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ROAD BIKE

じつは誰もちゃんと説明できないロードバイクの『剛性』の話。「剛性=硬い」はウソ?ホント?

「フレームの剛性が高いって、結局どういうこと?」

ロードバイクに長く乗っている人でも、『剛性』について自信をもって説明できる人はそう多くないんじゃないでしょうか。ロードバイク界の “知ったかワードNo.1” ともいえる『剛性』について、正しく理解しておくことはとっても大事。

というわけで、数多くのロードバイクのインプレ記事を手がけ、機材の特性を繊細に感じ取ってきた敏腕自転車ジャーナリストのやすいサンに、その本質を解説してもらいます。

フレーム選びやパーツ選びで迷ったとき、きっと役に立つのが『剛性』。ぜひこの機会にマスターしてみてください。

奥深いロードバイクの『剛性』の世界

スポーツサイクル界ではおなじみ、自転車ジャーナリストの安井行生さん

みなさんこんにちは。私やすいと申します。今回、バイチャリジャーナル編集部から頂いたテーマは『剛性』です。インプレッションでよく「このフレームは剛性が高い」とか、「このホイールは剛性が低くてパワーが吸われる」というようなことが書いてありますね。

剛性とは物体の「変形のしにくさ」のことで、さほど難しそうには思えませんが、「自転車の剛性」となると、これがまた非常に奥深〜い話になるんです。

今回は、

  • そもそも剛性とはなにか?
  • 剛性が高い(低い)とどうなるのか?
  • フレームやホイールの剛性は高ければ高いほどいいのか?
  • 「剛性」と「剛性感」は違うのか?
  • 剛性の感じ方は?
  • 自分に合った剛性の見極め方は?

について、みなさんに分かりやすくお伝えしていきたいと思います!

剛性とはズバリ「変形のしにくさ」

まず「剛性」とは、先述のとおり「変形のしにくさ」のことで、棒に力を加えたときフニャッと曲がってしまうのが「剛性が低い」。いくら曲げようとしても変形しないのが「剛性が高い」です。ちなみに、似たような言葉に「強度」がありますが、「剛性と強度は別物」です。剛性は「変形のしにくさ」ですが、強度は「壊れにくさ」のこと。

よく分からない? じゃあ、発泡スチロールとスポンジを思い浮かべてみてください。

力を加えるとどうなる?

両方とも重さはだいたい同じですが、発泡スチロールは曲がらずにバキッと割れてしまいますね。いっぽう、スポンジはフニャッと変形するけど割れずに元の形に戻ります。言い換えると、「発泡スチロールは剛性が高く(曲がりにくく)、強度が低い(壊れやすい)」、「スポンジは剛性が低く(曲がりやすく)、強度が高い(壊れにくい)」ということです*。

*) ここでの「強度」は一般的な意味で使っています。厳密には、スポンジのような素材は曲げても壊れにくい反面、引っ張ったり裂いたりすると簡単に破れるため、工学的には「強度が高い」とはいえない場合もあります。

ざっくりいうと剛性は素材と形状で決まります。同じ素材なら、剛性を高めようとすると重量は重くなり、軽くしようとすると剛性は低くなる傾向にあります。

「ロードバイク=高剛性がいい」ってホント?

やすいサンいわく「剛性は低すぎても高すぎてもいけない」

では、ロードバイクのフレームやパーツの剛性が高いとどうなるのか。ペダルに加えた脚力が無駄なく推進力に変換され、動力伝達性がよくなります。また、ステムやハンドルやフォークの剛性が高いと、操作力がバイクの挙動に正確に反映され、キビキビと反応するようになります。

いいことだらけに思えますね。実際、多くの機械にとって剛性は必須です。剛性が低いと機械が予期せぬ変形をしてしまい、精度が低くなる、安定性が低下する、荷重を支えられなくなる、正確に反応しなくなる、エネルギーが無駄になる、機械の反応が予想できなくなるなど、デメリットがたくさんあります。

だから自転車も、基本的に「剛性向上」を目指して進化してきました。少し前まで、各社のカタログには「前作比で剛性が○%アップ!」というような売り文句がアチコチに踊っていました。

「高剛性エアロフレーム」なんて、いかにも “速そう” な響きだけれど……

しかし、難しいことに、自転車においては過剰な剛性はデメリットになるんです。

分かりやすいのは「快適性の低下」。路面から振動を受けてもフレームやホイールが変形にしにくくなるため、衝撃がダイレクトに体に伝わってしまいます。また、剛性を高めるには材料をたくさん使わなくてはいけないため、重くなってしまいます。

それだけでなく、フレームやホイールの剛性が高すぎると、「スムーズなペダリングがしにくい」「脚に疲労が溜まりやすい」というデメリットも生じることがあります。剛性が高すぎる自転車では、ペダルに力を加えても全くたわまないため、「ペダルを踏み下ろしにくく、速く走らせるにはパワーが必要」という印象になりやすいんです。

