大阪に行くと、なんだかやたらと自転車が多い気がする。東京の一等地「表参道」ではあまりママチャリを見ないけど、大阪の一等地「御堂筋」はママチャリで走ってる人がめちゃくちゃいる。
そういえばあの有名な自転車企業のシマノやあさひも本社は大阪。
大阪ってなにやら独自の自転車文化がありそうだ。
今回はそんな大阪の自転車事情を、大阪出身の人気Webライターのヨッピーさんに教えてもらいました! 今やすっかりパパのイメージが定着してきたヨッピーさんですが、奇抜なオモシロ企画をやったかと思えば社会問題にも切り込むなど、かつてはインターネットチンピラとして名を馳せた存在。そんなヨッピーさんが、大阪の自転車シーンの現状に斬り込みます!
大阪、変わりすぎじゃない?
こんにちは。ヨッピーです。
写真は梅田の名店「はなだこ」でたこ焼きを食べる僕。大阪出身で現在は東京に住む、2児の父でございます。
就職して以来東京に住んでいるのですが、いかんせん大阪が好きすぎるので二か月に1回くらいのペースで帰っております。
あの梅田がオシャレタウンに変貌しているだと…!?
先日大阪に帰ったときは、「話題のグラングリーン大阪でも見てくか~」と思って梅田駅周辺をブラブラしていたのですが、その変貌ぶりに腰を抜かすかと思いました。
梅田なんて「百貨店、酔っ払い、風俗の街」って感じだったのにとんでもない進化を遂げております。
高校2年の夏休みあけ、突如金髪にしてきて速攻で生徒指導室に連れてかれた陰キャの木村くんを思い出してしまいました。
スーツを着た人達がたくさん。
僕「あれ、酔っ払いのおじさんは!? 酔っ払いのおじさんはもういないの!?」
神様「ぼうや、酔っ払いのおじさんは東通商店街にまだたくさんいるよ」
僕「そっかあ!酔っ払いのおじさんはまだたくさんいるんだぁ! よかったぁ! 酔っ払いのおじさんがまだたくさんいて良かったなぁ!」
神様「でも、この辺の酔っ払いのおじさん達はもう絶滅してしまったかもしれないね」
僕「そ、そんなぁ……。酔っ払いのおじさん……、酔っ払いのおじさんーーーー!!」
みたいな事を考えながら「梅田ってこんなだっけ……?」と頭を抱えて地面をゴロゴロ転がりそうになりました。
なんだこのオシャレな階段は。デカいダイソンのドライヤーかと思った。
歩いてるだけで近未来感がハンパなく、「ぼく、この階段に住みたい!」とついつい絶叫してしまいました。
そんなこんなで歩いているうちにだんだん「梅田」という街にケンカを売られてるような気持ちになりましてね。「なにぃ~! ワイは生粋の大阪人や! 大学生の頃は散々この梅田に通ってたんだから多少変わったところでへいちゃらだい!」
みたいなテンションで地上を歩いてて、気付いたら何故か地下にいたり、知ってる角を曲がったはずなのに見たことない道に出たりで普通に迷子になって泣くかと思いました。いったい何が起こったんだ……!
そんなわけで梅田がなんか先進的なオシャレタウンに変貌しつつあってパニックになりそうだったので、「この機会に大阪のあちこちを歩いてみよう」と心斎橋や難波・日本橋(にっぽんばし)らへんもあれこれ歩いてみたのですが、そのときに気付いたんです。
「あれ?なんか道が広くない?」って。
ちなみにこの写真は日本橋のいわゆる「オタロード」らへんなんですが、なんかスッキリしているような気がして、最初は「なんか変わったような気がするぞ?」という違和感の原因に気が付かなかったんですけど、あちこち歩いているうちにピンと来ました。
「あ、放置自転車が全然無いからだ!」
って。
そうなんですよ。
オタロードのこの辺って、もともとは道沿いに鬼ほど自転車が停められてて、その分だけ道が狭かったのに、今ではなんか広々としよる!
そしてこれは難波駅すぐそばの歩道。
相変わらず自転車がたくさんあるとはいえ、ちゃんと駐輪場に停めてあるので綺麗に並んでる……!
