自転車で山をのぼる楽しさって? ヒルクライムって一体なに? コースやウェア選びはどうする?
ビギナーさん必読のヒルクライムを始めるための情報から、「ギアチェンジのコツ」「おすすめレース」「ヒルクライム向けロードバイク」など、ヒルクライムを極めるための情報まで、ベテランライダーが惜しみなく伝授します!
ロードバイクで山をのぼって何がおもしろいの?ヒルクライムの魅力とは
こんにちは、ののむらです! みなさん、「ヒルクライム」は好きですか? 山、のぼってますか?
自転車の世界におけるヒルクライムとはつまり、山や峠などの坂道を、ロードバイクをはじめとしたスポーツサイクルでのぼっていくことを指します。私もヒルクライムのあとの絶景やグルメを楽しむのが大好きです!
ヒルクライマーたちはこういいます。「山でしか摂取できない栄養がある」と……
「栄養」の捉え方は人それぞれですが、私の場合は「感動」でしょうか。山をのぼり切ったときの達成感は、平地では得られない感動があるんです。
普段何気なく飲んでいるスポーツドリンクでも、山の頂上の自動販売機で買って飲むととてつもないごちそうになるんですよね。とくに暑い日のキンキンに冷えたドリンクが喉を通っていく感覚といったら……! 達成感とのコンボで、感動は倍増です。
とはいえ、自転車で山をのぼるなんて……と苦手意識を持つ方も多いと思います。初心者時代は私もまったく同意見で、わざわざ苦しい思いなんてしたくないと、ヒルクライムが食わず嫌いだった時期もありました。
でもじつは、ヒルクライムって初心者の方にこそおすすめなんです!
えー、なんで!?と思った方は、激坂をとにかく追い込んで速く走るイメージがあるのでは?
もちろんヒルクライムレースとなるとタイムを競わなければなりませんが、純粋にヒルライムを楽しむなら自分のペースでゆっくり上ってOK!
さらにレースにおいても、ロードレースより速度が出ないヒルクライムレースは落車の危険度が低く、自転車初心者でも始めやすいジャンルなんですよ。
ヒルクライムの始め方
やる気になったら、さっそく山をめざして出発!……とその前に、まずは「準備峠」を越えるところからヒルクライムは始まります。ビギナーこそ準備が肝心ですよ。
①コースの選び方
まずはコース選びから。はじめのうちは、勾配が緩いコースを選ぶのがコツです。その目安になるのが「走行距離」「獲得標高」「平均勾配」です。
たとえば、新潟県には弥彦山という獲得標高が500mほどの山があり、山頂を目指すには2つのコースがあります。
- 新潟側:距離7.48km、獲得標高524m、平均勾配6.8%
- 観音寺側:距離10.39km、獲得標高512m、平均勾配4.7%
同じ500mの標高差ですが、長い距離のほうが平均勾配はゆるくなります。走行距離自体は長くなってしまいますが、この場合だと初心者の方は10kmコースのほうがチャレンジしやすいということです。
距離だけで判断して短いし大丈夫!と思っていると、鬼のような激坂が待っていることがありますからね……。
逆に平均勾配の罠にも注意。たとえば関東屈指の激坂、埼玉の「子ノ権現」は、距離4km、獲得標高331mでありながら、最大勾配28%というとんでもない数値を誇ります。平均勾配だけで見ると8.4%なので、騙されないように……。
こういった情報は自転車仲間はもちろん、世のヒルクライマーたちがブログやSNS(ストラバなど)に残してくれているもの。チャレンジする前にチェックしてみると良いですよ。
②休憩ポイント、路面の状況を把握しておく
コース上の「自動販売機」「公衆トイレ」「休憩できる場所」の確認はマスト! ヒルクライムは平坦をのんびり走るよりもパワーを使うため、夏場に限らずこまめな水分補給が必要です。
さらに、山の中では自販機のない区間が当たり前のように続くので、休憩場所はあらかじめ確認しておきましょう。私は湧き水スポットと、電波の有無も一緒にチェックしています。
それからもうひとつ注意しておきたいのが、通行止め。天気の変わりやすい山では、平地からは予想できない路面状況になっていることがあります。大雨のあとに土砂崩れで通行止めになっていたり、雪のたくさん降る地域では、ふもとに雪がなくても春まで道を封鎖しているケースもありますね。
路面状況が悪い中でのダウンヒルはリスクが高いので、休憩ポイントと一緒に路面の状況も事前に把握しておきましょう。
③服装
ヒルクライムは通常のサイクリングよりも汗をかくので、通気性のいいサイクルジャージや速乾性と吸水性に優れたインナーを用意しましょう。
初心者のうちは、サイクルジャージを持っていてもインナーまでは買っていないケースも多いです。インナーは中に着るので見えない部分ですが、じつは体温調節においてとても重要なんです。
山頂に向かって気温が下がっていく中で、汗で濡れたジャージは汗冷えを起こす原因に。そこで汗を吸い取って乾かしてくれるインナーを着ることで、身体の中(体幹)を冷やさずに済むのです。実戦までに用意することをおすすめします!
