こんにちは、現役メカニックの「ののむら」です!
自動でギアが変わる……クルマの話? え、自転車で? そんな時代がとうとうやってきました。今回紹介するのは、シマノが新たに打ち出した自動変速システム Q’AUTO(クォート) です。
自転車側がヒトの走りを感知し「最適なギア」 を自動で選択してくれるって、一体どうやって? クォートの仕組みやオートマ変速のメリット、実際に試してわかった「気になる点」、さらにはクォート搭載の完成車まで、現役メカニックの視点でじっくり解説していきます!
Q’AUTO(クォート)とは?

クォートは、シマノが2024年に発表した「電子制御型オートマチック変速システム」です。難しい単語が並びますが、要は自転車が自動で変速してくれる「オートマチック変速」です。
ハブの内装ギアユニットに搭載されたセンサーが、サイクリストの乗り方を感知してリアディレーラーを動かし、自動で変速させるという仕組みです。


ハブが脳みそで、リアディレーラーが手足とでもいいましょうか。適切なギアを判断するためのセンサーは、なんと3つも内装されています。
- ケイデンスセンサー:ペダルの回転速度を計測
- 速度センサー:スピードを常に把握
- 傾斜センサー:坂道や勾配の情報を読み取る
これらの情報をもとに電子制御ユニットが「今頑張って踏んでるから重いギアだ!」「坂道だね、軽くしよう!」と瞬時に判断し、リアディレーラーを操作します。
充電要らず、AI学習で最適化

「自動で」なんて聞くと、バッテリーが必要で、毎回充電しないといけないのかぁと思いますよね。クォートはなんと、ハブに内蔵されたダイナモで自己発電します。ダイナモとはホイールの回転を利用して発電する機構のこと。つまりライド中に、ハブ自身で発電して、必要な電気を蓄えることができます。漕げば漕ぐほど自然に充電されていくため、充電要らずなんです。なんて便利な仕組みなんだ!

ふと思い立ってサイクリングに出たときに、充電切れで変速できないなんて元も子もないですからね。ハブダイナモ給電というチョイスはかなり嬉しいポイントです!

さらに、変速精度もAI学習により最適化することができます。クォートは、オートマ変速をオフにして自分でギアチェンジができるワイヤレスシフトスイッチが用意されています。ワイヤレススイッチは標準装備されていたり、レンタル方式だったりメーカーによって異なりますが、このワイヤレススイッチを使って最初に自転車を「調教」することができるんです。
手動変速ができるワイヤレスシフトスイッチで、いつものように自分のタイミングで変速させながら走っていくと、クォートが「この速度、この傾斜、ケイデンスだとギアをこうやって動かすのね、了解!」と変速のクセを学習します。乗れば乗るほど、オートマ変速がどんどんパーソナライズされていくのです。

変速パターンはじつに6500を超え、この「調教」自体も30分も乗ればクォートが自分の変速タイミングにあわせてきたなと実感できます。まるで自転車を育てているような感覚があり、これは従来の機械式・電動式とはまったく違う楽しみ方です。う〜ん、ネオテクノロジー!
オートマ変速のメリットとデメリットは?

そもそも「オートマ変速」は自転車にとってどんなメリットがあるのでしょうか? 私が思うに、その核心はサイクリストの「判断負荷を減らせる」点にあります。
たとえばストップ&ゴーの多い街中では、変速って気づかないうちにちょっとしたストレスになっています。信号の停止直前で「あ、軽くし忘れた!」と思ったときにはもう遅く、重いギアのままゼロ発進……、あるあるですよね。
こうした細かな判断や操作が積み重なると、知らず知らずのうちに走りのリズムが乱れたり、ムダな疲労につながったりします。
クォートのオートマ変速なら、状況に合わせて最適なギアが自動で切り替わるので、停止や発進が多い場面でもペースを崩しにくく、走り全体がスムーズに。
実際に私も試乗車でしっかり乗りこんでみましたが、「ブレーキ操作だけでOK」というシンプルさは想像以上に便利だと実感しました。仕事帰りなどで疲れているときに「考えなくても変速してくれる」、このラクさだけでクォート搭載車が欲しくなってしまったほど!

