー」 フロアポンプ / 大宮店
携帯用①手動ポンプ:

出先でパンクしたときや、ライド中でも空気圧が調整できるように、携帯できる空気入れも用意しておきましょう。ちなみに僕が愛用しているのは手動タイプのもので、こちらもパナレーサーのアルミ製ミニワンタッチポンプです。
>> PANARACER 「パナレーサー」 BMP-24AEZ-S 携帯ポンプ / 阪急塚口店
携帯用②電動ポンプ:サイクプラス AS2

携行ポンプとして、電動タイプも便利です。最近使っている人が増えましたね。手動タイプは自分の腕を使って空気を入れるので、とにかく力と回数が必要ですが、電動はボタンひとつで適正圧まで入れることができます。ただしバッテリー切れには注意が必要。
>> CYCPLUS 「サイクプラス」 CUBE AS2 電動空気入れ / 福岡アイランドシティ店
エアゲージ

このあと解説する「空気圧遊び」でも役立つアイテムがエアゲージです。空気入れに付いているエアゲージは誤差が大きいことが多いので、自転車専用のエアゲージを持っておくのがおすすめです。僕が愛用しているのは、こちらもパナレーサーのアナログタイプですが、デジタルのエアゲージもあります。
クルマなどと比べて高圧で使用される自転車用タイヤは、高圧なだけに空気の抜けも早めです。基本的にはライド毎に空気圧をチェックする習慣をつけましょう。
POINT!
・推奨空気圧はタイヤのサイドに記載あり
・空気圧がわかるポンプを用意しておこう
・ライドのときには毎回空気圧をチェック
推奨空気圧の範囲内の、どの数値で入れたらいいの?

「推奨空気圧を守りましょう」と理解したうえで、いざ空気を入れようとすると手がとまるわけです。そう、推奨空気圧の数値にはけっこうな幅があって、結局ピタリの正解値がわからないんですよね。
じつはここが難しいところで、空気圧には正解が存在しないんです。同じ種類の同じサイズのタイヤを使っていたとしても、路面、天候、体重、技術、スピード域、好みなどによって最適解は変わるからです。
空気圧に正解は存在しない

タイヤに求められる性能は、グリップ、快適性、走りの軽さ、耐パンク性などですが、空気圧が高くなるほど『グリップと振動吸収性が低下する』、逆に空気圧が低くなるほど『走りが重くなりパンクしやすくなる』というデメリットが生じます。

だからそれらの性能がちょうどよくバランスのとれる点に空気圧を設定するわけですが、そこが体重や路面状況など多くの要因で変化するんですね。
転がり抵抗を例に挙げて、ちょっとだけ考えてみましょう。
自転車の転がり抵抗の原因は2つです。
1つ目が、タイヤの変形によるエネルギーロス。タイヤが転がって地面に接するとき、タイヤは変形します。レールの上を転がる電車の鉄の車輪とは違い、自転車用タイヤは様々な路面に対応しなければならないので、しなやかに変形する必要があります(だからパンクのリスクを承知でクルマも自転車もゴムで空気の袋を作ってタイヤにしているわけです)。
しかし、タイヤのゴムが変形して元に戻るときに、「変形させた力」の一部が熱に変わってしまってエネルギーロスになるんです。変形する量が多ければ多いほどそのエネルギーロスは大きくなり、結果として転がり抵抗が増えてしまいます。これが、空気圧が低すぎると走りが重くなる理由です。
転がり抵抗のもう1つの原因が、運動の方向が変わってしまうこと。路面の凹凸に跳ね上げられて自転車が上下に動いてしまうと、推進力がその上下動に変わってしまい、エネルギーが無駄になってしまいます。凹凸の激しい路面に入ると、スピードが落ちてしまいますよね。空気圧を低くしてタイヤで路面の凹凸を吸収することで、運動の方向は変わらずペダルをこいだ力は全て推進力に変換されます。つまり転がり抵抗は小さくなりますが、反対に空気圧が高ければ凸凹を吸収しきれず跳ね上げられてしまうという理屈です。
まとめると、
- タイヤの変形によるエネルギーロスは空気圧が低くなると増える
- 路面の凹凸によるエネルギーロスは空気圧が高くなると増える
というわけです。転がり抵抗だけに着目しても、空気圧が高すぎても低すぎてもいけない理由が分かりますね。
やすい的「空気圧遊び」のススメ
よって最適な空気圧は状況によって変わります。以上。
……ではさすがに不親切にすぎるので、「自分に最適な空気圧の見つけ方」をお教えします。

