4月からスタートした、自転車の「青切符」制度。
導入直前の3月に行った定点観測では、一時停止の交差点できちんと停止した自転車はわずか3台という驚きの結果でした。
あれから3か月。青切符制度によって、自転車利用者の行動は本当に変わったのでしょうか。その実態を確かめるため、前回とまったく同じ場所・同じ条件で再び定点観測を実施しました。
すると見えてきたのは、「止まる人は3倍に増えた一方で、ほとんど変わらない違反もある」という興味深い結果でした。
まずはおさらい!青切符スタート前の3月はどうだった?
今回の結果を見る前に、まずは3か月前、青切符制度がスタートする直前の観測結果を振り返っておきましょう。
【観測地点①】スクランブル交差点


自転車が守るべき信号がわかりづらいスクランブル交差点。わずか1時間(×2日)の観測で、20件の「信号無視」が発生。他にも逆走やイヤホン着用など、複数の違反が次々と確認される結果となりました。
【観測地点②】一時停止交差点


信号のない交差点。とくに目立ったのは「一時不停止」の多さです。通行した自転車98台のうち、停止線の手前で完全に停止したのはわずか3台。残り95台は減速のみ、あるいはスピードを落とすことなくそのまま交差点へ進入しているという結果でした。
>> 「それも違反だったの!?」詳しいルールのおさらいは 前回の記事をチェック!
まずは結果から! 違反件数の変化は…
では、青切符が導入されて3か月が経った現在(2026年7月時点)、この状況は一体どう変化したのでしょうか? いよいよ今回の本題です。
まずはスクランブル交差点の観測結果から。前回とまったく同じ条件で、交差点を行き交う自転車の様子を定点観測しました。
【調査条件】
- 観測時間帯: 通勤・通学のピークタイム(夕方17時)
- 実施期間: 2日間(各1時間)
【観測結果:スクランブル交差点】


前回と比べて顕著だったのは「信号無視(20件→14件)」。14件のほとんどが「車道を走行中にもかかわらず歩行者用信号の青で交差点に進入した」というケースです。つまり、スクランブル交差点ゆえの「自転車が守る信号がどれかわかりづらい」という状況に起因すると考えられます。(どういう状況?前編でチェック)
明らかな信号無視は4件にとどまっており、その4件に関しても、完全に赤になってから堂々と無視をするというよりは、「信号が変わった直後に急いで渡りきろうとして、結果的に無視になってしまう」というケースでした。
さらに「ながらスマホ」も4件から1件のみに減少しています。
一方で「逆走」は9件で横ばい、「イヤホン着用」は9件から11件とわずかに増える結果になりました。
続いて、一時停止交差点の変化を見てみましょう。

前回は、「98台中、一時停止したのはたったの3台」という衝撃の結果でしたが、今回は果たして?
【調査条件】
- 観測時間帯: 通勤・通学のピークタイム(夕方17時)
- 実施期間: 2日間(各1時間)
【観測結果:一時停止交差点】


一時不停止は111件(前回95件)でした。数字だけ見ると違反が増えたように思えますが、これは全体の通行量が多かった(98台→123台)影響です。
ここで注目したいのは、「一時停止した人」の数。前回のわずか3台から、今回は12台と明確に増えていました。全体の通行量も増加しているので割合で考えてみると、「一時停止率」は約3倍になり改善したといえます。
減った違反と、ほぼ変わらなかった違反。その差は?
今回の調査で明確に減ったのは「信号無視」と「ながらスマホ」。一方で「逆走」「イヤホン着用」は変化なし。そして大きく改善が見られたのが「一時停止の遵守」でした。
この結果をどう読むか、いくつかの角度から推察してみます。
「意識しているか、無意識か」が、青切符制度の効きやすさに影響したか
変化が起きた違反と起きなかった違反の間には「ルールの認知度」の差があると考えられます。
「信号無視」や「ながらスマホ」は、本人も違反だと認識しやすい行為です。違反だとわかっているからこそ、青切符制度という外からの圧力が効きやすかったのではないでしょうか。
とりわけ「ながらスマホ」は、制度開始前後でメディアに繰り返し取り上げられた項目です。青切符制度の話題が広まるなかで「明らかな違反」に対して行動を改めた人が増えた可能性は十分考えられます。

そして件数が横ばい、もしくは増加した「逆走」や「イヤホン着用」について。
この2つに共通するのは「違反しているという自覚がそもそも薄い」ということ。右側を走っていることに気づいていない逆走、規制の線引き自体があいまいで分かりにくいイヤホン着用。ルール自体を知らない、あるいは「これくらいなら大丈夫」と感じやすい違反といえるのではないでしょうか。
2026年4月前後、青切符制度はメディアで盛んに取り上げられました。「とにかく自転車で違反はまずい」という空気が高まり、信号無視やながらスマホのような「自分ではっきりわかる違反」は減った。一方、逆走やイヤホンはそもそも違反だという自覚がないまま続けている人が多い。そういった構図を読み取ることができます。
では一時停止遵守の「約3倍」をどう読むか

ここが今回最も慎重に考えたいポイントです。
一時停止は、どちらかというと「ルール自体が十分に認識されていない、無意識の違反」に分類されるものです。その意味では、「逆走」と同じく制度の効果が表れにくい違反だと考えられます。だとすれば、3台から12台へと増えたことを、単純に青切符制度の成果と結論づけるのは早計かもしれません。
ひとつの手がかりになるのが、この交差点の特性です。左右の見通しが悪く、以前から多くの自転車が減速して進入していました。つまり「ここは止まるべき場所」という感覚自体は、多くの人がすでに持っていて、完全には止まらないまでも、減速していた層がもともと一定数いたわけです。
そこに青切符制度への注目が重なり、「減速で済ませるのではなく、きちんと停止しておこう」という意識へと変化した。その結果が、3台→12台という数字に表れたと考えるのは不自然ではないはずです。
「止まるべき」という認識がすでにあった場所だからこそ、青切符制度が最後のひと押しとなり、行動の変化につながった可能性は十分にあります。
青切符制度、3か月後の「現在地」
どの違反にせよ、制度開始からわずか3か月でここまで変化が見られたことは注目に値します。シートベルトの着用義務化や飲酒運転の厳罰化も、社会に定着するまでには数年から十数年かかりました。交通ルールが人々の習慣として根付くにはそれだけ長い時間が必要であり、今回の結果はその長い変化の入口にすぎません。
今回の定点観測でも、誰が見ても違反と分かる「信号無視」や「ながらスマホ」は減少し、一時停止を守る人も増えていました。 一方で、「逆走」や「イヤホン着用」のように、違反の認識が十分に浸透していない行為には大きな変化は見られませんでした。
つまり現時点では、制度は人々の行動を少しずつ変え始めているものの、ルールそのものの理解まではまだ十分に広がっていない。これが、青切符制度開始から3か月時点の現在地といえそうです。