変速に不慣れでもギクシャクした操作にならず、一定の軽さで気持ちよく走れるので、スポーツ自転車が初めてというビギナーにとってもメリットになるでしょう。
そしてメカニックからすると「チェーンやスプロケットの負荷が均一化される」というのも見逃せないポイント。無駄な変速操作が減るのでギアにかかる力も偏りにくくなり、摩耗を抑えられます。結果としてパーツ寿命が延び、メンテナンス性の向上にもつながるわけです。
実際に乗ったからわかった「ちょっと気になる」点

AI学習を搭載した次世代システムとなるクォート。これまでにない大きなメリットがある一方で、登場したばかりのシステムということもあり、正直「ちょっと気になる」点があるのも事実。カタログやスペックだけでは見えてこない体感の領域をお伝えしておきましょう。
「あとちょっと」のズレ
気になった点はズバリ、「ベストなギア」がほんのちょっとだけズレるシーンがあったということ。クォートが判断した最適解と、ライダーの「体感的なちょうどよさ」がわずかにズレることがあったんです。

具体的には、坂の途中でギアが軽くなりすぎたり、試乗後半でやや疲れが出始めたときに、ちょっとだけギアが重く感じたり。
- その日のコンディションや疲労具合
- 路面の急な変化
- ライダーの“いま”のペース意図(少し踏むのか、流したいのか)
このあたりの体感の機微までは読み取れない、「あとちょっと」のズレはたしかに存在しました。
ただオートマ変速がズレるなと感じたら、ワイヤレスシフトスイッチを使ってマニュアルモードにすることも可能ですし、スイッチが搭載されていない場合でもリアディレイラー本体のボタンを押して、あらかじめ設定された3つの変速モードを切り替えることもできます。 「ゆっくり」「中間」「速い」の3つから選べるので、そのときにちょうどいいモードを探してみるといいかもしれません。
このように「完全にAI調整のみ」でなく、状況や体調に応じた手動調整の余地があるのは大きな安心材料です。
クォート搭載の自転車2選
市場投入されたばかりのクォートが搭載された完成車はまだそれほど多くありませんが、2025年12月現在リリースされている車体の中から2台、ご紹介します。
ちなみに私が試乗したのはどちらでもなく、ショップが独自に組んだクォート搭載クロスバイクでした。クォートをフレームからバラ完で組み上げるのは普通のコンポ以上に専門知識と技術が必要なので、完成車を買うのがおすすめです!
1. NESTO(ネスト)オートメイト

国内向けにクォート搭載モデルとして最初に発表されたクロスバイクです。変速段数は10速(1×10構成)というスペックで、街乗り/通勤用途を想定し、クォートの良さがもっとも活きる領域をしっかり押さえた一台。車体重量10.75kgという軽さも見逃せません。
ケーブル内装、スタイリッシュなルックスと、クォート搭載車としてふさわしい先進的な仕様も魅力。 ペダルを回すだけでギアがサクサクと変わる快感を、まずはこのモデルで存分に味わってみてほしいところです。
価格:198,000円(税込)
Ghisallo(ギザロ)GA-30 アロイオールロード クォート

クロスバイクよりスポーティに走りたいならこちら。オールロードバイクとして、アルミフレーム+カーボンフォーク構成のギザロ『GA-30』にクォート搭載バージョンが登場しました。 変速を自動化することで走りに集中できるクォートのメリットを存分に活かしたコンセプトになっています。
オールロードらしく「舗装だけじゃなくちょっと荒れた路面も走りたい」「路面状況がひんぱんに変わるから走りに集中したい」「変速ミスでリズムを崩したくない」なんて人にもぴったりですね。
個人的にもグラベルライドとクォートの親和性はとても高いと思っていて、荒れた路面でもブレーキレバーから手を離すことなく自動で変速してくれるのは大きなメリットになりますよ!
価格:
Q’AUTO/変速スイッチなし(機械式ディスク):218,900円(税込)
Q’AUTO/105Di2 STI(油圧ディスク):275,000円(税込)
オートマ変速は次世代のスタンダードになるか

メカニックとして日々たくさんの自転車を触っていますが、クォートのように「変速という概念」を根本から変えてくるシステムは衝撃でした。どのギアに入れるかを考えるのもサイクリングの一部でしたが、クォートはその時間をまるごと走りに還元してくれます。
ヒトの感覚と完全一致するのはまだ少し先の未来かもしれませんが、AI学習によって自転車が自分の走りを理解し、少しずつ相棒になっていく感覚は、自転車乗りとしてもメカ好きとしても本当に面白い!
今や電動変速やE-バイクが当たり前になっているように、自転車のオートマ変速も近い将来スタンダードな機能として広がっていくことでしょう。未来の自転車がどんな進化を遂げるのか、これからもますます目が離せません!
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