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今回のテーマは「中国と自転車」

家本 こんにちは、クララグループ代表の家本です。このポッドキャストでは、リユース自転車の買取販売『バイチャリ』、シェアサイクルの『チャリチャリ』、自転車ブランド『wimo』に自転車ライト『ガシロン』と、いろんな自転車の仕事をしてる私、家本が自転車トピックのギリギリのセンを好き勝手にしゃべっていく番組でございます。
今回の収録は4回目、続いてる!(笑) 今日もおかだくん、よろしくお願いします。
おかだ はい、自転車技士で声優の「おかだまさたか」です。今回も一般サイクリスト目線でお相手させていただきます。

おかだ さて、今回のテーマはなんでしょうか。
家本 今日はですね、「中国と自転車」!
おかだ おお……。僕、中国の自転車事情まったく知らないですよ。
家本 「中国と自転車」というと、多くの人たちにまっさきに言われるのは、7〜8年ぐらい前のシェアサイクルの光景。よく日本のテレビで出てた、自転車がゴミの山のように積み上がってるっていう、あの姿。あれが「中国の自転車」って言われることが多くて。
僕はですね、この話を聞くたびに苛立ちを覚えている! お隣である中国の情報をどれだけキャッチアップできていないのかと! もちろん一般の人はしょうがないんだけど、自転車業界の人でもお隣の国の話を全然アップデートしていない。
おかだ やばい、これ僕、怒られるやつだ(笑)
家本 最初からエンジン全開でぶっ飛ばしていきますよ(笑) 今日話したいのは2つ。シェアサイクルの話と、自転車がつなぐ日本と中国の歴史の話です。
シェアサイクルの話はどうしても熱くなりすぎちゃうんで、まず歴史の話から。事前の打ち合わせも何もなくいきなりぶっこむんだけれど、おかだくん、「中国と日本の自転車の歴史」と言われたらどんなキーワードを想像しますか?

おかだ キーワードっていうと難しいですね……。僕の中国のイメージはもう、それこそあれですよ、でっかい広場を自転車がわーっと大量に走ってるあのイメージ。
家本 でっかい広場ね、天安門広場だ。
おかだ あ、コレ言って大丈夫なやつ?
家本 「天安門広場」だけなら大丈夫(笑)。何月何日とか具体的なことは言ってはならないっていうね、中国では検索できないから。
おかだ 「攻めるギリギリ」の違うポジションを攻めちゃってません?(笑)
家本 大丈夫かな(笑) とにかく、北京の建国路(けんこくろ)や長安街(ちょうあんがい)っていうすっごい太い道路を、自転車が銀輪部隊のように走ってく光景ね。ほかに何かイメージある?
おかだ そうですね、最近のイメージで言うと、スポーツバイクはものすごく中国が力をつけている印象がありますね。
家本 そうだね。中国のロードバイクブランドがどんどん出てきてる。

おかだ そうなんですよ。いちユーザーとしても欲しいなって思うものがかなり増えてきてるんですよ。
家本 これは間違いなくて、なぜかって、じつはかなりの比率のグローバルな自転車ブランドが中国で作られてるわけですよ。みなさん、アメリカのブランド、ヨーロッパのブランドって思ってらっしゃるかもしれないけど、中国の工場に行ってみたら、みなさんがよく知ってるブランドの自転車がどんどん流れてくる。OEMで、あれもそれも、あぁこれもか!みたいな。「よく考えてみたら、あそことあそこのデザイン近いよな」「いや、じつはね、作ってるところが同じなんです」なんていうふうに。

