2026年がスタートしました! 新しい年を迎え、サイクリストとして気になるのはやっぱりロードバイクの最新トレンド。2026年モデルがズラリと並ぶビッグイベント「ワイズロードスポーツバイクデモ」で、自転車ジャーナリストのやすいサンに気になる4台をピックアップしてもらいました。
①「超本気の中国メーカー」
②「コスパ最強JAPANブランド」
③「極上エンデュランス」
④「男ゴコロくすぐり素材」
一体どのモデルのことなのか? 気になりますね! 2026年におさえておくべきロードバイクはずばり、コレ!
26年の注目株①ウィンスペース「SLC5」

まずはウィンスペースの「SLC5」から。昨年のバイシクル・オブ・ザ・イヤーで見事に大賞を受賞した軽量オールラウンダー、SLC3の後継車が早くも登場しました(この矢継ぎ早のモデルリリースも中国系メーカーの特徴です)。
SLC5は、軽さを重視していたSLC3とはコンセプトをやや変えて、エアロ系レーシングバイクとなりました。

これまでの中国系メーカーの売りは、なんといっても価格でした。欧米メーカーの数分の1という低価格で成長をしてきたわけです。
しかし、このウィンスペースのSLC5はフレーム価格約50万円。ハイブランドのトップクラスと比べるとまだ安価ですが、ジャイアントやメリダといった主力メーカーと同じ価格帯。要するに「安いから」という武器はもう使えません。圧倒的に安ければ、例え走りがイマイチでも「でもここまで安いなら許せる」「コスパなら負けてない」と言えましたが、ウィンスペースは今作SLC5で、主力ブランドと真正面からぶつかり合うことにしたというわけです。
そういう意味で、このSLC5はウィンスペースの真の実力が試される一台と言えます。

このSLC5のコンセプトは「どんな状況にも対応できるレーシングバイク」。ということは、評価ポイントは「どれほどの性能に達しているか」です。
しっかり乗らせてもらいましたが、結果から言うと、純粋な性能は欧米ブランドに並びつつありました。いや、「性能はほとんど変わらない」と言ってしまっていいと思います。

フレーム剛性は非常に高く、低速から高速まで、低負荷から高負荷まで、どんな踏み方をしても驚くほどシャープに加速します。この加速性能はおそらく現状トップレベルです。
でも、それだけではありませんでした。「ただ岩のようにカチンコチンにした」のではなく、「踏める硬さ」「気持ちのいい硬さ」になっているんです。

剛性感に加えて、専用ハンドルを含めた空力性能もトップレベルだと感じましたし、ハンドリングも優秀です。

今回の試乗会にはウィンスペース社の代表である蔡 正昌(さい まさあき)さんも来場しており、「ウィンスペース本社の開発棟のすぐ近くには、バイクを思いっきり走らせることができるルートが整っており、テストライドが存分にできます。私も勤務後によく走るんですよ」と語ってくれました。
その言葉どおり、SLC5の剛性は「シミュレーションソフト上でいい数字を出す」だけではなく、「走れる人が評価をしてきっちり仕上げた結果」という気がします。

かつてジャイアントやメリダは、アジアのOEM工場出身ということで、伝統ある欧州ブランドより下に見られたこともありました。しかし、今やそんなことを言う人は一人としていません。その2社は業界をリードする、押しも押されもせぬトップブランドです。ウィンスペースがそうなる日も遠くはないかもしれません。
26年の注目株②コーダーブルーム「ファーナSL1」

2台目は昨年も取り上げたコーダーブルーム。「昨年も乗ったしな……」と思いながらブースを通り過ぎようとしたら、いい感じのカラーリングの1台が目に留まりました。発表されたばかりの2026年モデル、ファーナSL1です。

価格は15万円ちょいで、リムブレーキ。このカラー(マットガンメタル/カッパーゴールド)は10万円台中盤とは思えないほどの高級感があります。
フレームは、各部に加工が施されたアルミフレームで、メインコンポーネントは2×10速のティアグラです。しかしなんとブレーキキャリパーが上位グレードの105。


かつての完成車では、カタログ写真で目立たないチェーン、スプロケット、ブレーキキャリパーはコストダウンの対象になりやすい部分でした。特にコスト削減幅が大きいブレーキキャリパーは、メインコンポよりグレードが下げられることが多かったんです。
しかし、乗り物の三大性能である「走る、曲がる、止まる」のなかで最も重要な「止まる」を犠牲にするべきではありません。昔はそんな不誠実な完成車を見つけては糾弾したものでした。

しかしこの新型ファーナは違います。「ビギナーが乗るエントリーモデルにこそしっかりと止まれるブレーキが必要だ」と、姑息なコストダウンとは逆に、ブレーキのグレードを上げたのです。
ちなみに、同じフレームでコンポが9速のキューズとなる下位グレード、ファーナSL2もブレーキキャリパーは105です。素晴らしい。