この辺もかつては自転車が山ほどゴチャゴチャしてたのに……!
「あの」大阪人が自転車を放置しなくなっているだと……?
これは何かが起こってるのでは……!?
大阪には独特な自転車文化がある
と、大阪の自転車の実態を探る前に、大阪独特の自転車文化について書かせてください。
じゃん。
こちらは大阪に住む僕の母親が愛用しているママチャリです。
僕の母親はこれに乗って毎日ライフだの近鉄百貨店などに元気よく出かけているわけですが、よくよく見ると変なものがくっついてる事がわかります。
例えばこちら。
こちらは自転車用の傘スタンドで、大阪では「さすべえ(※)」という名前で広く知れ渡っているアイテム。
このアタッチメントが傘をホールドしてくれるので、「傘をさしたまま自転車に乗れる!」という画期的な商品です。
雨の日? 大阪のオバチャンに天気は関係無ぇんだよ!
※さすべえ……「さすべえ」という名前は株式会社ユナイトが販売する商品の名前ですが、類似商品も全部ひっくるめて大阪のオバチャンは「さすべえ」と呼ぶので記事中の呼称も「さすべえ」で統一しております
しかしながらこの「さすべえ」を大阪以外の地域で見ることはほとんどありません。なのに大阪のママチャリにはこの「さすべえ」が高確率で取り付けられております。
ちなみに、大阪府道路交通規則では幅30cm以上の傘を傘スタンドにくっつけて走ると取り締まりの対象になるので、普通の傘を持たせると軒並みアウトになるはずですが、それでも大阪では雨の日、この「さすべえ」を使って元気よくチャリをこぐおばちゃんの姿をたくさん見ます。
警察? 大阪のオバチャンに国家権力は関係無ぇんだよ!
大阪のオバチャンと国家権力……確認のため大阪府警に電話してオバチャンによる「さすべえ」の利用が取り締まりの対象となるのかを確認した所、「幅30cm以上の傘の使用、及び視界を遮るような使い方をしていた場合はオバチャンといえども違反となり取り締まりの対象となる」という回答でした。大阪のオバチャンも気を付けてください。
僕の母親はもうトシなので、さすがに雨の日まで自転車に乗ることはなくなりましたが、さすべえは自転車にくっついたまま!
そしてもうひとつ。こちらも大阪以外ではあんまり見ることがないアイテムです。
これは「ひったくり防止カバー」というもので、自転車の前カゴにバッグを入れて移動中、原付バイクが後ろから近寄ってきてカゴに入ってるバッグをひったくる犯罪が多発したため、大阪府警がこの「ひったくり防止カバー」を駅、イベント会場、ショッピングモールその他あちこちでバラ撒きましてね。
「貰えるもんはなんでも貰っとこ!」の精神を持つ大阪のオバチャンにはその施策が当然刺さりまくるわけで、結果大阪のママチャリの多くにはこのひったくり防止カバーがとりつけられているという寸法です。
こちらも大阪以外の地域ではあまり見ることがありません。
さらに放置自転車の数や自転車の盗難件数も大阪は全国トップクラス。世帯あたりの自転車保有数も大阪が全国1位らしい。
そもそも街なかで自転車に乗ってる人もたくさん見かけるので、「なんか、大阪ってやたらとチャリが多くない?」と思うかもしれません。そうなんです。事実、大阪人はやたらとチャリに乗るんですよ。
大阪に自転車が多いワケ①坂が少ない
ではなぜ大阪人がやたらとチャリに乗るのかというと、よくいわれる理由のひとつが大阪には坂が少ないことです。
「〇〇坂」みたいな地名があちこちにある東京に比べ、大阪市内はアップダウンが非常にゆるやかでして、市内に唯一ある高台は「上町(うえまち)台地」と呼ばれる、旧大坂城の域内にあたるエリアくらいです。