家本 まさに世界の工場なんですよね。さすがにブランド名はズバリ言えないんだけど、台湾の有名自転車ブランドの製品も、じつは中国で生産されているものがある。日本の町で一番よく見るあのモデルも、じつは中国大陸で作ってるわけです。
おかだ なるほど。ブランドとしては台湾だけど、製造してる場所は中国。
家本 そもそも世界の3大自転車製造拠点、アメリカとヨーロッパはいったんのぞいておいて、大きく見てみると「中国大陸」「台湾」、あとはね「カンボジア」。
おかだ カンボジアですか。
家本 カンボジアも、中国メーカーや台湾メーカーがたくさん生産拠点を置いていて、正確に言うと最後のノックダウン*で組み上げということなんだけど、これはなんでかっていうと、EU向けなんですよ。
*)ノックダウン方式:完成品ではなく、部品の状態で輸送し現地で組み立てる方式のこと。輸送コストや関税の削減を目的として、クルマや家具などで広く採用されている
アンチダンピング関税っていって、台湾や中国から直接送ると関税がめっちゃかかるんだけど、間にカンボジアをかますと、EUの関税が安くなる。中国とカンボジアは陸路で越えていけるんで、物流も難しくないと。そういう背景もあったりするんだけど。
中国の自転車産業の原点は、じつは日本人だった!?
家本 で、話がそれちゃいけないから、ここで今日の一番大事なキーワードとなる「1936年」。1936年に、ある日本人が中国の天津(北京から南東約120kmに位置する都市)に自転車を持っていって工場を始めたっていうのが、中国の自転車のスタートだと言われているんですよ*。
*) 1936年に小島和三郎が設立した「昌和工廠」での自転車製造が中国国内初の量産だと言われている
おかだ そうなんですね。それまでは中国には(自国の)自転車はなかった?
家本 そう、輸入物しかなかった。自転車自体は存在してたけど、作ってなかった。アメリカの人やヨーロッパの人たちが持ちこんだものだった。そもそも自転車の歴史は150〜200年という世界だから、じつは大した歴史があるわけじゃない。この天津に自転車を持って行ったのだって、たった90年前ですよ。
この時代の天津は日本軍の強い影響下に置かれた時代なので、日本の人たちの往来もたくさんあったわけですよね。その後、1945年に第2次世界大戦が終わり、中国では国民党と共産党による内戦が続きます。そして最終的には国民党が台湾へ移り、中国共産党が政権を握ることになる、と。

家本 つまり、中国の自転車産業ってもともと日本の歴史が少し関わってた。日本の人たちが関わっていた工場で、戦後の政権交代の中で管理主体も変わりゆき、国営企業の民営化という大きな流れの中で民営化されていく。
だから、日本の自転車メーカーのOEM工場って天津にたくさんある。今、日本のホームセンターとか、大手のチェーンさんとかで並んでるやつ、かなり天津で作ってます。
おかだ そうなんですね、知らなかった!
家本 今から90年前に日本の人たちと中国の人たちが手を取り合って自転車を作り始めた、その歴史が脈々と続いてるんですよ。
だからね、お互いケンカする相手とかそんなんじゃないと。お互いとっても大事なパートナーとしてやってきたって前提があるわけなんですが、これを話し出すともうこれだけで1時間かかるから、いったんやめといて。
なぜ「自転車の墓場」が生まれたのか
家本 そういうつながりの中、日本と中国の自転車産業はお互い学び合ってきたことがたくさんあったんだけど、直近の中国の自転車っていったらシェアサイクルじゃないですか。おかだくん、中国のシェアサイクルとパッと聞いて、何色のものがイメージできますか?
おかだ 中国のシェアサイクル事情、全然わかんないな。僕、どうしたってシェアサイクルは赤のイメージが強いんですけど……。
家本 それは我々のチャリチャリなのか、ドコモバイクシェアさんの赤色なのか、どっちなのかはっきりさせてほしいところだけど!(笑) 中国のシェアサイクルっていうと?
おかだ 全然わからない、何色なんですか。
家本 これはね、一番メジャーで圧倒的に数が多いのは「黄色」なんですよ。もともとオレンジ色のモバイクっていうシェアサイクルがあって、一時期日本にも進出してたんだけど、ここが途中でダメになっちゃって。それで、そのあと美団(美团/Meituan/メイトゥアン)って、日本でいう食べログみたいなグルメの検索サイトをやってた人たちが買収をして、これが圧倒的なわけ。