>> 1000m、2000m級の山をのぼる場合はさらに注意!「防寒具」セクションでチェック
④無理をしない
楽しく走るためには無理をしないのが一番! もちろん坂を上るので、強度ゼロでの楽ちんライドにはなりませんが、楽しく苦しむ(?!)のがヒルクライムの醍醐味です。
レベルに見合わない強度でペダルを回し続けると、途中で燃え尽きてしまいます。ひとつの目安として、心拍数をチェックしてみましょう。「この心拍数を超えるときつい…」という数値を知っておいて、その心拍数を上回らないように強度を調整するのがおすすめ。
私も初心者の頃、心拍数の上限170bpmを「燃え尽きデッドライン」として、強度を調整しながらヒルクライムに挑戦していました。
ヒルクライムのコツ
ヒルクライムを楽しむための気になるギモンを、Q&A形式で一挙に解決していきましょう!
Q.のぼっていると息が苦しい! どうしたらいい?
A.頭を下げた状態でドロップハンドルにしがみついていると、背中が丸まって息がしにくくなりがち。苦しいときは、ハンドルのまっすぐな部分(上ハン)を握って頭をあげて走ると、状態が起きて呼吸が楽になります。
Q.坂がきつくなると足がうまく回らない!
A. とくに激坂では、いつもよりサドルの前側に座ってみてください。勾配がきつい箇所で足が回らなくなる原因は、重力で体重がサドル後方にいってしまってペダルにかかる荷重が減ってしまっているから。
前乗りすることで体重が前方にかかり、ペダルを踏みやすくなります。
Q.ギアの変え方がよくわからない!
A.ここはケイデンス(ペダルの回転数)に注目です!
自分が気持ちよくのぼれるケイデンスで、ラストまで維持できるギアに入れてみましょう。個人差がありますが、私のケイデンスの目安は70rpm。つまりクランクが1分間に70回転している状態を維持したいのですが、軽すぎるギアだとケイデンスがあがり(90rpmほど)お尻が浮いてしまったり、逆に重いギアでケイデンスが50rpm以下になると四頭筋がすぐに痛くなってしまいます。
自分にとってちょうどいいケイデンスを維持することに集中して、ギアチェンジとペースを考えるのがおすすめです!
ちなみに激坂の最中、トルクがかかっている状態でギアチェンジをすると、変速機にダメージを与えてしまいます。勾配が変わる前など、先を見て変速操作することが大事ですよ。
Q.すぐ疲れちゃう。疲れないコツってある?
A.先述したように、ギアが重すぎないかをまずチェック。重すぎず軽すぎないギアをチョイスできているのなら、ダンシング(立ち漕ぎ)を取り入れて疲労を分散させる方法もおすすめです。ずっと同じ姿勢で走っていると、同じ筋肉ばかりが使われて疲れを感じるのが早くなってしまいますからね。
ダンシングがうまくできない人は、ハンドルのブラケット先端を持ったり、上ハンを握ったりして、姿勢を変えるだけでも効果があります。
【初心者必読】ヒルクライムの注意点
・山頂は夏でも一気に冷える! 防寒具を用意
標高が100m高くなると、およそ0.6℃気温が低下するといわれているので、1000m級の山では6℃、2000m級の山では12℃ほどの気温差が生じます。
山をのぼって汗だくになった状態で、寒い山頂から一気にダウンヒルするのは非常に危険! 寒さで手がかじかんでブレーキレバーが握れなくなったり、体幹の冷えから体調を崩してしまう恐れがあります。しかも、下りは漕がないので体は冷える一方……。
ヒルクライムをする場合は、夏であっても標高差に合わせて防寒具を用意しましょう。
富士ヒルを例にとると、例年の平均温度はふもとで20℃前後ですが、五合目のゴールでは6℃になります。2000m級の山の気温がまさにこのイメージで、6℃の状態を想定したウェアを用意しておく必要があります。
例)ウインドブレーカー、アームウォーマー、レッグウォーマー、シューズカバー、指付きグローブ、ネックウォーマー、ホットジェルなど
・パンク修理はできるようになっておきたい! 万が一のトラブルにも備えを