この「上町台地」以外に小高い土地が大阪市内にはほぼ存在しないので、上町台地さえクリアすれば自転車での移動が非常に楽です。あとは淀川にかかる橋を越えるときに風がしんどいな、くらい。あの風はちょっと凶悪すぎる。
この「坂が少ないから自転車に乗る」というのはかなり有力な説で、逆に坂が多いことで有名な長崎なんかは世帯あたりの自転車保有数が全国最下位。「坂が少ない街では自転車に乗りがち」という相関関係はありそうな気がします。
大阪に自転車が多いワケ②土地が狭い
そして土地の狭さです。大阪24区は東京23区に比べて面積が3分の1、横浜市と比べても2分の1の広さしかありません。
大阪市の、マジの東の端っこで生まれた僕は、自転車に乗って西の端っこである大阪港まで釣りをしに行ったりしておりましたが、そんな風に大阪市の端から端まで自転車をこいでもせいぜい1時間なんですよね。
実家から難波までは電車で10分の距離ですが、自転車でも20分くらいなので中学生の僕は電車賃を浮かせるために自転車でアメリカ村まで行ってましたし、京橋も天王寺も、とにかくあちこちに自転車で行くし、それが当たり前の文化で育ったものですから、逆に上京したときは「東京の人、自転車乗らなすぎじゃない!?」とビックリしてしまいました。
大阪に自転車が多いワケ③大阪人はせっかち
坂の少なさと土地の狭さという地理的な要因以外に、もうひとつありそうなのが「大阪人がやたらとせっかちなこと」です。これは僕による勝手な考察ですが。
そうなんです。駅まで徒歩10分だろうが5分だろうが、歩くより自転車の方が早く着くのでなるべく自転車でサッと移動したいんですよ。大阪人はせっかちだから。
この、「自転車の方がなんだかんだ早い説」というのは、みんな知ってるのにその選択をしないのが不思議です。おい! 歩くな! 自転車をこげ!!
かつては問題だらけだった大阪の街も変わってきている!?
そんなわけで、
- やたらとチャリに乗る
- 自転車の数自体も多い
というのが大阪の街なので、街のいたるところに自転車が溢れているのは大阪ならではの光景といって良いくらいになっていましたし、そのせいでいろんな問題が起こっていたことも事実としてあります。
ひとつ目は交通マナーの問題です。
これは特にオッサン・オバハンに多いんですが、アーケードの商店街なんて基本的には「自転車は押して歩きましょう」みたいな注意書きがあるのにも関わらず、普通に自転車に乗ったまま通り抜けて行く人が大量にいます。
なんなら「チリンチリン!」って死ぬほど連打しながら「どかんかい!」とばかりに自転車で通り抜けてくオバチャンがいたりする。なんなのアレ。
なんかもう、自転車の通り抜けが多すぎて、歩いてる人も「そんなもん」として受け入れているような気すらしてくる。
僕も大阪にいた頃には「そんなもん」としてたいして気にしていなかったのですが、東京暮らしが長くなってから大阪に帰省したタイミングで「危ないなー」と思うようになりました。大阪の毒が抜けたのかもしれない。
そしてふたつ目は不法駐輪の問題です。
長年、大阪では「チャリはそのへんに適当に停めておく」という運用が大正義でしてね。
もともと、やたらと自転車が幅をきかせてる大阪の街ですから、ちゃんと駐輪場を整備しておかないと自転車で溢れてしまうのは当然なのですが、行政も恐らく「まあ、大阪やしこんなもんやろガハハ」くらいの感じで本腰を入れて対応して来なかったのではないかと推測しております。
そのせいで大阪の街は自転車で溢れており、歩道を歩きにくい場所はそこかしこにありました。
でも今となっては自転車の数が絶対減ってると思うんだよな……!
この通りだって、昔はもっと自転車が停まってたよね!?
下町の商店街もこんな感じ。ここも昔はもっと自転車がいっぱい停まってたような……?