家本 町のそこらじゅうに黄色い自転車がある。じつはちょっと前に、その黄色い自転車を作っている工場にも潜入してきたんだけど、これがスゴイの。彼らは完全オリジナルの自転車を、工場に委託して作っているんだけど、めちゃくちゃ出来がよくって。細部に至るまで、本当に丁寧に指示出ししている。耐久性の試験もそうだし、製造工程の一つひとつが素晴らしいな、と。
で、それ以外にもうひとつofo(オフォ)っていう、これも黄色い自転車だったんだけど、このサービスも一瞬だけ日本に来たの。ちょっと話が逸れるんだけど、北九州とか、滋賀県の大津市とか、和歌山とかに中国のシェアサイクルが来ていた。ただ、これが突然いなくなったんです。
おかだ それはまたなんで?
家本 中国側で会社がダメになっちゃった。で、その後、自転車がどうなったかっていったら、放置されたままだった。
おかだ えっ、回収されない!?
家本 そう、だから町の人たち大迷惑! このあいだ、滋賀の大津で、僕がやっているチャリチャリってシェアサイクルの展開を始めたんですけれど、そこでみんなから言われるのは「家本さん、何年か前に中国の人たちが来て、大変だったんだ」と。
ハイ、もうよく知ってます、あの黄色い自転車ね。そのまま置いてっちゃってましたね、って。なんなら僕、そのあと大阪のとある中古の自転車屋さんに行ったら、その自転車が売られてるのを見たんだから!
おかだ どこから流れてきたんだろう(笑)
家本 どうやって流れてきたかは細かくは知らないけど、放置自転車になったあとに行政に回収されて、また出てきたのかな。とにかく中古の自転車屋さんで「ofo」のロゴ入り自転車がそのまま売られてるんだよ。びっくりしちゃったもん。
おかだ これって日本だけの話なんですか?
家本 じつは当時、フランスとかスペインとかヨーロッパのいろんな国で、中国のシェアサイクルの会社が進出していたんですよ。ただこれが全部失敗しちゃったんだけど、そのまま現地でやりたいっていう人たちがいたから、ヨーロッパではその頃のDNAが今も残ってたりする。
とにかくその2つ(モバイクとオフォ)がダメになっちゃって、このときにテレビでよく映った「自転車がゴミの山のように積み上がってる光景」っていうのを、日本の人たちは見たわけです。

おかだ あー、なるほど。で、そのイメージがついてしまったと。
家本 そう。だから「中国のシェアサイクルはもうダメだ、あんなので大丈夫なのか」という話になってたんだけど。
ところがどっこい、コロナで日本の人たちは中国に行く機会がほとんどなかったから、そのあとは見てこなかったじゃないですか。その間に、中国ではどんどこどんどこシェアサイクルが伸びていったわけです。

家本 このときにはもうあらゆる色、オレンジ色とか黄色とか青色とか黄緑とか、もちろん赤もあったり、1色じゃ足りないってなって赤と白もあったし、しまいにはレインボーカラーまで出てきたりして。いろんなカラーが出てきた。なんだけど、淘汰されて今は3つの会社*だけ。
*)Meituan(美団単車)、Hellobike(哈囉出行)、Didi Bike(青桔単車)の3社
3社に集約されたあとは、ちゃんとそれぞれが各省とか各市とコミュニケーションを取って、「じゃあ君たちは北京市の中に◯台しか置いちゃいけませんよ」「上海市の中には◯台しか置いちゃいけませんよ」っていうふうに総量規制を守ってコントロールをしてる。あとはジオフェンス、つまりGPSの情報を使って「どこに置いてもいいか」「どこは置いちゃいけないか」っていう管理もしっかりすると。
中国は「まずいったんやらせてみる」スタイル

家本 こういう流れになった背景には日本と中国の社会環境の違いもあって。中国はいったん自由にやらせるんですよ。みんなにぶわーっと大きく間口を開けて、どうぞ自由にやってと。規制はそんなにしませんと。やってるうちに問題が見えるじゃん。これはやっちゃいけない、あれはやっちゃいけないっていうのがわかってくる。そしたら、だんだん「このルールを作った方がいいね」っていうふうに門が閉まっていくんです。その門を通り抜けてこれた人たちだけが、この先続けてもいいと。
おかだ なるほど。日本と真逆じゃないですか? 日本だと先に発生しうるであろう問題点を出しといて、問題が発生しないように運営するようなイメージがあります。
家本 そう。でもね、イノベーションの加速を考えたらどっちがいいか。まず穴をぜんぶ潰して落とし穴はないよねってやってると、いざ始めたときには世の中もうトレンドが過ぎてしまってる。慎重になりすぎて。
でも、中国にはシェアサイクルが必要だったんですよ。たとえば北京も上海も、今から10年ぐらい前まで、モータリゼーションの波が一気に押し寄せて、クルマがもう大渋滞。ナンバープレートの末尾1桁で「このクルマはこの曜日は走ってOK、この曜日は走っちゃダメ」ってコントロールされるなんて、日本じゃ想像できないでしょ。
それくらいクルマが増えました。環境問題もあります。さらに、駅と駅の距離がけっこう長いから、「ワンブロック先」が軽く2kmだったりするわけ。東京じゃ考えられないでしょ。ここを自転車がね、シェアサイクルがうまく埋めてくれたんですよね。
おかだ インフラとしての必要性ですね。
規模感は圧倒的!「負けました」
家本 中国のシェアサイクルはもう今、年間で4億とか5億回使われてるんじゃないかな。
北京だけでもとてつもない量。売り上げ規模でいうと、単独の都市としてはニューヨークが圧倒的で、年間400億円以上売り上げてる。シェアサイクル事業だけで400億円。日本のシェアサイクル全部合わせてもそこまでなりませんよ。
おかだ えっ、ニューヨークだけで?
家本 ニューヨーク市だけで。ところがね、回数で見たらダントツ中国なんですよ。あの人たちはもう抜けない! 圧倒的な回数使われることによって、タイヤの空気を入れるのが大変だからと一時期エアーからエアレスのカチコチタイヤになったこともあったしね。