それが結果として、「加速はいいけどペダリングがギクシャクする」「速いは速いが疲れやすくて楽しくない」という印象になることも。これを「過剛性」といったりもします。

一方で剛性が適度に抑えられていると、ペダルがスーッと素直に落ちていき、スムーズなペダリングができるようになります。バイクの動きに絶妙な「タメ」が生まれて落ち着いた挙動になり、それによって「気持ちよくペダルが回せる」「長距離を走っても脚に疲労が残りづらい」「安心して走らせられる」という印象につながるわけです。

人によって変わる「ちょうどいい剛性」

では最適な剛性とは一体どうやって導き出されるのか。じつは「人間と自転車の関係」についてはまだよく分かっていないことも多く、ロードバイクメーカーのエンジニアでも「最適なフレーム剛性」に関しては意見が分かれます。

なにせ、乗るのが千差万別な人間です。体重3桁オーバーkgの人も乗れば小柄な女性も乗る。超人ハルクのようなマッチョマンも乗れば細身の少年も乗る。時速70kmでゴールスプリントをするプロも乗れば時速20kmでサイクリングを楽しむ一般人も乗る。

身長も体重も好みも、千差万別なサイクリストたち

そこに「経験」や「好み」という個人差が加わります。

筆者の経験から言うと「剛性は低すぎても高すぎてもいけない」ということになりますが、「ちょうどいい剛性」は、人によって変わるのです。

「剛性」と「剛性感」は違う

「剛性が高い」「剛性が足りない」などといったりしますが、我々が感じているのは正確には「剛性」ではなく「剛性感」です。「剛性」は、「力を加えたときに○mm変形した」というように数値で表すことができるものですが、「剛性感」とはあくまで「人が受ける印象」です。

同じパーツでも、筋力がある人が使えば「剛性が低い」となるでしょうし、非力な人は「剛性が高すぎる」と言うでしょう。その場合の「剛性」とは、じつは全て「剛性感」のことなのです。

プロだって間違える

さらにややこしいのが、「パーツやフレームの実際の剛性」と「乗った人が感じる剛性感」とが、必ずしも一致しないということです。何度も書いているとおり、剛性とは「どれほどの力を加えたらどれくらい変形するか」という数値化可能な指標ですが、剛性感は「剛性、軽さ、振動、好み、個人差、主観などが混ざり合った印象」です。フレームの開発時には、「プロ選手に剛性を落としたフレームを試乗してもらったところ、『剛性が高くなった』という真逆のフィードバックがあった」などということは日常茶飯事です。

なんだかワケが分からなくなってきましたね。

簡単にまとめると、

  • フレームやホイールの剛性は高ければ高いほどいいというわけではない
  • 「物体が持つ剛性」と「人が感じる剛性感」は違う
  • 人によって「最適な剛性感」は変わる

ということで、「自転車の剛性」の正解はどこにもないということです。言い換えれば、「最適な剛性感は自分で探すしかない」ということになり、それは「剛性感に着目して自転車を選べば、自分にとって最高の一台と出合える!」ということにもなるわけです。

自分にとって「最適な剛性感」の見つけ方とは?

では、どのように剛性を感じて、どのように自分にとっての最適な剛性感を見つければいいのか。

まず、ぼんやりと乗るのではなく、体のセンサーの感度を高めて「剛性感を感じ取ろう」としながら走ってみてください。ペダルに力を加えたとき、フレームがどのように変形しているのか。その「変形した感じ」によって、自分がどのような印象を受けているのか。「パワーが吸われている」のか、「ペダリングしやすいと感じる」のか。自分がどんな剛性感を「気持ちいい、走らせやすい、スムーズにペダリングができる」と感じているのか。

ホイールを交換して走ってみると、「自分が感じていた剛性感はホイールによるものだったんだな」とか、「フレームとホイールの剛性感の相性」などもだんだんと分かるようになります。

また、いろんな走り方をしてみてください。加速を繰り返してみる。平地で思いっきりダンシングしてみる。軽いギヤでクルクル回してみる。激坂で踏み込んでみる。そうしていると、「このバイクは中負荷までなら好印象だけど、高負荷ではだらしなく変形して進まなくなる」とか、「低速では乗りづらいが高速域ではバランスがとれるようになる」など、剛性感をふまえた総合的な印象の輪郭がよりはっきりしてくるはずです。

自転車の性能を評価する指標には、重量や空力や効率などさまざまありますが、個人的には「剛性感」が一番重要だと思っています。「剛性感」を感じ取れるようになり、「自分の好みの剛性感」を確立させられると、単純なスペックやプロレースの戦歴とは違った「自分だけの評価軸」ができます。そうなれば、運命の一台を探し出すのも難しくはなくなるでしょう。

自分にとっての最適な剛性を探してみよう

累計数百台ものロードバイクを乗り比べてきたやすいサンによる剛性解説、いかがでしたか。フレーム選びに悩んでいるなら、今回の視点をひとつのヒントにしてみてください。なんとなくの印象で判断していたフレーム剛性も、きっと違って見えてくるはずです。

大切なのは、自分の走り方や体に合った剛性感を見極めること。剛性への理解を深めることで、あなたにとって最高の一台に出合えるはずですよ!

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安井 行生

安井 行生

大学在学中にメッセンジャーとなり、自転車好きが高じてそのまま自転車ジャーナリストに。現在はさまざまな媒体で執筆活動を行う。今まで購入してきたバイクは70台以上。

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