山の途中に自転車店がある確率はほぼゼロ。自転車にトラブルがあれば自力で解決しなければなりません。走り慣れているサイクリストと一緒にいる状態であれば、何かあっても助けてもらえる可能性はありますが、常にそうとは限らないので「パンク修理」「チェーン落ち修復」ぐらいはマスターしておきたいですね。
また「ディレーラーハンガーが折れてリアディレーラーが吹き飛んでしまった」「落車でホイールが割れてしまった」といった自力では修復不能なトラブルもゼロではありません。ここまでのトラブルがソロライドで、しかも人のいない山中で起こってしまったら……。顔面蒼白モノです。
こういった場合に備えて、ロードサービス付きの自転車保険を契約しておくのもおすすめです。
・自転車のメンテナンスは万全に
コースによっては20㎞以上もダウンヒルをする場合があり、ブレーキング性能が命を守ることに直結してきます。
しっかりと整備の行き届いた自転車であれば安心して下れますが、ブレーキ調整がしっかりとできていなかったり、チェーンが交換時期を過ぎて外れやすいなんて状態では危なくてダウンヒルができません。
近年は油圧ディスクブレーキが増えており、自宅でできる整備には限界があります。ヒルクライムに限らず、定期的にプロのメンテナンスを受けることをおすすめします。
レースにチャレンジするのも楽しい!有名レース5選
ヒルクライムを何度かこなしていくうちに、レースに挑戦してみたくなるのがサイクリストというもの。国内で人気のヒルクライムレースを5つ、ピックアップしてみました。
自分のレベルに合わせてエントリーしてみましょう!
①榛名山ヒルクライム(群馬県)
私が初心者のころに初めてエントリーしたのが、この榛名山ヒルクライム、通称ハルヒルです! 地元の方が沿道でずっと応援をしてくれてて、地域のあたたかさを感じるアットホームな大会です。
エントリー時にタイムを自己申告して走力順に整列するので、脚力に自信がない方でも周囲を気にせずスタートできる点がビギナーにおすすめ! 初心者コース < 榛名神社コース < 榛名湖コースと難易度が3種類あるので、ステップアップしながら参加するのもいいですよね。
>> 第12回榛名山ヒルクライム in 高崎【公式】 (haruna-hc.jp)
②磐梯吾妻スカイライン・ヒルクライム(福島県)
近年人気のヒルクライム大会。日本のアリゾナと呼ばれる浄土平を舞台に、2日間にわたって開催されます。初日は距離14km・獲得標高800mの激坂のコース、二日目は27km・獲得標高1100mの比較的緩やかなコースが設定されています。
どちらか一方の参加でも大丈夫なので、初心者の方は難易度の低い二日目にエントリーして福島の温泉をご褒美に頑張るのもアリ!
絶景の連続で、ここは本当に日本なのか!?と思うくらい壮大な自然の中を走り抜けることができますよ。
>> 磐梯吾妻スカイライン・ヒルクライム | 福島復興サイクルロードレースシリーズ (tour-de-fukushima.jp)
③マウンテンサイクリングin乗鞍(長野県)
2025年に40回目を迎える歴史のあるヒルクライムレースです。空に一番近いと表現される2720mの乗鞍エコーラインが舞台になっていて、国内大会では一番高所となるコースを走ることができます。
長野県と岐阜県の県境になっている山頂を目指して走り、のぼるほどに高原の美しい景色をこれでもかと堪能できる大会です! 初心者には難易度が高そうと思われるかもしれませんが、初心者向けに7kmのショートコースがあるのでご安心を。
じつは国産車のCMでよく使われている場所なので、車好きにも馴染みのある場所なんですよね。
>> 乗鞍ヒルクライム 公式サイト (norikura-hc.com)
④まえばし赤城山ヒルクライム大会(群馬県)
ハルヒルと並んで人気が高い群馬県のヒルクライムレースです。スタートは前橋の街中ですが、赤城山の頂上まで自然の中を一直線にのぼっていくコースです。
勾配変化が少ないぶん、初心者の方でも一定ペースで走りやすいはず!