一方で駐輪場の数がめちゃめちゃ増えております。「大阪人に駐輪場を使わせる」というのはゴリラに因数分解を教えるより難しいことだと思っていたので心底びっくりしてしまいました。
大阪市建設局に聞いてみた
そんなわけで不法駐輪の自転車問題を管轄する大阪市建設局に現状について聞いてみました。
僕「これこれこういう具合なのですが、大阪市内の不法駐輪の数ってめっちゃ減ってませんか……?」
建設局「それはおっしゃる通りです。10年ほど前から対策に力を入れはじめたんですね。駐輪場を増やす一方で自転車の強制撤去の頻度を増やしまして」
僕「やっぱり! 今は難波周辺をウロウロしているんですが、自転車の数が減ってるなって思いました」
建設局「そうですね。当初は難波や梅田など繁華街を中心に整備していたのですが、今はほとんどの駅の近くには駐輪場があるようになっています」
僕「じゃあ、不法駐輪は相当減ってる……?」
建設局「はい。まだまだ完全ではないですし、駐輪場の数も足りてるとはいえませんが、10年前に比べて3分の1程度には減っています」
僕「ありがとうございます!」
というわけで「それでもまだ駐輪場足りてないのかー」と思い、「大阪 駐輪場 少ない」で検索してみたら「わざと駐輪場を少なくして違法駐輪を増やし、撤去の人員を天下りにしているのではないか」という質問(出典:ジチサポ)が寄せられていて笑いました。お役所の人も大変である。
しかしながらやはり不法駐輪の自転車の数は劇的に減っているらしい。
東京だって自転車のほうがいい
そんなわけで「良かったやん!」と思う一方で、「他の地域の人も大阪をみならって、もっと自転車に乗るべきでは?」という想いががぜん強くなりました。
僕は渋谷の道玄坂という鬼のように繁華な場所に住んでいた時期があるのですが、その頃の僕は銭湯にハマっており、ほぼ毎日銭湯に行く生活を送っておりましてね。
その話をすると「え? 渋谷に銭湯無くない?」みたいな事もよく言われました。
アホ「渋谷にはサ! 銭湯が無いのにサ! どうやって毎日銭湯に行くのサ!」
かしこい僕「だって、チャリがあるやん」
そうなんです。渋谷に住んでいるときも自転車を保持し続けていたので、中目黒の光明泉や池尻大橋の文化浴泉、表参道の清水湯なんかに毎日自転車で通ってたんですよ。チャリで行けばわりとすぐだし。
そして自転車って気分転換にもちょうどいいんですよ。
渋谷の道玄坂、しかも当時は脱法ハーブなるものが大流行していた時代ですから渋谷駅から家までの帰り道に、なんかもうアレな感じに仕上がってる人が道端を匍匐(ほふく)前進していたり、泥酔してるサラリーマンの集団が「ウェーイ!」みたいなノリで叫び散らかしたりしているような状態が毎日続いてましてね。
悪鬼羅刹の鬼武者と呼ばれた僕も、さすがに「ここに住んでるの、ちょっと嫌だな」みたいな感じになるじゃないですか。
そういうときに自転車をこいで代官山の蔦屋書店とかに行けば落ち着いたハイソな雰囲気でスタバで一息ついたりできるわけですよ。
そんでカフェラテをすすりながら「俺は代官山在住俺は代官山在住……」とかブツブツ呟いて自我を保つわけです。出禁にならなくてよかった。
みんなも自転車に乗ろう
自転車には、
- 移動が早い!
- 行動範囲が広がる!
という、絶大なメリットがあります!
なのに上京してきて一人暮らし中、みたいな友達には自転車を持っていない連中もかなりいるのが不思議!
もちろん自転車が増えることによるデメリットはかつての大阪がそうであったように、「違法駐輪が増える」「道が狭くなる」「景観が悪くなる」みたいな問題が挙げられるけど、これも大阪市の対策を参考にすればある程度に抑えることも可能なはずである。
ほんと、なんでみんな自転車に乗らないんだろう。
一人暮らしはじめてすぐの頃なんてみんなお金が無いんだから、駅から徒歩15分とか20分とかの少し不便なところに住みつつ、駅の駐輪場を契約して駅までチャリ通すれば良いんですよ。
駐輪場の料金なんてせいぜい月に1000円とか2000円くらいだから、駅から離れることで下がった家賃で吸収できるんですよね。
最近では休日、自転車の後部座席に3歳の子どもを乗せて、中野駅近くの体操教室に行ったあと高円寺の小杉湯に行ってお風呂に入り、新井薬師の駄菓子屋さんで駄菓子を買って帰る、みたいな工程で子どもと一緒に移動したりするのですが、こういう遊びができるのも完全に自転車があるおかげなのです。
なので皆さん! くれぐれも「事故には注意しながら」ですが、自転車にもっと乗りましょう!
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