まず、推奨空気圧の「下限」と「真ん中」と「上限」の数値でそれぞれ空気を入れて、走ってみましょう。
例えば推奨空気圧が<5~8bar>のタイヤなら、5bar(下限)、6.5bar(真ん中)、8bar(上限)です。それぞれの空気圧でいつものコースを走ってみて、快適性、走りの軽さ、コーナーでの安心感、ダンシングでバイクを左右に振ったときのタイヤの潰れ方の好みなどを感じ取ります。ぼんやり走ってちゃダメですよ。自分の感覚センサーの感度を最大限に高めて、タイヤの振る舞いを感じ取るようにしてください。

もちろん、先述のとおり、快適性や安心感は空気圧が低いほうが高くなり、舗装路での走りの軽さは空気圧が高いほうがよくなるはずなので、全ての要素を100点にすることはできません。ですが、どの気圧が「自分にとっていちばん気持ちよく走れて、かつ怖くない空気圧」なのかを意識して探してみてください。
好みの空気圧を見つけたら、今度はそこから0.5気圧ずつ変えて走ってみましょう。6.5気圧が一番好みだったら、6気圧と7気圧で乗ってみて好みのほうを見つけて、最後は0.2気圧刻みまで幅を狭めていく。そうすれば、自分だけの最適な空気圧が見つかります。
もっとてっとり早く、とりあえずの空気圧を知りたい場合は、専用アプリやサイトを使うというのもひとつのやり方です。体重、バイクの重量、タイヤのタイプとサイズ、目的と走る路面などを入力すれば自動でおすすめの空気圧を算出してくれます。自分の好みとずれることはありますが、目安にはなるでしょう。
最適な空気圧は路面状況やシチュエーションによっても変わる

もちろん、一度好みの空気圧が見つかったからといって終わりではありません。走る場所、バイクの種類、好み、タイヤのタイプとサイズなどによって「最適な空気圧」は変わります。
たとえば走るフィールドが舗装路から未舗装路まで幅広いグラベルロードの場合は、「今日は舗装路メインだから3気圧」、「今回は荒れたオフロードを楽しむから2気圧」というように、日によって調整します。
>> 動画では体重56kgのやすいサンと、体重100kgのおかだくんが具体例を出しながら空気圧を解説しています。ロングライドやヒルクライムではどうしてる? チューブレスの場合は? ナルホド満載の動画をチェック!
費用ゼロでできる「空気圧遊び」で、走りの感度が高まる!

かつて、ロードバイクのタイヤ幅の主流は23~25mmでした。幅がそこまで細いと空気圧を高くしなければパンクしてしまうので、空気圧も8気圧前後と高め。タイヤ幅と空気圧の選択肢が少なかったのです。「とりあえず8気圧」があの頃の唯一のセオリーでした。
しかし最近はロードでも28Cあたりと太くなり、パンクしにくいチューブレスタイヤの普及やグラベルロードの出現もあってどんどん低圧になりました。現代のロード選手はロードレースを4気圧付近で走ることもあるそうですが、15年前なら「君、パンクしてるよ」と言われたことでしょう。
要するに、今はそれほどまでに空気圧の調整幅が広がったということです。そのぶん選択肢が増えて、自分だけの空気圧を見つけるのは難しくなっているかもしれませんが、それこそがスポーツバイクの楽しみでもあります。
機材をはじめなにもかもが高くなってしまった今、タイヤの「空気圧調整」はほぼ費用ゼロでできる遊びです。空気圧の高低で、自転車の走りは驚くほど変わります。ひとまず自分好みの空気圧が見つかったら、今度は前輪と後輪で空気圧を変えてみましょう。
そうして空気圧に意識を集中して感じ取っていると、自然と感度が磨かれて、自転車の挙動や操縦性がもっと深く感じ取れるようになり、自転車に乗るのがもっと楽しくなります。皆さんもぜひやってみてください。
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