気になったので乗らせてもらったところ、いや驚きました。よく走る。この価格帯のバイクではほぼ不可避だった「何かを引きずるような重さ」「加速の鈍さ」をほとんど感じません。スパッと加速し、ぐいぐいと力強くスピードを上げていきます。
高速巡航性もレベルが高いし、ジオメトリも煮詰められており、タイトコーナーでも手足のように操れます。驚きの性能です。15万円とは到底思えません。

なにより、走るのが楽しい。頭を空っぽにして、ワット数とかケイデンスとかFTPとか、距離とか獲得標高とか、目的地とか「○時までに帰んなきゃ」とか、そういうことを何も考えずに、ただただペダルを踏むのが楽しい。どこまでも走っていきたい。ぶっ倒れるまでペダルを踏み続けたい。そんなことを思わせる、「ロードバイクの原点」みたいな自転車です。

この価格帯のバイクは、「ビギナーが1台目に買う入門車」という見方をされることが多いと思いますが、この出来ならベテランの愛車としても魅力十分です。
「いまさらリムブレーキ?」という人もいるでしょう。しかし、この価格帯でディスクブレーキ仕様にしようとすると、犠牲になる点がたくさん出てきます(快適性、ホイールの重さ、機械式ブレーキキャリパーの引きの重さと制動力不足など)。
この価格帯だからこそ、「熟成されたリムブレーキで軽やかに走らせる」という判断は正しいと思います。

開発を担当された方は、「この価格帯は、“1台目のスポーツバイク”として、ビギナーの方々が初めて手にされることが多い。もしその走りが重かったら、『初めてロードバイクに乗った感動』が薄くなってしまいます。スポーツバイク業界の未来を考えたら、それではいけません。スポーツバイクの魅力に目覚めて、“サイクリスト”になってもらうには、1台目のロードバイクにこそ感動がなければいけない。だからエントリーグレードの完成度が重要なんです」とコメントしてくれました。
思わずはっとしました。まさにその通りです。この価格でここまでよく走るバイクが誕生したことは、業界人として、サイクリストとして、喜ぶべきことです。

このバイクに乗って自転車の魅力を知った何人もの人が本格的なサイクリストになってくれることでしょう。
新型ファーナSL1、たくさん売れてほしいと思います。たくさん売れて、たくさんの人に感動を与えてほしい。心からそう思います。
26年の注目株③キャノンデール「シナプスLAB71」

次はキャノンデールの新型シナプス。用意された試乗車はトップモデルの「LAB71(ラブセブンティーワン)」、200万円を優に超える高級エンデュランスロードです。先の15万円の元気なエントリーモデル、ファーナSL1とは対照的な1台。

エンデュランスロード黎明期に登場したシナプスは、当初は悪路を含むロードレースで使われるレーシングバイクでもありました。しかし、先代となる5代目からレースで使われることはなくなり、シナプスはホビーライダーのための1台として、独自の進化を遂げます。
一般サイクリストに最適な剛性。拡張されたタイヤクリアランス。フレーム各部にはマウントが設けられ、バイクパッキングにも対応します。

前後ライトとガーミンのリヤビューレーダーが統合された安全デバイスである「スマートセンス」も話題を呼びました。レースを頂点とする自転車的ヒエラルキーの頂点をあえて切って捨て、一般ユーザーにターゲットを絞り、それにぴたりと焦点を合わせた設計と走りを持ったバイクでした。
6代目となる新型もキープコンセプト。フレームの形状と積層を工夫し、エンデュランスロードの本懐である快適性を向上させつつ、高い剛性と高速クルージングを邪魔しない空力性能をもたせているといいます。

タイヤクリアランスはグラベルロード並みの42Cまで広げられました。公式サイトでは、「通勤や週末ライドはもちろん、挑戦的な超ロングライドまで幅広いニーズに対応するバイクに進化しました」と謳われています。

スマートセンスも第2世代へ進化。前後ライトやリヤビューレーダーに加え、スラムのバッテリーにも電力を供給する仕様となりました。スラム仕様車では充電するバッテリーが1つになったというわけですね。これぞ“スマート”です。

200万円を優に超える高級エンデュランスロードですが、走りもまさに高級車のそれ。ペダリングフィールはどこまでも滑らかかつソフトで、伝わってくる振動は丸みを帯びており、巨大なビーズクッションに身を委ねている気分です。
しかし、どうも流れる風景がそんな感覚と一致しません。ゆったり走っているつもりなのに、景色がびゅんびゅん流れていきます。

実はここが新型シナプスのキモです。走り自体は結構シャープなんです。鋭く加速し、高速巡航性もいい。でもエンデュランスロードらしく、フレームの剛性はマイルドで、快適性も高い。そんな二面性のある自転車です。

速いレーシングバイクはもう当たり前。快適なエンデュランスロードも当たり前。今や「ただ性能がいい」というだけでは、200万円オーバーの価格を納得させることはできません。
キャノンデールは、トップチューブやシートチューブを極端なまでに薄くし、極太ダウンチューブで剛性を確保し、専用ハンドルで高い空力を与えて、エンデュランスロードにレーシングバイクのエッセンスを注入したのでしょう。