家本 でも最近またエアータイヤに戻り始めてる。たぶんスポークの耐久性とかホイールの傷みとか、(快適性以外に)そういう理由もあると思うんだけど。いろんな人が乗る環境の中で、それでも空気のコントロールをした方がまだいいよねという流れがあったりした。
それから僕、すごく感激したのが「合いマーク」。よくいろんな工事現場とか金属の加工の現場とかで、ボルトとナットのところにマジックで斜めに線を打ってあるの、わかるかな。

家本 電車に乗るときに、反対側のホームに来る電車の車輪を見てみて。合いマークがついているから。
おかだ あ〜、わかります。緩んでいると、その線がずれるんですよね。
家本 そうそう! 普通の自転車には合いマークがついているものってそうないけど、中国のシェアサイクルは製造の段階から全部この合いマークがついてる。緩んでいるところがないかどうかがすぐにわかるようになっている。それはつまり(過去に)緩んで何かがあったってことだよね。だけど、じゃあそれをどうやって良くするかってときに、そういう合いマークをつけるってテクニックが反映されてるんですよ。
おかだ 昔、ママチャリを販売してたころ、ごくたまにハブに合いマークがあるのを見たことがあります。
家本 そうなんだ! でもこれね、すっごい大事なこと。だって、すべての自転車の点検を人の目で完璧にできるかって、そんなに簡単じゃない。パッと点検しなきゃいけない場面もある中で、こういうナレッジがあるのはすごいなと思いましたね。それに乗りやすさも本当に良くなった。この5年ぐらいで中国のシェアサイクルはめちゃくちゃ良くなった。
だからね、現地でちゃんと見てほしい。乗りに行ってほしい。今の中国のシェアサイクル、乗らずして語ってはいけない!
おかだ そう言われると、僕もちょっと乗ってみたいですね。家本さんの力で1台持ってこれないんですか。
家本 昔ねー、持ってきてたんだ! もちろん走ってるのをパクってきたんじゃなくって、中国の工場でシェアサイクル用に作っている自転車をいただいて、昔のオフィスでは受付に飾ったりしてたんだよ。
★
家本 あとは中国の自転車工場の現場の話。さっきの黄色い自転車の工場に行ったときに、あたり一面、黄色い自転車で埋め尽くされている。製造ラインが何本も同時に動いてるんだよ。
おかだ やっぱり中国、デカイ!
家本 チャリチャリが1年で発注する量を半日ぐらいで作るの、たまんないでしょ(笑) ちょっともう規模感がね、「負けましたー!」ってなっちゃう。実際に目の当たりにするとなおさらね。
いや、なんでこんなことを言い出したかっていうと、とある原稿の下書きを見せていただいたことがあって。最新の中国のシェアサイクル事情を書かれた原稿だったんだけれど、今の最新の状況が反映されていないまま、なんなら、実際にご覧になられたかどうかもわからないような伝聞の情報がベースになっていて、僕は大変悔しかった。

家本 別に僕は中国が好きだ嫌いだとかを言ってるんじゃなくて、やっぱりリアルなものを見て語らなきゃいけないというのはさ、自転車乗りなら鉄則でしょ?
おかだ 実際に乗らないとインプレできないですからね。
家本 だからみなさんも、僕がこうやってお話してることでわかったように思っていただくんじゃなくって、ネットの情報だけじゃなく、実際に中国に行って乗りに行きましょう!ってことです。
次回はアメリカ編!

家本 ここまで聞いていただきありがとうございました! 今回の中国の自転車の話についてのご意見、ご感想、それから「こんな話をしてほしい」というテーマのリクエストなんかもいただけたら大変嬉しいです。投稿フォームから気軽にコメントをお寄せください。
そして次回は、舞台をアメリカへ移してお届けします。
自転車を巡る話、たくさんまだまだしていきたいと思っていますので、またお会いしましょう!
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