特別賞があるのが特徴で、遠来賞、最高齢者賞、ラッキー賞など速さに関係なく賞をもらえるチャンスがあり、自分へのチャレンジの意味を込めてエントリーしてみるのもおすすめ。
>> まえばし赤城山ヒルクライム大会 | 公式ウェブサイト (akg-hc.jp)
⑤Mt.富士ヒルクライム(山梨県)
日本国内でもっともアツいヒルクライムレースといえば、やっぱり富士ヒル!
注目されすぎて毎年エントリーするところから一苦労……。自分の走りたい出走順のウェーブにサイト上でエントリーするのですが、人気が高いウェーブはあっという間に埋まってしまいます(ちなみに周辺宿の予約も激戦です)
勾配が緩くて初心者でも走りやすく、完走率は99%。完走すると記念に大会名が刻印されたリングをもらえます。毎年数千人が参加し、お祭り状態になるにぎやかなヒルクライムレースです!
>> 富士の国やまなし 第20回Mt.富士ヒルクライム【公式】 (fujihc.jp)
ヒルクライム向けおすすめロードバイク5選
最後に、ヒルクライムにピッタリの軽量ロードバイクをご紹介します。
リユースモデルだからかなりおトクに買えるものばかり。初めてのロードバイクはもちろん、ヒルクライム用にもう一台買いそろえるのもアリですよ!
トレック エモンダSL 6(2015年モデル)
リムブレーキ時代のエモンダSLに乗っている山好きサイクリストって結構いましたよね! 今ではディスクモデルのみとなってしまったエモンダですが、バイチャリならまだリムブレーキモデルが手に入ります。少しでも軽くしたいヒルクライマーにとって、リムブレーキはまだまだ現役です。
ホイールは踏めば踏むほど進んでくれる剛性バリバリなレーシングゼロにアップグレード済み。リユースならではのおトクな1台です。
>> TREK 「トレック」 EMONDA SL 6 2015年モデル ロードバイク / 熊谷本店 | バイチャリ公式オンラインショップ 【スポーツ自転車買取販売専門店】 (buychari.com)
キャノンデール スーパーシックスエボ(2016年)
ヒルクライムレース上位入賞者がよく乗っていた歴戦の軽量カーボンロードを発見! リムハイトの高いホイールを履いた状態で6.5kgということは、ローハイトカーボンホイールに変えればさらなる軽量化も夢じゃない!
前オーナーさんがクライム用バイクにしていたのか、ブレーキが制動力の高いR8000になっているのもポイントですね。
サーヴェロ R3(2016年)
憧れのクライムバイク、サーヴェロのR3だってバイチャリならダメージがほぼない美品に巡りあえちゃいます! ホイールはなんとボーラワンを装着済み。
さらにパワーメーター付きのシマノクランク(リコール対応済み)も装備されたスペックマシマシのハイグレードロードバイクです。
>> CERVELO 「サーベロ」 R3 2016年モデル ロードバイク / 千葉中央店 | バイチャリ公式オンラインショップ 【スポーツ自転車買取販売専門店】 (buychari.com)
トレック エモンダ SLR7(2022年)
のぼれるディスクロード「エモンダSLR7 DISC」がきれいな状態で手に入る! 2022年と年式も新しい。すべてのパーツがボントレガーで揃えられ、統一感抜群な1台です。
コンポだけで30万円ほどする新型アルテグラを搭載して、カーボンホイールとステム一体型ハンドルまで装備されているのに60万円を切っているのは魅力的すぎる……!
スペシャライズド S-ワークス エートス(2023年)
かなり高額ですが、Aランク2023年モデルの極上の逸品です。
ディスクロードの中で最軽量に仕上げようと思ったら、エートスという選択肢は外せません! サイズ540のディスクロードが6.2kgって、バグってる……。
状態よし、コンポは新型アルテグラとデュラエースのミックス、各種パーツは軽量なアルピニストシリーズ、3Dプリントのミラーサドル……細かい箇所まで妥協なきアッセンブルです。清水の舞台を飛び降りてでも手に入れたくなる、シビれる組み合わせ!
近くの峠から始めればOK! まずはヒルクライムの楽しさを感じてみて
富士山や六甲山のような有名な山岳を走るだけがヒルクライムではありません。近くの峠や小さな山でも、坂道をのぼって目的地に到達できれば、それはもう立派なヒルクライムです。
日本各地にはさまざまな高さの山があるので、自分の体力・脚力に併せてチョイスして走れるのもヒルクライムのいいところですね。
以前は足がついてしまった山を、練習して足つきなしで上れたときの達成感。チャレンジしたライダーにしかわからない感動を、ぜひヒルクライムで味わいましょう!