結果として、「硬く鋭くあって欲しいところはちゃんと硬く鋭く、柔らかく優しくあって欲しいところはちゃんと柔らかくて優しい」という印象のバイクになりました。
新世代の高級車としていい出来だと思います。
26年の注目株④パナソニック「FRTD05」

昨年の記事では最後にチタンバイクに乗りましたが、今年も気付けば最後にチタンを選んでいました。
パナソニックサイクルテックのスポーツバイク部門であるPOS(パナソニック・オーダー・システム)は、今となっては少数派であるスチールフレームとチタンフレームのみをラインナップする珍しいマスプロメーカーです。しかもそれらを自社工場で作り続けるという、真のメイド・イン・ジャパンを貫いています。

しかし、よく考えてみるとこれは不思議です。世界的な大企業であるパナソニックのグループ企業であり、シティサイクル部門では電動アシスト自転車のリーディングブランドなのだから、スポーツバイクカテゴリでも、現代の売れ筋であるカーボンフレームをラインナップするほうが自然です。ここまでスペックが重視される時代に、重い鉄フレームと高いチタンバイクしか持っていない。
一体なぜでしょう。

「金属フレームはフレームサイズをたくさん用意しやすく、結果としてお客様の体にフィットしたバイクを提供することができます。また、スチールやチタンは、一般のサイクリストにとって重要となるしなやかさと堅牢性を兼ね備えた素材です。さらに、万が一大きな衝撃が加わっても、スチールやチタンは一気に破壊することが少なく、安全性が高い素材でもあります」と教えてくれたのは、同社で開発に関わる担当の方。
それはもちろん理解できますが、それらのメリットはいずれも商品力には結び付きにくく、バンバン売れるような商品にはならないでしょう。クールなビジネス論が大手を振るこの時代、失礼を承知でいえば、「スポーツバイク部門は儲からないなら止めてしまおう」という判断が下されても不思議ではありません。

「当社は『心躍る楽しさ』というキーワードをヴィジョンの1つとして掲げ、『自転車の楽しさを提供すること』を目標としています。その達成において必要なのは、軽快車ではなく、やはりスポーツバイクなんです。売上比率としては小さくとも、スポーツバイクの製造はやめません」担当者はそう続けます。
こういった理想論を貫ける贅沢な環境にあるのがパナソニックサイクルテックというメーカーなんですね。

そんなパナソニックが数年間という開発期間を経て発表したフラッグシップ機がこのFRTD05。ものを見ると、まあ手がかかってます。ダウンチューブとシートチューブには複雑なバテッド加工(3Dオプティマム・Xバテッド)が施されており、ただのチタンフレームではないことを主張します。そこいらの工場ではこんな加工は不可能です。

しかも、同じFRTD05で剛性の異なる2タイプ(高剛性のバージョンH、しなやかなバージョンL)を用意しています。フレームサイズは圧巻の16種類。しかも、カラー・デザインのオーダーも可能。自転車業界も「SKUを減らす(できるだけ商品数・バリエーション数を減らして効率よく商品管理する)」という流れにある中で、真逆を向いたモデルです。
売り上げだけ、商売だけ、ビジネスだけを見るならば、決して誕生しなかった自転車。それがこのFRTD05です。
走りはチタンフレームの伝統に則ったもの。しなやかでばね感のある剛性感。振動の減衰が速い優しい乗り味。疲れにくくスムーズなペダリングフィール。試乗したのはバージョンHでしたが、高剛性版とはいえガチガチではなくてペダルが回しやすい。チタンらしいオーガニックな感じと、肉薄チューブらしいパリッと感の絶妙なバランス。ディスクブレーキになって剛性は上がりましたが、チタンらしさは健在です。

でも残念ながら、このこの「チタンフレームならではの味わい」を理解し、愛する人は少数派でしょう。ビジネス的にも、性能的にも、理論・数字だけでは理解できない存在。それがパナソニックのチタンフレームです。
でも、こういうモデルがあるからこそ、スポーツバイクの世界は彩り鮮やかになるんです。人が「試験の点数」だけで全て判断されるようになったら、そんな殺伐とした世界は嫌でしょう。スポーツバイク界に潤いを与えてくれるのが、このような自転車なんだと思います。
4台4様。多様性の2026年は自分に合ったモデルが見つけやすい!

今回は結果的にどれも性格やコンセプトが異なった4台になりました。
高価格化に対抗した高性能モデルあり、いい走りを目指したリムブレーキのエントリーグレードあり、競わない高級車あり、独自の価値と理想を追求した一台があり。
かつては、ロードバイクといえば「レースをするための乗り物」の1種類でしたが、今は会場で目についたモデルを選んだだけでもここまで多様になりました。選ぶのが難しくなったとも言えますが、自分の目的に合ったバイクを見つけやすくなったとも言えます。
いずれ、この多様化の流れは勢いを失い、いくつかのカテゴリが統合されることになると思いますが、少なくとも2026年はまだまだこのように様々なバイクが市場を賑わせてくれるでしょう。今年も楽しい1年になりそうです。
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